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【弁護士監修】共有不動産を巡るトラブル(その1)

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弁護士 木村 俊将 法律事務所アルシエン

更新日:2018年12月29日
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1.はじめに

「共有不動産」という言葉をご存知でしょうか。不動産会社の名前ではありません。所有者が複数いる状態の土地や建物のことをいいます。登記簿謄本をみると所有者欄には「共有者 ○○ 持分2分の1」などと記載されています。

不動産が共有状態となる原因はいくつかあります。例えば、不動産を夫婦で共同購入した場合に共有名義にしたり、所有者が亡くなった場合に複数の相続人で相続登記をしたり、というケースが多いです。
 
共有者同士が仲良く、協力的で、理性的で、思いやりがあれば、特に問題はありませんが、そうでない場合には様々なトラブルが生じます。場合によっては不動産の実質的な資産価値がほぼゼロになってしまうリスクもあります。

2.事例

都内一等地に土地とマンション一棟を持っていたAさんが亡くなりました。既に配偶者も先に亡くなっていたことから、その子供であるXさん(兄)とYさん(弟)が不動産を2分の1ずつ相続しました。

相続を機にXさんがマンションの一室(最上階のペントハウス)に住み、素人ながら共用部分の掃除や設備の故障対応をするようになりました。他の部屋は賃貸用物件として第三者に貸していて、賃料はXさんの口座に入金されています。Xさんは定職に就いていないことから、賃料収入で生活していました。
 
Yさんは、不動産の半分の持分があるのに賃料をもらえず不満がありましたが、Xさんから「俺が物件を管理しているんだ。家賃は修繕のために使うからお前には渡せない。弟なんだから我慢しろ」などと言われて、悔しい思いをしながら時が流れていきました。

3.共有不動産を巡るトラブル

不動産が共有状態にあることが原因で生じるトラブル、不都合を紹介します。

(1)自由に処分できない

前述の事例で、Yさんにとってこの不動産は何の利益も生まないので、誰かに売ってお金に換えたいと思いました。この場合、スムーズに不動産を売却できるでしょうか。
  
共有不動産を売却する方法は主に2つあります。
一つは、自分が持っている共有持分(事例でいうとYさんの持分2分の1)を売却する方法です。もう一つは、他の共有者と一緒に売却する方法です。

前者(共有持分の売却)はYさん単独で売却できますが、買主を見つけるのが難しいですし、買主が見つかったとしても売値はかなり安くなります。当然です。Yさんの共有持分を買った人に何のメリットがあるでしょう。他の共有者は、賃料を独り占めしているあのXさんです。賃料収入ももらえませんし、後述しますが、税金を負担することになるので、むしろ負の財産です。買主が空室に住む、ということも考えられますが、Xさんとトラブルになるのが目に見えています。
  
こういう共有持分を買うのは一般人ではなく、不動産業者(プロ)です。業者は、共有持分を安く買い取り、交渉や裁判手続で共有状態を解消させ、価値を高めた上で転売するなどして、利益を得ます。共有解消に時間やコストがかかりますし、そもそも最終的に高く転売できないリスクもあります。当然かなり安く仕入れないと意味がないのです。
  
他の共有者に持分を売却する(共有者間の売買)、という方法もありますが、やはり売値を買い叩かれるでしょう。このように、共有持分は売れたとしても金額は安くなります。
  
では後者(他の共有者と共同して売却)はどうでしょう。売値は市場価格と変わりませんが、共有者がそれぞれの共有持分を売却するのですから、他の共有者が売却に協力してくれる必要があります。

前述の事例では、Xさんの協力を得ることは不可能に近いでしょう。Xさんは、定職に就いておらずマンションの賃料収入で生活しているので、それを処分することは生活の糧を失うことになります。しかもマンションの最上階のペントハウスに家賃ゼロで住んでいます。このような恵まれた状態を手放すことはないでしょう。

(2)勝手に住んでいる

前述の事例で、Xさんは賃料ゼロでマンションに住んでいます。Yさんはこのマンションの2分の1の持分を持っているので、自分の持分については勝手に使われていることになります。そこで、Yさんは、Xさんに「部屋から出て行け」と言えるでしょうか。
  
答えはノーです。仮に裁判を起こしても、Yさんを追い出すことはできません。
法律では、共有者は共有物の全部を使用することができる、とされています(民法第249条)。つまり、共有持分が少しでもあれば、共有者は共有物を「全部」使用できるのです。はい、「使ったもの勝ち」なのです。
  
もっとも、Xさんは、Yさんの共有持分を無償で使う権利はないので、YさんはXさんに対して、賃料相当額の金銭の支払いを請求することができます。

(3)賃料収入を独り占めされている

前述の事例で、Xさんはマンションの賃料収入を独り占めしています。本来であれば、Xさんは、賃料の半分しか取得できないので、賃料収入から必要経費(修繕費等)や税金を控除した金額の半額をYさんに分配しないといけません。
  
Xさんとしては、頭では分かっているのかもしれませんが、このまま払わずに済めばラッキー、と思っているのかもしれません。相手が身内なので甘えもあるのでしょう。

(4)税金は負担することに

前述の事例で、Xさんが賃料を独り占めしているので、Xさんが賃料収入に課税される所得税を負担すべきと思いますが、実は違うのです。共有者がそれぞれの共有持分に応じて、不動産所得がある前提で、確定申告をして納税する必要があります。

Yさんは賃料収入を得ていないのに、それを得た前提での税金は負担することになるのです。これは悔しいですね。

(5)建物管理が不十分

前述の事例で、Xさんは自分でマンションの共用部分を掃除したりしています。一見、しっかりしているように思えますが様々なリスクがあります。不動産の管理はプロ(不動産管理会社)に任せたほうが得策です(もちろん管理会社以上にしっかり対応できる大家さんもいますが)。

建物は放っておいても劣化します。必要に応じて費用をかけてメンテナンスをしていないと、通常以上の速度で劣化が進みます。新しい建物であればさほど不具合は発生しませんが、築年数が増えると故障等が多発します。迅速かつ適切に対応しないと建物の寿命を縮めることになります。特に漏水、配管の故障等は深刻です。

建物の寿命が縮むだけではありません。場合によっては、第三者に対して損害賠償責任を負うことがあります。例えば、建物の老朽化が進み、外壁の一部が剥がれて落ち、通行人に命中して、怪我をさせてしまったとします。この場合、建物の占有者・所有者は、被害者に対して損賠賠償責任を負います(民法第717条)。これを工作物責任といいます。

また、設備が故障したときなどには、賃借人(入居者)からの修繕要求に対して迅速かつ適切に対応する必要があります。対応が遅れると損賠賠償を請求されるリスクがありますし、管理状態が良くないということで入居者が退去し、空室となるおそれもあります。

Xさんは、管理会社に支払う費用がもったいないので、自主管理をしていますが、長期的にみると資産価値が下落していることになります。しかも、賃料収入を生活費に使っていますので、何かあったときに修繕費等が払えないかもしれません。

マンションがXさん単独所有であれば自業自得ですが、共有者のYさんとしては、自分の知らないところで資産価値が下落していることになりますし、場合によっては先ほどの工作物責任を負う可能性もあるのです。

(6)資産価値が実質的にゼロになってしまうことも

前述の事例では共有者が2名ですが、共有者が多数いるケースでは、全員が共同して売却する、というのはかなりハードルが高いです。

共有者が亡くなると、その共有持分がさらに相続人に相続されます。例えば、Xさんに妻と子供3人がいたとして、Xさんが突然死した場合、Xさんの共有持分2分の1が、妻と子供に相続されます。法定相続分(法律によって定められた相続割合)で相続した場合には、妻が4分の1(1/2×1/2)、子供がそれぞれ12分の1(1/2×1/2×1/3)の共有持分を有することになります。数十年後、今度はYさんが亡くなった場合には、Yさんの親族が、Yさんの共有持分を相続することになります。

このように、ねずみ算式に共有者が増えてゆくのです。実際に、筆者は共有者が80名を超えた事案を受任したことがありました。なかなかハードな案件でした。

共有者同士が見ず知らずで話し合いなどできませんし、そもそも自分が不動産の共有者となっていることを知らないことがあります。不動産の共有者であっても、役所からお知らせのハガキが届くわけでありません。固定資産税の納税通知書は共有者の1名に対して郵送されるだけで、全員には届きません。どこかで共有状態を解消しないと永遠に共有者が増えていく一方です。
  
共有者が多数いて、共同して売却できないとなると、当該不動産は換価性がない資産となります。建物があって共有者のうちの誰かが住んでいるうちは、その人にとっては実益がありますが、その人が高齢で施設に移ったり、亡くなったりした場合には、空き家になります。建物が老朽化して、解体しようと思っても原則として共有者全員の合意が必要となります(誰か勝手に解体したら不法行為となります)。土地は売れないし、いつまでも解体できない廃屋が建つことに。これでは、資産価値が実質的にゼロ、と言っても過言ではないです。

空き家問題がメディアで取り上げられることが増えてきましたが、このように共有者が多数いて、不動産が塩漬けになっているケースも多いと考えます。

4.最後に

このように、不動産が共有状態にあることが原因で、様々なトラブルや不都合が生じるリスクがあります。では、どのように共有状態を解消すればよいのでしょうか。別の記事で解説したいと思います(つづく)。

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木村 俊将 (東京弁護士会所属 / 法律事務所アルシエン)

「弁護士資格取得後、興和不動産(現新日鉄興和不動産)の法務部にて、 個々の取引についてのリスクを分析したうえで 契約書類をチェック・修正し、取引を有利に進めるための助言を行う業務(取引推進支援業務)や、調停・裁判等の紛争に対応する業務(紛争解決支援業務)に従事。 「取引が無事に成立するようにサポートしたい」「不動産をめぐるトラブルを予防したい、解決したい」という思いから、平成23年1月に法律事務所アルシエンを開設。 以来、不動産問題に特化した弁護士として、主に不動産のオーナーや不動産事業者からの 法律相談に対応。最近では、共有不動産を巡るトラブルや相続がからむ不動産問題の解決に注力している。」

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