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入居者さんに出て行ってほしい!立ち退きのお願い、自分でやる?専門家にお願いする?

更新日:2024年02月10日
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入居者と立ち退き交渉する際は、適任者に交渉を任せるのが大切です。
入居者と立ち退き交渉する適任者としては、選択肢として次のようなものが考えられます。

立ち退き交渉の6つの方法

・交渉を自分で行う
 ・不動産業者に頼む
 ・ハウスメーカー・建設業者の営業担当に頼む
 ・立ち退き業者に頼む
 ・コンサルタント会社に頼む
 ・弁護士に頼む

交渉力がよほど得意でなければ、家主が交渉するよりも、第三者に仲介してもらう方がスムーズに交渉が進む場合が多くあります。
同じ敷地内で入居者と生活している場合は、会うとストレスをお互いに感じるようになります。
不動産業者は、基本的に、主な仕事は入居者を集めることであるため、立ち退き交渉は得意ではありません。
ハウスメーカー・建設業者の営業担当に頼むこともいいでしょうが、交渉が得意な担当者でなければ難しいでしょう。

立ち退き業者は、一般的に、責任を失敗しても取ってくれません。
コンサルタント会社は、ノウハウや実績をベースに信頼関係を入居者と築くことからスタートしてくれます。
弁護士とコンサルタント会社は連携しているため安心です。
なお、弁護士に頼むのは、事態が悪くなった際の最後の手段と考える方がいいでしょう。

 

立ち退き交渉の進め方

入居者との立ち退き交渉は、実際にはスムーズに進まない場合が相当多くあります。
過去の判例や解決例でも、解決前の過程や個々の事情はいろいろです。
立ち退きに成功する決定的な方法のようなものはありません。
交渉期間の目安としては、6ヶ月以内を考えましょう。

しかし、交渉が個々の入居者の状況や事情によって長引く場合もあるため、交渉を辛抱強く行うこと、相手に気配りすることが大切です。
ここでは、立ち退き交渉の進め方についてご紹介しましょう。

・誠意を持って伝える

立ち退きになった経緯、今れまで入居してくれたことに対する感謝、立ち退いてもらうお詫び、補償をそれなりに検討していることなどを、誠意を持って伝えましょう。
内容は誤解されないものにすることが大事です。

・立ち退き料について交渉する

感情的にならないように、交渉する際は注意しましょう。
立ち退き料を計算する際に、計算式の定型的なものはありません。
立ち退き料の金額は、建物・間取りが同じ場合でも入居者によって違ってきます。
現在の家賃、契約内容、今までの経緯、協力的かどうか、家庭環境などによって、大きく立ち退き料の金額は違うのが現状です。
立ち退き料の相場は、一律にいくらとは言えません。

また、立ち退き料無しで立ち退きしてくれる人もまれにあります。
しかし、立ち退き料の目安としては、一般的に、家賃の6ヶ月~10ヶ月くらいです。
立ち退き料としては、家賃の数ヶ月分からまず交渉を始めて、12ヶ月分を上限としましょう。

後で慌てないように、多めに予算は見ておくことが必要です。
立ち退き料としては、交渉に関係する業務費が入居者に払う費用の他にあります。
労力が非常にいる仕事であるため、業務費を少なくすれば、多く時間がかかったり、成功しなかったりする場合もあります。
業務の難易度でも業務費は違います。
立ち退きを以前にも行った、トラブルが以前にあった、周辺りの相場よりも家賃が非常に安い、などというようなケースは高くなる場合が多いようです。
委託する戸数、入居者の家族構成・年齢・居住期間、築年数、契約内容などでも違ってきます。

・引越し先を見つける

立ち退きを了解してくれた場合でも、引越し先が見つからないと、引越し先を入居者と一緒に見つけることもあります。

・交渉が進まない場合

交渉が進まない場合は、裁判も検討するようになります。
しかし、弁護士に頼むのは最後の手段にして、話し合いで可能限り解決するのがいいでしょう。
立ち退き交渉において、家主としては、「これまでよく対応してあげたのに」と、裏切られたようになる場合がよくあります。

このようなことがあれば、顔にやはり出てくるため、反発が入居者からあります。
立ち退き交渉の場合は、家主の建て替えに協力してもらって入居者に引越ししてもらうという考え方で対応して、感情的にならないようにしましょう。
どうして協力してもらうかと言えば、借地借家法においては、解約を入居している期間中にしたり、契約を更新しなかったりする契約をするためには、合意を入居者からもらう必要があり、入居者の契約更新請求を拒絶できない、というように決められており、入居者側に非常に有利になっているためです。

契約更新請求を家主が拒絶するためには、正当事由として相当建物が古くなって安全に入居者が住めなくなった、あるいは入居者が信頼関係が無くなる義務違反を犯したなどが必要になります。
義務違反としては、著しい家賃の滞納、無断改造、無断転貸、大幅な使用目的の違反などがあります。

このような義務違反が入居者側になければ、家主が老朽化したので建て替えしたいというのみでは、住み続けたいと入居者が言った場合には対抗できません。
そのため、立ち退き料が正当事由をカバーするために必要になってきます。
立ち退き料の性格は、引越しにかかる費用の補償だけでなく、引越しすることによって無くなる借家権・居住権の補償というようなものを持っています。
立ち退き料の相場を知りたいというような話がありますが、立ち退き料には実際には相場はありません。
立ち退き料は、個々の事情によって全く違っており、案件ごとに裁判所も判断し、立ち退きを要求された場合は、入居者はいろいろな反応があります。
「了解しましたが、引越し費用程度はせめて欲しい」というような人がいる一方、引越し先を自分で見つけて、退去する際に菓子折を持ってきて「お世話になりました」と言ってくれる人も中にはいます。

また、「ここで夫が亡くなったので、死ぬまで自分もここにいる」というように、どうしても引越ししたくない高齢者がいたり、「引越しはするが、同じ広さの物件を同じ家賃で探して欲しい」という人もいたりします。
立ち退き交渉の場合は、金額のみでなく、このような個々の事情に応じて対策する必要があります。
そのため、交渉を実際に行ってみないと、どのように決着できるかはっきりしません。
立ち退き交渉が成功しなくて、どうしても退去しなくて、わずか入居者の1人が残ったままで、建て替えが何年もできないというような場合も相当あります。
権利が無くならないように、入居者は家賃をこの間支払い続けています。

しかし、家賃が1人分のみでは、不動産を維持管理するための固定資産税などの費用としては全く足りません。
家主にとっては事態は深刻で、建て替えて土地活用するプランがあっても頓挫するようになります。
交渉に成功しなければ、不良資産に大事な資産が変わるかもしれない、ということが立ち退き交渉のリスクです。

 

では、立ち退き料はどうやって考える?

立ち退き料は、単純に、引越しを入居者に頼む「協力料」と考えるとよく分かるでしょう。
協力料としては、「入居者の移転費用の補償」という性質があります。
移転費用としては、引越し費用、移転先に払う礼金・敷金・保証金などの費用、家賃が移転によって増えた際の差額などが含まれます。

また、「営業権、居住権などの入居者が失う利益の補償」という性質もあります。
これは、移転することによって交通の便や広さなどにおいて不利益になった際の補償、営業している場合は以前と同じ営業をするための休業補償や設備補償、減収補償などがあります。
さらに、「失う借家権の補償」という性質があります。
借家権という考え方が、相続税評価や公的な収用の際にあるからです。

 

立ち退き交渉で押さえておきたい10個のこと

・コンサルタント会社や不動産業者のいい相談者を選ぶ

交渉を頼む場合は、話を十分に聞いてくれる、しっかり礼儀作法がしている、忍耐力があり誠実である、事前調査をきちんとして十分に費用について説明してくれる、ような相談者を選びましょう。

・冷静に常に対処して感情的にならない

成功するためには忍耐が必要です。
これまでよく対応してあげたのにということは通用しません。
立ち退きに協力してもらうスタンスの方がいいでしょう。

・はっきり立ち退き交渉の目的をする

立ち退きの目的としては、事業化、税金対策、売却、子供との同居などというように、はっきりしておくことによって方針を立案しやすくなって、弁護士や交渉人も動きやすくなります。
・立ち退き料は多めに予算を見ておく
売却や事業化の場合など、敷金プラン、事業収支プランにおいては、先々慌てないように多めに立ち退き料の予算を見ておきましょう。

・十分に交渉相手を把握する

交渉相手の性格・経歴・年齢・職業・経済状況・出身地・健康状態・家族状況・建物の使用状況などについて、十分に把握しておきましょう。
また、意思決定者に契約者がなっているとは限っていないため注意しましょう。

・必ず交渉した記録は残す

交渉した記録は、メモや日記でもいいため、はっきりと時間と日付を記録しておきましょう。
裁判に後日なった際に、証拠になるだけでなく、経緯を交渉代理人に説明する場合にも役に立ちます。

・時間をかける

ヒアリング期間、事前調査期間の目安は2週間~1ヶ月、交渉を入居者と行う期間の目安は3ヶ月~10ヶ月、調停する際の目安は6ヶ月~1年半、裁判する際の目安は1年~2年になります。

・次の世代に権利調整上の問題は残さない

先送りに問題をしても、次世代が必ず苦労するようになります。
相続する際は、納税対策以外に、経営・管理の引き継ぎも考慮する必要があります。

・裁判を恐れない

必要な場合は、十分に借地借家法を把握して、依頼主の考えを十分に確認してくれて迅速に行動する弁護士に頼みましょう。
しかし、弁護士にいきなり頼むと相手が硬化するため注意しましょう。

・落ち込まないように注意する

交渉が進まなくて落ち込んだ場合は、立ち退き交渉の悩みを持っているのは他にもいる、明るい未来が解決の先にはある、と考えましょう。

 

正当事由をご存知ですか?

建物が古くなったため立ち退きして欲しいというように、立ち退き要求が家主からある場合は、一般的に理由が何らか添えられます。
全くこのような理由がなければ、家主は借主を立ち退きさせる権利がないためです。

この理由が、借地借家法第28条で決められている正当事由です。
この正当事由が、家主と借主でいずれが多いかを比べて、正当事由が家主の方が少ない場合は、正当事由を立ち退き料を支払うことによって補う必要があり、一方、正当事由が借主の方が少ない場合は、立ち退き料は少なくなる、あるいは不要になる、というようになります。
なお、基本的に、正当事由が家主の方が多い場合は相当少ないようです。

 

不動産トラブルに関する困りごとは弁護士へ相談を

入居者と立ち退き交渉する適任者としては、交渉力に長けた弁護士のサポートを借りることをオススメします。
法律のプロである弁護士なら、借主に代わって家主と交渉してくれます。

また、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、不動産関係で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

不動産トラブルに詳しい弁護士に事前に相談しておくのがおすすめです。

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弁護士に相談する前に、弁護士費用が不安な方はベンナビ弁護士保険の利用を視野に入れてみましょう。

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