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どうする共有名義不動産?相続放棄をする?

更新日:2019年07月09日
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相続放棄というのは、相続権を放棄すること、つまり、親などから本来であれば相続する財産をもらわないということです。
しかし、さらに相続放棄について詳しく把握したい場合は、まず相続について把握する必要があります。

【要注意】相続放棄する場合、後悔してからでは遅い3つの注意点(姉妹サイト「相続相談弁護士ガイド」)
https://souzoku.how-inc.co.jp/topics/1776944

では、相続とはどのようなものでしょうか?

相続というのは、次のようなものです。

・人が亡くなった場合に必ず自動的に発生するもの
・金額が多いかどうかは全く関係ない
・相手が亡くなったことが分かった時から始まる
・法律が分からなかったということは配慮してくれない
・引き継ぐのは全てのものである

財産のプラスのもの、借金のマイナスのもの、借金の連帯保証人の地位など、というようなものが相続になります。
つまり、相続とは、相手が亡くなったことが分かった瞬間に、全く自分の都合とは無関係に始まり、財産のプラスのものも、借金のマイナスのものも自動的に引き継ぐようになるものです。
自動的に借金を引き継いでいることが、最も相続でトラブルになることです。
自分の借金ではないにも関わらず、人が亡くなったということで、自動的に全く知らないような借金を引き継ぐようになります。

このようなトラブルを防ぐために、相続放棄というものが考え出されました。
相続放棄というのは、自分の都合や気持ちとは無関係に引き継ぐ相続を、一切自分としては関係したくないため放棄するものです。
相続関係の法律としては、相続放棄は最も強いものです。
相続放棄さえすると、相続に関してどのようなことを誰が言ったとしても、全く関係しなくていいようになります。
いかに銀行の大手の有名なところでも、税務署でも、相続放棄さえすると全く関係ありません。
相続に関してどのようなことを誰に言われても、質問に回答したり、何かを払ったりする必要はありません。

 

共有不動産は相続後のトラブルが多い

不動産は、お金とは違って、必ずしも正確に細かく分割することができません。
そのため、兄弟がいるような場合、不動産は遺産としては相続が困難なものです。
不動産を兄弟間で相続する際にはいろいろなパターンがありますが、判断をミスすると先々のトラブルになってしまいます。
トラブルに特によく繋がるのが、共有不動産のケースです。

共有不動産というのは、複数人で全ての相続不動産を相続するものです。
分割できるお金のようなものは、例えば2分の1ずつに分けられますが、不動産などはこのように分けられないため2人で所有するようになります。
しかし、共有不動産を選択することによって、いろいろなトラブルが起きてきます。
次に、共有不動産相続後のトラブルについてご紹介しましょう。

共有不動産相続後のトラブル

ここでは、兄弟で相続する方法と兄弟で相続する事例についてご紹介しましょう。
では、共有不動産相続後はどのようなトラブルがあるのでしょうか?
分割できるお金のようなものについては共有しても問題ありませんが、分割できない不動産のようなものを共有するとトラブルになります。

兄弟間の意見が共有不動産相続を選択した時点で同じであっても、将来的にこれがいつまでも継続するとは限りません。
共有不動産を売っても、賃貸しても、全員の意見を全て同じにする必要があります。

この意見が違っていると、意見がお互いに衝突してトラブルになります。
共有不動産相続が難しいところは、複数人で一つの不動産を持つこととによって、意見が同じにならなかった際にトラブルが必ず起きることです。
また、共有不動産相続を一度選択すると、変える際に時間も費用もかかります。
特に、名義を変える際に、不動産相続は譲渡所得税や不動産取得税など、税金がさまざまかかるので、費用面でも困る場合がが多いそうです。
名義は資金がなければ変えることはできないので注意しましょう。

共有不動産相続を選択するような人は相当多いそうですが、共有不動産相続は控える方がいいでしょう。
兄弟が若い時には仲がいいことも多いため、共有不動産相続をその分選択するケースも多いそうです。
特に、親が亡くなると団結力が強くなるため、共有不動産相続をよく選択するようになります。
そのため、例えば、24歳程度の兄と22歳程度の妹が、全て2人で2分の1ずつ共有したいということもあるかもしれませんが、絶対に止める方がいいでしょう。
このような場合は、お金が不動産の他にもあれば、例えば、兄が不動産、妹がお金を相続するような方法を選択しましょう。
若い時には兄弟の仲がいいためトラブルが起きない場合でも、先にいずれかが亡くなると、亡くなった人の妻か子供が一方の財産は相続します。
そうすると、兄弟の妻や子供と意見が同じにならないと、自由に不動産を使用することもできません。

また、認知症に一方がなった場合、不動産を売る時にも面倒な手続きが必要になります。
意見が同じにならないと、自由に不動産を取り扱えないだけでなく、共有不動産相続は、費用面や手続面でも、大きな負担が将来的にかかる恐れがあります。
このような場合に共有不動産でいいと考えても、意見が将来的に違うようになるかもしれないし、事故などで一方が亡くなる恐れもあります。

トラブルが起きても、共有不動産相続を選択するとすぐに変更することはできません。
不動産のように分割できないものが相続財産に含まれていれば、特に慎重に対応する必要があります。
財産を全て平等に分割する共有不動産相続は、制度としては柔軟性が少し欠けたものであるとも言えます。
共有不動産相続を選択する時には、将来のことを慎重に見極めながら選択するようにしましょう。

共有名義の不動産の相続での注意点・問題点は?(姉妹サイト「相続相談弁護士ガイド」)
https://souzoku.how-inc.co.jp/topics/1776944

相続放棄後に注意すること

相続放棄後に注意するについてご紹介しましょう。

家庭裁判所に3ヶ月以内に申立てする

相続放棄というのは、プラスの財産である土地や預貯金のようなものもマイナスの財産である借金のようなものも、義務や権利の全てを受け継がないことである、と民法938条で決まっています。
相続放棄は、被相続人の全部事項証明書、住民票の除票、生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本である改製原戸籍謄本、相続放棄する相続人の戸籍謄本を添えて、被相続人の親などが亡くなったのが分かった時から3ヶ月以内に、「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出します。
相続人が被後見人や未成年者であれば、相続放棄を後見人や法定代理人が相続が発生したことが分かってから3ヶ月以内に申請します。
相続放棄するかどうかの見極めが3ヶ月以内に困難な場合は、「期間伸長の申し立て」によって期間を家庭裁判所の審判で伸ばすこともできます。

被相続人の財産を勝手に使わない

被相続人の財産を勝手に使うと、相続放棄は「単純承認」と見られてできなくなります。
相続放棄ができないだけでなく、同じように「限定承認」についても選ぶことができなくなります。
例えば、勝手に亡くなった人の財産を売ったり、借金を亡くなった人の財産から返したりすれば、亡くなった人の財産の「処分」と見られ、限定承認・相続放棄が3ヶ月以内でもできなくなります。

放棄が出来ないと捉えられるパターン

・私的に預貯金を引き出して使った
・相続人名義に株券や預貯金を書き換えた
・相続人名義に車や電話の名義を書き換えた
・高価な宝石などの遺品を分けた
・債権を現金にした
・株主権を使った

放棄が出来ると捉えられるパターン

・亡くなった人の自宅の修繕
・引き落としが事務的に行われたロ-ン
・普通の葬儀費を払う
・農作物が収穫期にあったので収穫して現金に換える
・生命保険金、遺族年金、死亡退職金をもらったり、使用したりする

生命保険金、遺族年金、死亡退職金は相続財産ではないため、処分の行いには該当しません。

・普通の形見分け
※一般的に、ほとんど換金性がない動産の靴、衣服、バッグ、時計、書籍、アクセサリー、収集品、道具類などは、形見分けの対象になります。
・保存行為、例えば、生物の生育を維持するための行いである給餌など
・短期賃貸借(民法602条)に決める期間をオーバーしない賃貸借、例えば、5年以内の土地の賃貸借、3年以内の建物の賃貸借
・返済期限になった債務の返済

祭祀の承継者の場合は、相続放棄しても墳墓、位牌、仏壇、祭具、系譜などは引き継げます。
なお、詳しいことについては、ネットなどでも紹介されているため確認してみましょう。

 

相続放棄において2次、3次相続の際に注意する

相続順位が相続放棄をすれば変わるため、早急に相続放棄を知らせる必要があります。
例えば、相続放棄を亡くなった人の子供がすれば、2次相続という相続人に亡くなった人の親がなります。
さらに、相続放棄をこの親もすれば、3次相続という相続人に亡くなった人の兄弟がなります。
相続放棄を第1順位者がすれば、早急に相続放棄を第2、第3順位者に知らせる必要があります。
初めの段階で、限定承認を相続放棄の代わりに選ぶと、これで完結するため、2次、3次相続は心配ありません。

また、民法915条では次のように決まっています。
『相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 』
そのため、例えば、被相続人が亡くなった日が、平成27年1月25日の場合に、第1順位の子供・妻が家庭裁判所に相続放棄を平成27年4月25日に申し出した場合は、第2順位の被相続人の親は家庭裁判所に相続放棄の申し出を平成27年7月25日までに行う必要があります。

 

■知ってる?共有不動産の固定資産税

不動産を相続した場合は、その後の固定資産税を不動産の名義人が支払うようになります。
では、不動産が複数の相続人の共有名義になっている場合は、固定資産税を誰が支払うようになるのでしょうか?
固定資産税は、それぞれの共有相続人の持分によって支払うか、それとも一括して支払うかが問題になってきます。

●共有不動産の固定資産税は連帯納付義務になる

共有不動産は、持分に関係なく、固定資産税を納付する義務が全員の共有者にあります。
なお、納税通知書としては、一括して全額の納付書が共有不動産の代表者に届きます。
そのため、共有不動産の固定資産税は、それぞれの共有相続人が持分によって負担する場合は、納付額をそれぞれの相続人が出し合うようになります。

●共有不動産の代表者を決める基準

どのように共有不動産の代表者を決めるかは、市区町村によってそれぞれ基準が違っています。
共有不動産の代表者を決める主な基準としては、次のようなものが挙げられます。

・共有不動産で暮らしている相続人
・共有不動産がある市区町村で暮らしている相続人
・最も共有不動産の持分が多い相続人
・共有不動産の世帯主
・不動産登記簿に登録されている順位

なお、どのように基準で共有不動産の代表者が決められているかは、共有不動産がある市区町村によってそれぞれ違っているため、市区町村役場に問い合わせてみましょう。
また、共有不動産の代表者をもし変えたいような時には、共有不動産がある市区町村役場で手続きすることができます。

 

共有名義不動産における相続放棄まとめ

ここでは、相続放棄って何? 共有不動産は相続後のトラブルが多い、共有不動産相続後のトラブル、相続放棄後に注意すること、知ってる?共有不動産の固定資産税、についてご紹介しました。
相続放棄というのは、相続権の放棄、つまり、親やなどから本来であれば相続する相続する財産をもらわないということです。

共有不動産の相続後のトラブルに特によく繋がるのが、共有不動産のケースです。
共有不動産相続後のトラブルの事例としては、ここでご紹介した兄弟で相続するケースなどがあります。
相続放棄後に注意することとしては、家庭裁判所に3ヶ月以内に申立てする、被相続人の財産を勝手に使わない、2次、3次相続の際に注意する、ことが挙げられます。

共有不動産の固定資産税で注意することは、共有不動産の固定資産税は連帯納付義務になる、共有不動産の代表者を決める基準、が挙げられます。
不動産を相続する際に共有不動産にすると、相続後のトラブルが多くあります。
また、共有不動産を相続放棄する際には注意することもあります。
このようなことから、共有不動産にするかどうかは慎重に判断しましょう。

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不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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