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立ち退き料・立ち退き費用。その請求方法って?

更新日:2019年07月09日
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立ち退きというのは、貸し主が賃貸借契約で建物の取り壊しや建て替え、あるいは、自分で使う必要があることなどから、契約に違反していないテナント事業者などの借り主に、解約を申し入れしたり、契約期間が終わった後の更新を拒んだりして、物件から退くことを請求するものです。
なお、一般的に立ち退きというのは、契約違反の無断転貸や家賃滞納などで賃貸借契約を解約することによって明渡請求をすることもありますが、ここでは、契約違反の場合は除いています。
貸し主が、借り主に賃貸借契約の解約の申し入れや更新拒絶を行うには、正当な事由が借地借家法第28条によって必要とされています。
そのため、借り主に対して貸し主が更新拒絶などを行えば、正当な事由があるかどうかや、一つの正当な事由の要素の立ち退き料について、訴訟や交渉になる場合があります。

立ち退きさせるためには?

立ち退きはいろいろな理由がありますが、次のようなことが一般的には挙げられます。

・資産価値を建て替えによってアップしたい
・これまでは賃貸していたが、自分で今からは住みたい
・入居している人が家賃を滞納して困っている
・建物を売りたい
・都市計画事業がある

賃貸物件の定期借家契約以外の契約においては、退去勧告という解約を貸し主から申し入れする場合は、基本的に、契約期間が終わる6ヶ月までに解約を借り主に申し入れする必要があります。
また、契約期間を決めていない場合は、解約の効力は6ヶ月が解約を申し入れしてから経った際に生ずると決まっています。
しかし、注意する必要があるのは、借地借家法28条によって、6ヶ月が経った際の解約の場合でも、正当な事由が申し入れするためには必要であり、解約は正当な事由がなければできないと決まっていることです。
正当な事由というのは、借り主に貸し主が住居の立ち退きを要求できる一般的な世の中の常識的な理由のことです。

正当な事由については、「建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知(注:更新拒絶の通知を意味する)又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」と借地借家法第28条において決まっています。
例えば、正当な事由としては、古い建物で新耐震基準法をクリヤーしていないため、破壊や倒壊のリスクがある場合などが該当します。

しかし、それぞれのケースによって状態・理由・経緯などが違ってくるため、正当な事由が最終的に認められるかは、裁判によって決まります。
つまり、貸し主が、更新拒絶などを借り主に通知しても、正当な事由が無いと、効果が更新拒絶などの申し入れも生じなく、賃貸借契約は終わりません。
では、正当な事由はどのように判断されるのでしょうか?
ここでは、正当な事由を判断する方法についてご紹介しましょう。
貸し主が、借り主に解約や賃貸借契約の更新拒絶を申し入れする際には、正当な事由が貸し主側にあることが必要になります。

正当な事由の要素の主なものとしては、貸し主・借り主の両方が建物を使うことの必要性を考えて、要素の従たるものとしては、従前の建物の賃貸借についての経過、建物を利用している状況、現在の建物の状況などを考えて、さらに、要素のこのような事情を補うものとして立ち退き料を払うことを考えるというようになります。

つまり、貸し主側が建物を使う必要性などと、借り主側が建物を使う必要性などを比べて、正当な事由が貸し主側の事情だけでは認められるとは必ずしも言えない時に、経済的な借し主の損失を補うということから、要素の正当な事由を補うものとして立ち退き料が必要になります。
そのため、立ち退き料と正当な事由があるかどうかについては、個別の案件ごとの事情をトータル的に考えて判断されるようになります。
 

立ち退き料とは?

立ち退き料というのは、正当な事由があるかどうかを貸し主による更新拒絶などにおいて検討する時に、財産上の給付として借し主側の正当な事由を補うものです。
一般的に、金銭が一時金として払われる場合が多くありますが、賃貸物件に付いている動産を譲ったり、代替物件をサービスしたりする場合も事案によってはあります。
貸し主側の正当な事由が完全でない時に、正当な事由を補って、立ち退きを要求するものと考えられます。
借し主側からすれば、貸し主の正当な事由が十分でない時に、経済的に自分に起きる損失を少なくする役目があります。
立ち退き料の扱いについての判例のルールについてご紹介しましょう。

立ち退きを貸し主側が要求する理由が、正当な由をそれのみでクリヤーする時は、立ち退き料は低額になるか、あるいは発生しません。
基本的に、立ち退き料は、正当な事由を補うものであるため、立ち退きを貸し主が要求する必要性が正当な事由に当たるか、あるいは必要性が低い時は、立ち退き料を高額に払っても、正当な事由は認められません。
立ち退き料は、正当な事由を補うためであり、借し主に起きる損失の全てを必ずしも補う必要が無いとされています。

 

立ち退き料の考え方

立ち退き料について、「立ち退き料を相場通りもらえる場合は立ち退きしてもいいと考えているため、相場について知りたい」というようなことをテナント事業者が聞く場合があります。
しかし、立ち退き料の考え方としては、相場というようなものはありません。
つまり、先にご紹介したように、立ち退き料というのは、正当な事由を判断する際に貸し主側の事情が不足する時に、要素のプラスアルファのものとして考えるようになります。
そのため、立ち退き料を払う必要があるかどうかは、両者の全ての事情をそれぞれの事案ごとに考えないと判断できません。
また、立ち退き料が必要な時でも、貸し主と借し主の建物を使う必要性が大きいかどうかを考えて立ち退き料は決まるので、立ち退き料だけについて考えることはできなく、立ち退き料を一律に決定することはできません。
また、立ち退き料を計算する方法に関しても、決定しているものがあるということではなく、判例によって違ったものが採用されています。
このようなことから、立ち退き料の考え方として相場というようなものはありません。

実際の立ち退きの流れ

ここでは、実際の立ち退きの流れについてご紹介しましょう。

・更新拒絶などの意思を貸し主が示す

貸し主側で、建物の取り壊しや建替え、売却など、あるいは、自分で使うなどの必要性があり、契約違反などの過失が借し主側にない時、立ち退きを貸主が借り主に要求するには、解約の申し入れや更新拒絶の意思を示す必要があります。
まず、契約期間が賃貸借契約において決められている時は、契約期間が終わる6ヶ月~1年前までに、貸し主が借り主に契約更新を拒絶する意思を表す必要があります。
更新拒絶の意思を貸し主が示さなかった時は、契約期間が終わっても、賃貸借契約は契約期間の決めがないものとして法定更新として契約更新がされるようになります。

また、契約期間の決めがない時や法定更新をしている時は、解約の申し入れを貸主が借り主に行う必要があり、契約が解約の申し入れ日から6ヶ月経った後に終わるようになります。
解約や更新拒絶の申し入れを貸し主が借り主に行う時は、正当な事由があることが借り主に立ち退きを要求する際には必要であると借地借家法上は決められています。
立ち退き料を、正当な事由を補うために貸し主から払う必要があることがあります。
なお、正当な事由が必要になるのは、解約の申し入れや更新拒絶を貸し主が借り主に通知した時から、6ヶ月が経つまでの間であるとされています。
しかし、正当な事由が通知する時にない場合でも、正当な事由が通知した後に具備されると、契約の終了の効果が正当な事由が具備されて6ヶ月経った後に生じると判例上はされています。

・任意交渉

解約や更新拒絶の申し入れの意思を貸し主が示した後、交渉を当事者双方で行って合意すると、和解契約を当事者間で結んで、立ち退きが和解内容によって行われます。
任意交渉の場合は、主として、借り主が立ち退きするかどうか、立ち退きする時期、立ち退き料、移転先物件の貸し主による提供などについて話し合いを行って、両方が妥協できる点を検討するようになります。

・訴訟

任意交渉で話し合いがまとまらなければ、賃貸借契約が終わることによる立ち退き請求の訴訟を貸し主側から提訴するようになります。
この訴訟においては、主として、正当な事由が貸し主の解約申入・更新拒絶にあるかどうかが争点になります。
裁判所は、正当な事由が立ち退き料なども含めてあるかどうかを判断し、貸し主の請求を認可する時には、立ち退き料を貸し主が払う代わりに、借り主に立ち退きを命じる判決を出す場合があります。

 

立ち退きを促す時の注意点

ここでは、立ち退きを借り主に促す時の貸し主の注意点についてご紹介しましょう。

・いい相談者としてコンサルタントや不動産業者を持っておく

立ち退きの交渉は、話を十分に聞いてくれる、しっかりと礼儀作法がしている、忍耐力があり誠実である、事前調査をきちんと行って十分に費用について説明してくれる、ような人に頼みましょう。

・いつも冷静で感情的にならない

成功するためには忍耐力が必要です。
スタンスとしては、協力を移転するためにしていただくというものの方がいいでしょう。

・立ち退き交渉ははっきり目的をさせる

立ち退き交渉の目的を、事業化、税金対策、売却処分、子供との同居などというようにはっきりさせておくことによって、方針を弁護士や交渉人も立てやすくなって動きやすくなります。

・立ち退き料は多めに予算を見込んでおく

資金計画、事業収支計画においては、立ち退き料は多めに予算を計上して、先々不安のないようにしましょう。

・交渉する借り主を十分に把握する

性格・経歴・年齢・職業・経済状況・出身地・健康状態・家族関係・建物の使用状況などを、十分に掴んでおきましょう。
また、借り主が意思決定者とは必ずしも限っていないため注意しましょう。

・必ず交渉した記録は残す

交渉した記録は、メモや日記でもいいため、時間と日付をはっきりさせておきましょう。
裁判に後日なった時に、証拠になるだけでなく、経緯を交渉代理人に説明する時にも必要です。

・時間がかかる

ヒアリング、事前調査の期間は2週間~1ヶ月程度、入居している人と折衝する期間は3ヶ月~10ヶ月程度、調停の期間は6ヶ月~1年半程度、裁判の期間は1~2年程度が目安になります。

・次の世代に権利調整上のトラブルは残さない

トラブルを先送りにしても、次の世代が必ず苦しむようになります。

・裁判を恐れない

十分に借地借家法を学習して、必要な場合は、貸し主の考え方を十分に聞いてくれて素早く行動する弁護士を選びましょう。
しかし、弁護士をいきなり介入させれば、借り主が硬化するため注意しましょう。

・メンタル的に落ち込まない

交渉が難しくなって落ち込んだ場合は、立ち退き交渉が解決すると明るい将来があると考えましょう。

 

立ち退きに関してのまとめ

立ち退きとは、貸し主が賃貸借契約で建物の取り壊しや建て替え、あるいは、自分で使う必要があることなどから、契約に違反していないテナント事業者などの借り主に、解約を申し入れしたり、契約期間が終わった後の更新を拒んだりして、物件から退くのを請求することです。
立ち退きさせるためには、正当な事由が必要になります。

立ち退き料とは、正当な事由があるかどうかを貸し主による更新拒絶などにおいて検討する時に、財産上の給付として借し主側の正当な事由を補うものです。
立ち退き料の考え方としては、相場というようなものはありません。
実際の立ち退きの流れとしては、更新拒絶などの意思を貸し主が示す、任意交渉、訴訟、というようになります。
貸し主が立ち退きを借り主に促す時は、ここでご紹介したような注意点について把握しておきましょう。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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