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購入前に知っておきたい任意売却物件!

更新日:2019年09月03日
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任意売却物件って?

住宅ローンなどを利用した債務者が、返済を何らかの理由で滞納すれば、債権者の銀行などは担保の不動産を競売にかけます。
任意売却物件というのは、競売に不動産がなる前に、話し合いを債権者と行って、普通の不動産取引と同じように不動産業者などに売る物件のことです。

一般不動産物件と任意売却物件の違い

ここでは、一般不動産物件に対する任意売却物件のメリットとデメリットについてご紹介しましょう。

一般不動産物件に対する任意売却物件のメリット

一般不動産物件に対する任意売却物件の最も大きなメリットは、やはり普通の不動産取引よりも安く買えることでしょう。

では、どの程度具体的に安く買えるのでしょうか?
瑕疵担保責任が無いことや競売になるまでの限定された期間のうちに売る必要があることなどのために、普通の同じ条件の不動産物件の価格より3割くらい安く買える場合が多くなるようです。
例えば、普通の不動産物件が2,000万円の価格であれば、任意売却の場合は1,700万円くらいで買えることがあります。

一般不動産物件に対する任意売却物件のデメリット

・交渉を債権者と行う必要があるので、時間が決まるまでにかかることがある

任意売却の場合は、債権者から物件を売る価格などについて了解をもらう必要があります。
しかし、了解を債務者からもらう場合は、時間が債権者と交渉するためにかかることがあります。
そのため、普通の不動産取引の場合よりも時間がかかることがあります。

・瑕疵担保責任が売主は無くなる

普通の不動産売買では瑕疵担保責任が売主にありますが、任意売却では瑕疵担保責任が売主にはありません。
そのため、物件を買った後にもし瑕疵があっても、買主の責任になります。
このようなリスクを避けるためには、物件を買う前にきちんと物件の状態をチェックすることと、物件の設備状況確認書などを売主から入手することなどが必要になります。

なお、瑕疵担保責任というのは、取引した不動産に瑕疵の欠陥などがあり、さらにこの瑕疵が普通の売買において求められる注意を払っても分からないようなものであれば、買主に対して売主が責任を負うものです。
普通の不動産売買の場合は、瑕疵を買主が把握した時から売主に対して1年以内に損害賠償を要求することができます。

・売買価格が基本債権額より安くなるような値引きができない

任意売却の目的は借金を債権者に返すことであるため、債権者は可能な限り返済額を多く回収したいと希望しています。
そのため、売買価格が債権額より少なくなる交渉はほとんど無理でしょう。

・荷物を債務者が置いていることがある

任意売却でも、引渡しする際には残置物が無い状態にすることが基本ですが、荷物を置いたままになる場合も中にはあります。
このような場合は、トラブルに後からならないように、処分を自分でしないで、不動産業者に相談しましょう。

 

住宅ローンを利用して購入できる!?

不動産物件を買う場合には、多くの人が住宅ローンを利用するでしょう。
そのため、住宅ローンを任意売却物件の場合でも利用できるか気掛かりになっている人も多くいるのではないでしょうか。
住宅ローンは、任意売却物件の場合でも利用できます。
しかし、任意売却の場合は、先にご紹介したように、手続きや制約が普通の不動産取引より多くなるため、決済が随時できるように、手続きの仮審査などを前もって余裕持って行う必要があるため注意しましょう。

 

任意売却物件ってどうやって探すの?

任意売却では、不動産取引についての知識だけでなく、任意売却についての知識、交渉を債権者と行うことなどの専門性が要求されます。
そのため、任意売却物件を見つける場合は、専門に任意売却物件を扱っている不動産業者に頼んで見つけるのもおすすめです。
専門に任意売却を扱っている業者としては、例えば、任意市場、NBC不動産情報センター、東京情報センター株式会社などがあります。

 

購入するときにかかる費用って?

任意売却物件を買う際の費用は、基本的に、普通の不動産売買の場合と同じで、次のようなものがあります。

・不動産取得税
・登録免許税
・売買契約書に貼る印紙代
・不動産業者に払う仲介手数料
・保険料(火災保険などに入る場合)
・融資事務手数料(融資を受ける場合)

なお、債務者の中には引越し費用が欲しいというような人もいるそうですが、交渉によって引越し費用は決まります。

 

物件購入までの流れ ちょっとまった!

任意売却物件を買う際の流れは、基本的に、普通の不動産取引の場合と同じです。
任意売却物件を買う際の流れは次のようになります。

・任意売却物件の条件や予算を決定する
・専門の任意売却の不動産業者で物件を探す
・現地の物件を内覧したり下見したりする
・買いたい人が現れた場合は、価格などについて交渉する
・買付証明書を出す
・売買契約を結ぶ
・決済して引渡しする

なお、詳しいことについては、ネットなどで紹介されているため確認してみましょう。

 

任意売却物件を購入する時の注意点

●債務者に渡す手付金には注意する

普通の不動産売買では、手付金として物件価格の1割くらいを売買契約書を締ぶ時期に売主に払います。
しかし、任意売却では、手付金を債務者に持って逃げられることがないように、手付金は債務者の売主に渡さないで、一旦売主サイドの業者に預かってもらうようにして、債権者には決済する時に渡すような流れになります。

そのため、債務者には手付金を渡さないように注意しましょう。

なお、手付金を渡す場合にもらうのは、不動産業者の名義の預り証であり、領収書ではないため注意しましょう。
また、経済的に売主は苦しい状態であるため、売買契約を結ぶ際に売主へ買主が払う手付金は十分に注意して取り扱う必要があります。
売買契約を結んだ後に売買が取り止めになる場合もありますが、手付金をこの際には買主へ売主から返してもらう必要があります。
売主は経済的に苦しいため、すぐにもらった手付金を使ってしまう場合もあり、売買が取り止めになってから返すお金が無いというようなことが起きる恐れがあります。
このようなトラブルが起きないように、買主としては、できる限り手付金額を少なくしておくことが必要です。

例えば、50万円などに手付金をしておくと、この手付金額の範囲にリスクを抑えられます。
そして、よく不動産仲介業者が採用する方法としては、売主に手付金を渡さないで決済する日まで業者が預かるようなものです。
そのため、売買がもし取り止めになった場合にでも、買主が守られるようになります。
しかし、この不動産仲介業者は信頼できるところを選ぶ必要があります。

●差し押さえの取消や競売の取下げなどはきちんと手続きする

任意売却物件の場合は、手続きの前に、債権者が競売の申立てをするために差押えを行っています。
そのため、任意売却物件を売る場合は、差押えの取消や競売の取下げなどの手続きが必要になります。
普通はきちんと司法書士が手続きしてくれるため問題ありませんが、手続きが漏れていることも中にはあり得ます。
そのため、物件引渡しの場合は、必ず手続きが終わっているかをチェックしましょう。

●物件が管理されているかチェックする

売主は借金などの多くの債務で苦しいので、自宅を丁寧に管理にするお金の余裕もない場合が多くあります。
そのため、任意売却物件を見た際に、部屋が管理されていなく荒れているためびっくりすることもあります。
任意売却物件を見る際には、管理されているか十分にチェックしておきましょう。

●価格を交渉することが困難である

任意売却物件の場合は、債権者がどの程度までの回収額にするかが非常に価格に影響します。
価格は売主の考えのみで決定されるということではないので、債権者の了解をもらうために時間がよくかかります。
売主は、いかに高く売れた場合でもお金が手元に残らない場合が多いので、価格については興味がない人も多くいます。

●任意売却物件でも必ずしも安くはない

任意売却物件の一つのメリットとしては、価格がマーケットの相場よりもよく安くなると言われており、このように不動産業者からも多くの人が聞いているでしょう。
しかし、実際には必ずしもこのようなことは言えません。
債権者の銀行などは、債権をできる限り多く回収したいため、当然ですが、高く売れるのであればそうしたいでしょう。
任意売却物件の場合でも、買主が競争することによって立地やこれ以外の条件では、マーケットの相場と同じような金額で取引される場合もあります。

●滞納している修繕積立金や理費を負担する必要がある

任意売却物件は、マンションの中古を買う場合にも出会う場合があります。
マンションの中古の場合は、修繕積立金や管理費の扱いについて把握しておく必要があります。
売主が任意売却しようとしている場合は、修繕積立金や管理費をよく滞納している場合があります。

これ以外にも、滞納しているのは家賃の場合もあります。
実際に買う場合の条件としては、買主がこのような滞納しているものを精算する場合が多いので、このようなお金を負担する必要があることを把握して、買う際の資金プランを立てる際には考慮しておきましょう。
不動産業者に問い合わせすると、この金額についても教えてくれます。

●瑕疵担保責任が売主は免れる

任意売却の場合は、経済的に売主が苦しくなっています。
買主としては、中古物件の取引では瑕疵担保責任を売主が負ってくれるのがいいでしょうが、売主は経済的に苦しいため瑕疵担保責任が負担できるお金がありません。

そのため、任意売却の場合は、一般的に、瑕疵担保責任が売主には無くなるということを把握しておきましょう。
瑕疵担保責任がもし付いていても、これを実際に行ってくれる可能性は少ないので、あまり期待しない方がいいでしょう。
任意売却物件を買う前には、ホームインスペクション(住宅診断)を第三者に行ってもらうことが必要です。

●決済する前に売買が取り止めになる場合もある

価格なども決着して売買契約が終わると、買主としても一安心でしょう。

しかし、任意売却物件の場合は、実際には、売買契約を結んでから決済するまでに、売買が急に取り止めになる場合があります。
例えば、抵当権を設けている債権者の銀行は了解していたが、差し押さえを別の債権者が行うと、この債権者や了解をしていた銀行とも再度交渉を行う必要があります。
差押えをした別の債権者は、少ない債権額でも交渉が進まない場合は多くあり、最終的に売買が取り止めになることもあります。
これ以外にも、急に売主が「自宅はやはり売らない」と言う場合もあります。

また他のケースでは、債権者の銀行などから任意売却をすすめられて、任意売却を一旦は了解したが、その後気持ちが変わったようなケースです。
このようなケースは、価格について買主と売主、債権者が了解して、売買契約を結ぶ際に「やはり契約しない、売らない」と言うようなことが多くありますが、売買契約を結んだ後であるにも関わらず、売らないと言う人も中にはいます。
売買契約を結んでいるため、売るのを取り止めする場合は、手付金を返す必要があります。
しかし、手付金を売主は返す金銭的な余裕がなく、それまでの時間や労力などが買主は全く意味が無くなるだけでなく、補償もされないこともあり得ます。

 

購入前に知っておきたい任意売却物件のまとめ

ここでは、買う前に把握しておきたい任意売却物件についてご紹介しました。
任意売却物件というのは、競売に不動産がなる前に、話し合いを債権者と行って、普通の不動産取引と同じように不動産業者などに売る物件のことです。
住宅ローンは、任意売却物件の場合でも利用できます。
任意売却物件を見つける場合は、専門に任意売却物件を扱っている不動産業者に頼んで見つけるのもおすすめです。
一般不動産物件に対する任意売却物件のメリットとデメリットについては、ここでご紹介したようなことを把握しておきましょう。
任意売却物件を買う際の注意点としては、債務者に渡す手付金には注意する、差し押さえの取消や競売の取下げなどはきちんと手続きする、物件が管理されているかチェックする、などが挙げられます。
任意売却物件は、非常に難しいものであると思った人もいるでしょうが、条件として価格・立地・建物などがマッチするのであれば、実際に売買契約をする前に前向きに住宅診断を行ってみるのもおすすめでしょう。

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