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【弁護士監修】任意売却の相談は離婚前に!トラブルは弁護士に!

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

更新日:2019年07月09日
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 任意売却とは、所有している不動産の住宅ローンを支払えなくなった時にその不動産を売却してローンの返済をする方法の事です。
 通常ローンを支払えなくなった場合は競売にかけられますが、その競売を避けるために任意売却を選択する人が増えています。

 さて、その不動産が夫婦の共有名義だった場合に離婚が決まったら、不動産はどうなってしまうのでしょうか。
 離婚をする前に不動産を任意売却したほうが良いのか、離婚した後の方が良いのか、など、主に任意売却と離婚に関することについて調べてみました。

夫婦二人で住宅ローンを組んで購入した場合の離婚トラブル

 夫婦二人で住宅ローンを組んで不動産を購入していた場合、離婚をする際はトラブルの原因となってしまいます。
 次のようなケースが主なトラブルの原因となっています。

連帯保証人になっている

  住宅ローンを組む際に夫1人の収入では足りず、妻の収入と合算で組むケースが増えているようです。この場合夫が債務者、妻が連帯保証人となっていることは珍しくありません。
  離婚をすると2人でローンを払っていた不動産からどちらかが出ていくことになるかと思いますが、離婚をしたからと言って連帯保証人から外れることは簡単ではありません。
  そうなると仮に妻が出て行った場合も妻は支払いを続けなければなりません。家に住むことができないのに支払いはしなければならないとなると、揉める原因となってしまいます。

財産分与

  離婚をする際には夫婦で築いた財産は夫婦共働きだった場合は原則として1/2で分割します。もちろん、財産の中には不動産が含まれます。
  問題となるのは夫婦で住宅ローンを組んでいた場合に、不動産の売却額が残った住宅ローンを下回る場合です。残ってしまった住宅ローンの支払いについてトラブルになってしまいます。

 このように夫婦で住宅ローンを組みその住宅ローンを残したままで離婚をしてしまうと問題が起きやすいのです。そのため、離婚する前に不動産を売却し住宅ローンを完済してしまうかそれでも住宅ローンが残ってしまって返済が滞ってしまった場合は、任意売却をしてしまうかなど住宅ローンを残さないことが大切です。

任意売却は離婚前にしておくのがベター!

 通常不動産の売却をする際には、債権者である銀行などの金融機関が設定している抵当権(※)の解除をしなければなりません。
 任意売却を選択した場合は、都道府県公認の宅建免許を持っている不動産会社が間に入り金融機関の承諾を得て住宅ローンを残したままで抵当権を解除し不動産を売却することが可能になります。
 また、任意売却を行うためには債務者と債権者だけでなく連帯保証人の承諾も必要です。
 ※住宅ローンの支払いができなくなった際などにその返済のために金融機関が不動産を売却し、優先的に返済を受ける権利のことを言います。通常は全額支払い終わった段階での解除となります。

 住宅の売却には時間がかかりますし、離婚する前でも後でも良いのではないかと考える方もいらっしゃるようですが離婚後の売却はおすすめできません。
 なぜなら、離婚後はお互い接触することを避けるでしょうし最悪の場合は連絡が取れなくなってしまう可能性があるからです。
 そもそも共有の不動産は所有者全員の同意が無いと売却ができませんので、連絡が取れなくなってしまうということは同意が得られない可能性があり任意売却どころか普通の売却すらできなくなってしまいます。
 また、任意売却にしても同意が得られなかった場合は売却を進めていくことができません。
 
 そして任意売却をするということは少なからず住宅ローンが残っている状態ということです。債務者や連帯保証人は、住宅ローンに対して責任を負い続けることとなります。離婚する前に住宅ローンの支払方法や支払いが滞った時にどう対処するのかなどをしっかりと話し合っておくことも大切です。

 もしも任意売却の話が出た場合に話し合いがまとまらなかった場合や、トラブルになってしまった場合は弁護士や任意売却の仲介の専門業者などに依頼するほうがスムーズに話が進む可能性があります。

任意売却に関わる離婚のトラブルは弁護士に相談

 任意売却自体は弁護士を通さなくても、都道府県公認の宅建免許を持っている不動産会社と債権者との話し合いによって進めていくことが可能です。
 しかし、そもそもの離婚に関するトラブルや、財産分与に関しての問題など、弁護士に依頼しなければならない場合があると思います。
 弁護士に依頼することによって、次のようなメリットがあります。
 

     
  • 財産分与の適正金額の算出をしてくれる。
  •  

  • 早期に話し合いをまとめることができる。
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  • 弁護士が様々な手続きなどの代行をしてくれる。
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  • 残債務の債務整理も一緒に行うことができる。
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 ただし、弁護士だけでは不動産の売却をすることはできません。売却をするためには都道府県公認の宅建免許を持っている不動産会社に依頼をする必要があります。
 依頼するところによっては、不動産会社と弁護士が連携しているところもありますので、そういった会社を選ぶのも1つの手かもしれません。

財産分与と任意売却

 改めて、財産分与とは一体何のことなのか確認してみましょう。
 財産分与とは、婚姻中に夫婦で築き上げた財産を、離婚に際しそれぞれの貢献度に応じて分配することを言います。
 民法768条1項には、次のように規定されおり、法律上認められている権利という事になります。
 

 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
 

 離婚における財産分与の基本は、「夫婦の財産を半分ずつに分ける」ことです。
 先ほどは夫婦共働きの場合の原則として1/2と申し上げましたが、家庭裁判所の資料などによっては、夫婦の働き方が共働き、または片方が専業主婦(夫)だったとしても、大体は半分ずつになっているようです。

 財産分与の対象となる財産は、不動産(土地や建物)、預貯金、車、家財道具、有価証券、掛け捨てでない生命保険などがあります。
 そして、その財産は例えば不動産の名義人が夫で、ローンの支払いも夫がしていたとしても、「夫婦が婚姻中に築き上げた財産」として、財産分与の対象となります。

 ちなみに結婚前に貯めていた預貯金や、相続財産などは財産分与の対象とはなりません。

 ただし、それらの財産が結婚後に夫婦の協力によって価格が維持・増加した場合は、貢献の割合に応じて財産分与の対象となることがあります。

 財産分与は離婚後でも請求可能ですが離婚後2年間が請求期間となっています。離婚後2年以内に調停や審判の申立をした場合は、調停や審判が終わるまでは財産分与の請求をすることができます。
 ちなみに、この2年というのは排斥期間であって時効ではありません。時効は期間の延長や一時停止ができるのに対し、排斥期間は期間の延長や一時停止はできません。
 しかし話し合いによっては財産分与を請求できますので全く請求できなくなるというわけではありません。また、離婚の際に相手方が財産を隠していたことが判明した場合などは民事裁判を起こすことによって、離婚時に受け取ることができなかった財産の要求をすることも可能です。
 

任意売却と財産分与

 

①アンダーローンだった場合の財産分与

 不動産の売却価格が住宅ローンを上回った場合です。 
 この場合、不動産を売却すると利益が生じます。
 まずは、売却代金を住宅ローンの残債の支払いに充てた後、残った売却代金を夫婦で1/2ずつ分割する財産分与が望ましいでしょう。
 

②オーバーローンだった場合の財産分与

 不動産の売却価格が住宅ローンを下回った場合です。  
 この場合、住宅ローンが残ってしまうため、通常の売却はできません。
 そのため、離婚する夫婦の片方、又は双方で、住宅ローンを完済するまで支払いを続けていかなければなりません。
 財産分与どころか、住宅ローンをどう負担するのか、名義はどうするかなどの課題がたくさんあります。
 そんな時に任意売却を検討してみてはいかがでしょうか。
 任意売却をすることができれば競売よりも高い値段で売買することができますので、残債が少なく済みますしローンの返済も債権者との話し合いにより債務者の無理のない範囲での返済が可能となります。
 そうすることで双方で支払いをする場合も負担を少なくすることができますし、どちらかが家に住み続けるといった事で揉めることも無くなるのではないでしょうか。

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まとめ

 初めは離婚するつもりでなかった夫婦が共同で不動産を購入することはごく普通の事だと思います。しかし離婚するとなったらその不動産についてさらに揉めてしまうことになるというケースが多いのではないのでしょうか。
 離婚する前にしっかりと住宅ローンについて話をすることと、少しでも住宅ローンの負担を少なくするために任意売却を検討してみてはいかがでしょうか。
 また場合によっては、弁護士などのプロに依頼をすることが大切です。

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