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避けられない自然災害。賃貸不動産に関するトラブルが起こってしまったら?

更新日:2024年02月19日
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※台風19号による豪雨で被災された皆さまに謹んでお見舞いを申し上げます。こちらの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
予測できない自然災害。
 もし、賃貸している不動産が何かしらの自然災害の被害に遭ってしまった場合、どのようなトラブルが起こりうるのでしょうか。

いつ起こるかわからない自然災害

 日本は地震や台風はもちろん、ここ数年では大雨による浸水や河川の氾濫、洪水、土砂崩れや土石流などが頻繁に起こっています。最近起こった西日本の豪雨災害は本当に酷いものですね。
 また他にも高潮や竜巻、突風などの自然災害も度々ニュースなどで取り上げれられています。

 大規模災害で懸念されているのが南海トラフ地震ですが、それ以外にも茨城県沖や三陸沖北部で大きな地震が起きる確率が90%以上とされているなど、本当にどこで大きな地震が起きるかわからない状態です。実際に阪神淡路大震災などは、予測されていなかった大地震だったようし、ゲリラ豪雨がいつ発生するかも予測ができません。いつどこで災害に遭い、住宅に被害が出るかわからないのです。

自然災害による被害の修繕の責任は誰にあるのか?

 ●借主に過失が無い場合
  物件の修繕については、民法に次のように定められています。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。(民法第606条1項)

  
通常借りた物件の破損や汚損があった場合、借主には原状回復義務がありますので、借主が修繕しなければなりません。
しかし、自然災害や経年劣化などによる建物の被害など、借主に過失が無い場合は、修繕の費用は基本的に貸主(大家さん)が負担することになります。
もちろん、家財道具など借主の所有物に損害があった場合は、借主の負担となることになります。

例えば地震によって家具が倒れて、フローリングに傷がついてしまった場合などの修繕費は、基本的に貸主負担で、家具の修繕費などは借主負担です。
このような場合、借主は地震による破損が生じた旨を、速やかに貸主に相談したほうが良いでしょう。
後々退去時に「地震による破損だ」と伝えたとしても、その破損が地震によるものかどうかを証明するのは難しく、原状回復の範囲とみなされれば、敷金から修繕費が引かれてしまいます。
自然災害による破損などの被害についてはトラブルになりやすいので、注意が必要です。

ちなみに、自然災害により建物が滅失(建物としての効用がなくなった状態になること)したときは、貸主・借主のどちらのせいでもない不可抗力による契約終了となりますので、契約期間が残っていたとしても、賃貸契約は終了します。貸主に損害賠償義務はありません。
被害はあったが滅失には至らなかった場合は、貸主は修繕を行わなければなりません。借主も、修繕を請求することができます。

また、修繕そのものや、修繕のために借主が一時的に退去しなければならなくなった場合は、借主はこれを断ることはできません。これも民法第606条2項に定められています。

賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

 ●借主に過失がある場合
  例えば台風が来ているにもかかわらずベランダに物を出したままだった結果、物が倒れてしまって窓ガラスが割れた、などといった場合は、借主の過失です。
  借主には「善管注意義務(※)」がありますので、善管注意義務に違反したことになり、借主に損害賠償義務が生じるというわけです。

 ※「善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」という事で、民法第400条に明記されています。

●建物に瑕疵(かし:欠陥や過失の事)があった場合
 自然災害が起こる前から建物自体に瑕疵があり、借主から修繕依頼があったにもかかわらず修繕を行わず、それが原因で借主や第三者に被害が及んだ場合は、貸主に損害賠償責任が生じます。
 例えば、塀が老朽化していて崩れそうだったので、借主が貸主に修繕依頼をしていたが修繕されていないままで、自然災害により塀が崩れてしまい、借主の車が破損してしまった、などという場合は貸主の責任です。車は借主の所有物ですが、損害賠償をしなければなりません。
 ただし、借主が瑕疵に気づいていたにもかかわらず貸主に修繕依頼をしていなかった場合は借主の責任になります。また、修繕依頼をしていたとしても、瑕疵であることを証明するのが難しいケースもあります。もし修繕依頼をしても放置されてしまった場合は、写真に残しておくなどの対策を取っておく必要があります。

自然災害による営業停止の損害賠償もしなければならない?

 もしも、店舗を貸し出していた場合に、自然災害が原因でその店舗が営業停止を余儀なくされてしまったら、貸主は損害賠償をしなければならないのでしょうか?

 ●営業停止中の家賃減額
  民法第611条1項によると、
  

  賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
  

  とされています。
  貸主は、目的物を利用できるという前提で賃貸していますので、自然災害などにより使用収益ができなくなってしまった=目的を提供できなくなったということになるのです。
  この場合、借主は貸主に家賃の減額を請求することができます。

  余談ですが、この先民法の改正によって「減額を請求することができる」から「減額される」に変わるそうです。いずれにしても借主から貸主に通知をしなければならないようですが、“当然減額される”ことになるようです。

  減額の割合は「滅失した部分の割合」ですので、例えば1ヶ月分の賃料が丸々減額されるのかと言われればそうではありません。利用できなくなったのが水回りだけだったとすれば、その割合で家賃が減額される、というわけです。

 ●営業停止中の売上の損害賠償
  貸主は、賃貸物が使用収益できなくなった場合は修繕を行う義務があります。
  その原因が自然災害などの不可抗力によるものであったとしても、貸主はその義務を免れないとされています。
  借主からの修繕依頼に即座に対応できず、営業再開が遅れた、被害が拡大してしまったなどという場合は、店舗の借主から営業利益の損害賠償を請求されてしまう可能性があるという事になります。

 店舗を貸し出していた場合は、このように家賃減額や損害賠償を請求されてしまうケースがあることがわかりましたが、実際に請求をする際や、請求を受けた場合は、トラブルになってしまう可能性が大きいですので弁護士などの専門家と相談しながら対応をしていくほうが良いでしょう。

賃貸物件の原状回復費用を負担するのは誰?

 さて、賃貸物件の原状回復の費用は、どのように負担することになるのでしょうか。どんな場合にだれが負担するのかを知っておいた方が、自然災害時に誰の負担になるのかを判断する材料となるかもしれません。貸主、借主それぞれの負担をみてみましょう。

 ●貸主が負担するべき原状回復費用
  貸主が負担するべき原状回復費用は、次のようなものになります。
   ・建物の経年劣化の回復費用(備え付け家電の劣化、日照による変色など)。
   ・借主の通常消耗の回復費用(ハウスクリーニング代、鍵の交換費用、壁のクロス交換など)
   ・自然災害による損耗(地震等による窓ガラスの破損など)

 ●借主が負担するべき原状回復費用
借主が負担するべき原状回復費用は、借主の故意や過失によって生じた損耗や傷、また故障や不具合を放置したことなどが原因で発生・拡大してしまった損耗や傷などです。具体的には
・タバコの火種による畳の焦げ
・クロスの下の板も張り替えなければならない程の釘穴やネジ穴
・引越や模様替えなど、家具の移動で生じたフローリングや柱の傷
・結露を放置した結果拡大したカビやシミ
  などです。

  ちなみにクロス交換については貸主負担となっていますが、例えばタバコのヤニによる変色や匂いの付着があった場合や、カビを生やしてしまった、シミをつけてしまった、などという場合は借主負担となることもありますので気を付けてください。

自然災害に遭ってしまった時の対応

 では、実際に自然災害に遭ってしまったら、どのように対応したら良いのでしょうか。
 
 まずは、早めに管理会社や大家さんに連絡をしましょう。
 時間が経過した後や退去時に伝えた場合は、破損などが自然災害によるものかどうかを証明することは難しくなり、また疑われてしまう可能性もあります。
 被害に遭ったら速やかに伝えることが大切です。

 そして、後々トラブルにならないよう、被害状況を記録しておきましょう。
 自然災害に遭った被害箇所を写真で撮影しておくなど、証拠を残しておくことは重要なことです。先述したとおり、自然災害による損耗は貸主負担です。借主の過失でないことを後々証明するために、必ず記録しておいてください。
 これは自然災害の時だけでなく、入居時なども写真を撮影しておくと、後々のトラブルに有効ですので、賃貸物件を借りるときは、写真などの証拠を残しておくことをくせづけておいた方が良いかもしれません。

不動産に関する困りごとは弁護士へ相談を

どこに住んでいても、自然災害による被害やトラブルは避けられない問題です。
被害に遭わないことが一番ですが、もし被害に遭った時にどうしたらいいか、誰に責任があるのかを理解する必要があるでしょう。

また、不動産契約は非常に複雑で、法的要素を伴うものもあります。

不動産に関する困りごとがあれば、弁護士に相談してみましょう。

弁護士であれば、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、不動産関連で起きやすいトラブルを未然に防いでくれるでしょう。

弁護士を選ぶ際は、トラブルの内容に精通しているかどうかや相談のしやすさ、説明の分かりやすさを意識しておくのが重要です。

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