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土地って「相続」と「生前贈与」どちらが得するのか

更新日:2019年05月07日
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土地って「相続」と「贈与」どちらが得するのか

 土地の所有者の名義を変更し、引き継ぎを行う場合、なんらかのかたちで税金をおさめる必要が生じます。一般的には、現在の名義人が亡くなられたことを受けて、財産を相続人に分割する際に土地などの不動産を誰が相続するかという話になるものです。相続する人が決定したら、それから相続登記(名義変更)が行われるという流れがスタンダードになっています。
 
 しかし、身内の誰かが亡くなられたばかりで、精神的にも肉体的にも疲れが出ているに違いない時期に、土地の相続をめぐって話し合いすることは負担です。しかも、相続登記を経て相続税が確定したら申告を行いますが、これには相続することがわかった時点から10ヶ月以内という期限もあります。この間にいろいろな書類を集めたりするのはやはり大変なことです。
 
 大変だとしても、相続税の節約になるということであれば、がんばって手続きをしようという気持ちにもなりますが、もしそれがむしろ節税にならないとしたらどうでしょうか。最近、相続税を節約するために、生前贈与(生きているうちに財産を譲ること)を選択する人が増えています。「相続」ではなく「贈与」することで、節税を目指す方法です。
 
 土地の名義変更をスムーズに、そして節税を目指せるとしたら、生前贈与を検討してみたいですよね。土地を「相続」することで受け継ぐ方法と、「贈与」されることで受け継ぐ方法について、詳しくみていきましょう。

不動産を「生前贈与」するメリット

 たとえ遺言のなかで土地の継承者がはっきりと明記されていたとしても、ほかの相続人から異議が出ることがあります。相続手続きでは、こうした問題が一番トラブルに発展しやすいです。遺言がなければ、さらに問題がややこしくなることも大いにあり得ます。これは一重に、被相続人がすでにお亡くなりになっているということが大きく影響しているといえるでしょう。本来は優先されるべき被相続人の意見を、すでに確認することができない状態での話し合いとなりますので、相続人のさまざまな思いが交錯してなかなか解決に向かわないのです。

贈与者の気持ちがそのまま反映される

 生前贈与ならば、贈与者の気持ちがそのまま反映されます。そのため、財産を譲る側の考えどおりに財産を分配・整理することが可能になるというわけです。贈与者が、贈られる側の気持ちを確認しながら分配する金額を決定することもできますし、ほかの相続人同士が争うことになるリスクも大幅に軽減されます。

相続税を節税できる

 また、生前贈与によって、相続税を節税できるというのも大きなメリットでしょう。とくに、将来的に評価額が上がると思われる土地は、早めに贈与しておいた方が得策です。贈与税は、契約成立時点での評価額に対応した税率でおさめることになるため、評価額が低いときに手続きすることで、税金が少なくて済みます。

相続時清算課税制度

 もし、土地を譲る親の方が65歳で、譲り受ける側の子供が20歳以上であれば、「相続時精算課税制度」を選ぶことが可能です。この制度は、2,500万円まで基礎控除があります。さらに、贈与者がその後に亡くなった場合には、相続税のなかからすでに支払った贈与税の分を控除されるという制度なのです。
 
 最後にメリットとして付け加えておきたいのが、ゆっくりと準備ができるという点です。相続税は、相続が発生した時点から数えて10ヶ月以内におさめなければなりません。あまり時間がなくて、負担も大きいでしょう。それに比べると、生前贈与は贈る側と贈られる側で、計画的に進めることができるので、しっかり準備期間をもてますので負担が少なくなります。

不動産を「相続」するメリット

 「贈与」ではなく「相続」することによるメリットも当然あります。順番に説明していきます。

贈与税よりも相続税の方が負担が少ない

 まず、相続税は、贈与税に比べると負担が少なく設定されています。生前贈与したところで、蓋を開けてみたらそれほど節税にならなかったという例も少なくありません。そして、年間で一人あたり110万円を超えて財産を贈与した場合には、贈与税が発生してしまいます。つまり、贈与税の非課税枠にはかなり厳しい限度があるということです。
 これに比べると、相続税には、3,000万円の基礎控除が認められているのが大きなメリットでしょう。3,000万円の控除は相続全体に対するものではありますが、全相続財産のうち土地が占める割合は大きいので、3,000万円の控除によって税金を支払わなくて済む人が多いのです。一般的なマンションや戸建であれば、ほとんどの場合、非課税扱いとなるでしょう。さらに、不動産の相続については、不動産所得税が課税されないという点も魅力です。

税制の改革で条件が変わることもある

 直接には関係しないことではありますが、税制はわりと頻繁に改正されるものです。実際に相続が発生する時点では、今の税制度とは違う内容になっていることも考えられます。もし、生前贈与の契約を成立させていた場合、のちになって契約を切り替えるということはできませんので、不利になってしまう可能性も否めません。

不動産を「相続」するデメリット

 「相続」することでのデメリットで一番大きいのは、やはり相続人同士のトラブルを回避するのが難しいということです。

土地を分割して相続するのは難しい

土地は、簡単に分割することができないものです。もし土地の権利を分割しようとすると、土地分筆登記(1つの土地を分割して複数の土地として登記すること)という非常に面倒な手続きが必要となります。もちろんできないことはありませんが、これをやるとなると始めに土地の正確な測量が必要になり、分け方の図面作成などを経て、分筆登記へと進めないといけません。申請先は法務局で、土地家屋調査士による専門的な測量が必要です。土地は、日当たりや傾斜をはじめ、さまざまな特質をもっており、決して均一ではありません。そのため、例えば兄弟でこれを二つに分けるという場合でも、そんなに簡単には話が運ばないのです。また、土地は分割することでその価値が下がることが多いです。本来であれば、一つにしておくべき土地ですが、複数人で相続するとなるとやむを得ない場合が多いでしょう。

土地を共有名義にするのも難しい

 一方、土地を分けずに共有名義とするなら、これはこれでまた難しい問題があります。共有するときは、一つの土地を複数人の名義で所有するわけですが、もし誰かが売却したいということになった場合、意見が衝突することがあるでしょう。賃貸して賃料収入がある場合には、全員が公平に賃料を得られるように配慮しなければなりません。抵当に入れる場合などにも、その都度、親族会議を開いて相談しなければいけないわけですし、そのたびに衝突が起こる可能性を秘めているわけです。

早急に相続税を納税しないといけない

 このような問題は、土地を複数人が相続する場合に起こり得るのですが、相続する人が一人しかいない場合も、デメリットはあります。土地を相続した場合は、相続税を申告して、相続がわかった時点から10ヶ月以内に税金をおさめないといけません。10ヶ月というと長いようですが、葬儀や四十九日などを行っているうちに時間が過ぎていきますし、相続のための必要書類を集めるのはそれほど容易なことではありません。スピーディーな対応を求められるという点もやはりデメリットといえるでしょう。

不動産を「生前贈与」するデメリット

生前贈与でも納税は必要

 生前贈与は、贈与税の課税対象です。さらに、不動産所得税や登録免許税も発生します。不動産所得税とは、土地や家屋などを取得した場合に課税される県税のことで、県税事務所に納税するものです。登録免許税とは、登記などに基づいて課せられる国税です。流通税に分類されています。このように、生前贈与といってもしっかりと課税の対象になるので、いくらの課税になるのかを確認して、相続税との比較をしていくことが大切です。相続税に比べて、基本的には生前贈与の贈与税の方が税率が高くなります。また控除枠も、相続税と比べて大きいというわけではありません。

生前贈与が無効になることも!?

 もっとも気をつけたいのは、生前贈与が無効になるケースがあるということです。被相続人から相続開始時よりも過去3年以内に生前贈与を受けていた場合は、この贈与は相続として扱われてしまうことになります。基礎控除内で行われた非課税の贈与でも含まれてしまいますので十分注意したいところです。

まとめ

 生前贈与は場合によっては節税になることもあります。しかし、税務上で生前贈与としてみなされるかどうかの確認は慎重に行うべきです。また、相続する場合と比べて、生前贈与の方が節税効果が高いかどうかは、ケースバイケース。相続する土地や不動産の価値や規模によるところが大きいため、自分一人で見込みを立ててしまうよりは、専門家を頼る方が無難です。生前贈与は、一度契約してしまったら取り消すことができませんので、判断しにくいときは必ず税理士や司法書士などに相談してから決めるようにしましょう。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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