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賃貸マンションでダニやムシが発生! 思わぬ場所での不動産トラブル

更新日:2019年07月09日
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賃貸物件で発生した虫・ダニなどへの対処法は?

 賃貸物件から虫・ダニが発生することは少なくありません。とくに梅雨のように気温が高くて雨が多い季節には虫が活発になるため、虫・ダニが大量に発生してしまう可能性が高くなる傾向があります。とはいえ、虫・ダニについては事前の対応が難しい側面があります。問題が発生して、借主から相談やクレームがあって初めて気がつくケースがほとんどです。とくに女性の場合など、虫・ダニが苦手な方も少なくありません。被害が深刻な場合は解約に至ってしまう場合も多いようです。
 築年数が経過している物件や、建物が建っているエリアの気温・湿度状況などによっては、室内にゴキブリやコナチャタテムシ、ダニなどの虫が発生してしまうということが少なくありません。日常的な生活を営むなかで、虫・ダニの発生をなくすことは不可能です。大家さん側としては、借主に対して問題なく使用できる状態で貸室を提供しなくてはなりませんから、クレームや相談が寄せられた場合は、しかるべき対応を実施することが求められます。
 対処法は虫の種類によって異なってくるのが普通です。虫・ダニの対処を正しく行うために、借主から連絡を受けてまずすべきことは物件の部屋から発生している虫の種類を正しく知ること。いきなり業者に相談・依頼するのではなく、借主の協力を得て、発生している虫・ダニの種類を特定しましょう。もし、借主が虫が苦手な人で、どんな虫かをちゃんと見ることすらできないという場合は、大家さんや不動産管理会社が現場を確認しなくてはなりませんから、その心算も必要です。

借主の利用状況はどうだったか

 発生している虫が特定できたなら、部屋の利用状況もあわせて確認しておきましょう。虫・ダニが大量発生している場合、室内が虫・ダニにとって好ましい環境になっているはずです。例えば、以下のような状況が考えられます。

  • 高温多湿
  • 虫・ダニの餌が豊富な状態

部屋の利用状況に関係なく、高温多湿な室内は虫・ダニが暮らしやすい環境です。

ツメダニ

 例えば、ツメダニは梅雨や秋口になると増えるといわれています。高温多湿な気象が続けば、8月から9月にも被害が多くなる傾向があります。ダニやチャタテムシを捕食するため、人から吸血はしませんが、間違って人を刺してしまうことがあります。

イエダニ

 イエダニも高温多湿を好みます。5月頃から見られるようになり、気温が上がって湿度も高くなる6月から9月にかけて大量に発生します。人を刺すため、実害のあるダニです。

コナダニ

 白く粉が吹いたようになっていたら、コナダニが大量発生している合図です。高温多湿を好むため、梅雨や秋口になると増加します。繁殖力が強いため、大量発生しやすいダニです。

ヒョウヒダニ

 ヒョウヒダニは、温度が20度から30度、湿度が60%から80%になると大量に発生します。人を刺すことがないダニですが、死骸や糞によってアレルギー症状を起こすことがあります。

 部屋の利用状況、借主の生活環境が虫・ダニが発生するための好条件を作り出している可能性もあります。以下のようなことがないか、チェックしておくとよいでしょう。

  • 浴室の湯船にいつも水が張られている
  • 換気が十分にできていない
  • ダンボールが放置してある
  • 埃がそのままになっている
  • 窓に結露が見られ、カビが発生したり建具が腐食したりしている
  • 食べ物が放置されている

 湯船に水が張られていると、室内の湿度が高くなってしまい、虫・ダニが過ごしやすい環境を作ってしまいます。換気が不十分な室内も同様です。ダンボールのなかは高温になりがち。冬でも暖かいため、虫・ダニの温床となります。埃やカビをそのままにしておくとダニやゴキブリの餌になってしまいます。食べ物を放置するのもよくありません。例えば、イエダニはネズミに寄生します。食べ物が室内に散乱しているとネズミを引き寄せ、イエダニが繁殖する原因となります。コナダニは食品に発生することも少なくありません。開封した乾燥麺や小麦粉などが放置されていると、大量発生を促してしまいます。
 ムシやダニが発生するということは、上記のような環境下である場合も考えられるので、どのように貸室を利用しているのかという部分については注意が必要です。
 もしも、該当する場合は入居者さんに生活環境の改善の協力をお願いする必要があります。

応急処置は早めが吉!

 発生している虫・ダニの種類が特定され、借主の生活環境が確認できたら、大量発生している虫・ダニに効果がある市販の殺虫剤を使って応急処理を借主にお願いしましょう。
 バルサンのようなスモークを使うタイプの殺虫剤を使用する場合は、孵化している虫・ダニには高い効果を発揮するとされていますが、卵には効き目がありません。虫・ダニを根絶するには、1度使用したのち、2週間ほどして卵が孵化するのを待ってもう一度実施することが推奨されています。
 スモークを使うタイプの殺虫剤は、火事だと勘違いされたり、周辺の部屋にも影響が出る場合があります。借主同士のトラブルを避けるため、隣室などに事前に周知しておくことも大切です。
 市販の殺虫剤による応急処置を実施することで、現時点で発生している虫・ダニのトラブルの多くはいったん解決するはずです。しかし、借主の生活環境に問題がある場合は、すぐにまた虫・ダニを大量発生させてしまうことになりかねません。借主と相談し、生活環境の改善を促すことも大切です。
 しばらく様子を確認して虫・ダニの発生が収まる気配がないと判断される場合は、害虫駆除業者などの専門家に相談することも検討しておきたいところです。例えば、虫・ダニの卵がフローリングなどの建て具の内部、クローゼットの建材のなかなどに潜んでいる場合、専門の業者でなければ対応不可能な事態も十分に考えられます。
 また、当該の部屋だけでなく、物件内の他の部屋でも同じことが起きている可能性も否定できません。となれば、虫・ダニの問題は物件全体の問題であることになり、早急な解決が求められます。虫・ダニが発生しても、自分で解決してしまい管理会社に連絡しない借主は少なくありません。他の借主が同様のトラブルで困っていないか、確認する必要があるでしょう。少なくとも、相談・クレームのあった部屋の上下と左右の借主に聞き取り調査を行うことで、トラブルが当該室内だけの問題なのか、物件全体の問題なのかを判断するのに役立つはずです。
 虫・ダニの問題を解決するには、虫の特定に始まり、被害の規模を確認するなど、必要な情報を適宜収集し、借主と害虫駆除業者と緊密にコミュニケーションをとりながら進めていく必要があります。

大家さん借主どちらの責任があるのか

 不動産トラブルのなかでも虫・ダニの問題は、大家さん借主どちらの責任があるのかを判断するのが難しいと考えられています。というのも、部屋に虫・ダニが発生する場合、誰の責任でも無い場合がほとんどだからです。例えば、ゴキブリはどんなに清潔にしていても現れることがありますし、ダニも同様です。実際に困っているのは借主であっても、大家さんも被害者。裁判に発展するケースでも、ほとんどが自然災害扱いになっているよう。つまり、虫・ダニの問題の多くは、加害者のいない問題なのです。
 ですが、賃貸契約を締結し、賃料を徴収している以上、大家さんは入居者が快適に暮らせるような環境を提供する義務を負っています。害虫駆除業者に依頼することになった場合は、大家さんが費用を負担する場合がほとんどです。ただし、まれに大家さんと借主とで折半になることもあるようです。

意外と多い害虫やカビの不動産トラブル

 虫・ダニなどの害虫やカビが原因で起きる不動産トラブルは案外少なくありませんが、誰に責任があるのかをはっきりさせづらいのが特徴です。また、建物を取り壊して確かめるわけにもいきませんから、問題の所在を突き止めるのも困難。そのため、なかなか問題が解決せず、大家さんとしても借主としてもやきもきとした思いをしてしまうことが少なくありません。
 例えば、業者による消毒を何度か行ったにもかかわらずゴキブリの出没が止まらないケース。自分にまったく非がないため、借主は引越し費用を大家さんに負担してもらった形で別の物件に引越したいと思うものです。ところが、特別な賃貸契約がない限り、害虫が原因で契約を解除したり損害賠償を請求することは難しいとされます。話し合いで解決するのが理想的ですが、どうしても話し合いで問題が解決しないケースでは、裁判に発展する場合があることも想定しておきたいところです。

まとめ

 虫・ダニの問題は、誰が悪いわけでもなく、大家さん借主どちらの責任があるのかはっきりしないため、不動産トラブルのなかでは取り扱いが難しいとされます。ケースごとに迅速・的確に対応するよう心がけ、すみやかな解決を目指したいものですね。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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