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【弁護士監修】知っておきたい借地借家法で立ち退き要求に対抗

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弁護士 安達 由幸 三田通り法律事務所

2018年09月04日 公開
知っておきたい借地借家法で立ち退き要求に対抗のアイキャッチ

①正当事由という言葉を知っていますか?

 皆さんは、正当事由ということばをご存じでしょうか?
 借地借家法が適用される土地の貸し借りや、建物貸し借りについては、定期借地権や定期建物賃貸借などの一定の場合を除いて、賃貸借契約で定めた期間が満了しても当然に消滅することありません。
 このようなケースでは、借地借家法によって、地主や家主側から借地契約や建物賃貸借契約を消滅させるためには、更新拒絶や解約の申し入れをしなければならず、これらの申出に際して正当事由が必要とされています。
 裏返して言えば、地主や家主側から立ち退き要求がなされた場合にも、正当事由がなければ契約が終了しませんので、地主や家主側からの立退き要求はこちらが拒否すれば認められないこととなり、契約が更新される結果、引き続き目的物を使用できることになります。
 ここで出てきた更新の拒絶や解約の申入れに正当事由を必要とするという制度は、もともとは、1941年の借地法、借家法の一部改正において取り入れられたもので、当時の住宅難の事情などを反映して正当な理由なく土地や建物の明渡しを求められる借地人、借家人を保護して、治安の安定を図ることなどを目的に成立されたものです。
 この正当事由については、旧法においては、正当事由については単に「自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合」(借地法4条1項但書及び借家法1条ノ2)とありましたが、現在の借地借家法では、正当事由がある場合としては、土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況のほか、いわゆる立退料などの財産上の給付の申出などが考慮されると明らかにされています。
 旧法に比較すれば、判断基準が列挙されていますが、例えば、地主や家主側に自ら使用する必要があれば直ちに正当事由の有無が認められるものではなく、あくまで当事者双方の個別的な事情を吟味して判断されています。

②借地契約の更新請求・更新拒絶の要件って?

 借地契約における更新請求とは、借地権の存続期間が満了する場合において借地人が地主に対して同一の契約関係の継続を求めることをいいます。
 借地人側から契約の更新を求めて地主もこれに同意してくれれば契約は合意更新となります。そして、借地人からの更新請求に対して、地主側が遅滞なく異議を述べて更新拒絶をしたり、借地人が借地契約の存続期間が満了した後で土地を使用継続している場合に地主側は遅滞なく異議を述べて更新拒絶をしない場合も借地権は更新されます。
 この時の更新拒絶が認められる要件として、ここで地主側の異議に正当事由が必要とされています。裏返して言えば、正当事由がない更新拒絶は、借地人側としては対抗できることとなります。

③建物買取請求権

 建物買取請求権とは、借地権の存続期間が満了した場合において契約の更新がないときや、第三者への賃借権の譲渡・転貸を地主が承諾しない場合に、借地権者や賃借権の譲渡転貸を受けた第三者が、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができるという権利です。
 これは、例えば更新拒絶に正当事由が認められて借地契約の更新が認められなかった場合に、借地人の建物への投下資本の回収の途を与えて借地人保護を図り、利用可能な建物の取り壊しを防いで経済上の損失を防ぐということなどを目的としています。
 なお、ここでいう「時価」は、建物の時価であっていわゆる借地権の価格は含まれないとされています。

④建物賃貸借契約の更新等

 借地借家法が適用される建物賃貸借契約を更新する場合としては、当事者が契約の更新を合意するケースのほかに、家主及び借家人双方のいずれかが借地権の存続期間が満了前の1年前から6ヶ月前までの間に相手方に対して更新しない旨の通知か、条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしない場合にも従前と同じ条件で契約を更新したものとみなされるケースがあります。

⑤解約による建物賃貸借の終了

 期間の定めのない建物賃貸借契約や期間が1年未満と建物賃貸借契約のケースでは、家主からの解約の申し入れから6ヶ月後に終了するものとされています。
 一方、借家人からの解約申し入れは、民法617条1項に従って3ヶ月の解約申入期間で足りるとされています。

⑥建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件

 家主側からの更新しない旨の通知や解約の申し入れには、いずれも正当事由が必要とされています。従って、この場合も借家人側としては、正当事由がないような更新拒絶や解約の申入れについては、この制度によって対抗することが可能です。
 そして、ここでの正当事由はいつの時点で必要かについて、判例は、解約申入時に正当事由が存在していれば足り、解約申入後の事情の変動によって一旦有効になされた解約申入の正当性は失われないとしています。また、解約申入時には正当事由が存在していなくとも明渡訴訟を提起した時に正当事由が存在していた場合、訴訟継続中に正当事由が備わり、裁判の終了までに6ヶ月経過した場合などにも黙示的な解約の申入が継続していたとして解約申入の効力を認めているものがあります。

まとめ

 以上、借地契約や建物賃貸借契約の更新や解約の場面で家主側の立ち退き要求の有効性に関して論じられることの多い、正当事由に関連して大まかな説明をしてきました。
 正当事由の制度があることで、契約上の期間が満了したので出て行って欲しいという地主や家主からの立退き要求に対しても借地人や借家人は多くの場面で対抗することが可能となり、正当事由の判断の中で、地主や借地人側の双方に生じた事由を総合的に考慮でき、立退料などの交渉を通じて、多種多様な状況に応じた妥当な紛争解決を図ることができることになります。
 もっとも、最初に述べたように、全ての賃貸借契約に正当事由制度が適用されるわけではありませんし、正当事由があるのか、ないのかというのかの判断には、個別の事情の吟味が不可欠です。従って、最終的には、やはり専門家に相談することをお勧めします。

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安達 由幸 (弁護士)三田通り法律事務所

■不動産鑑定士の視点も合わせ、問題解決に尽力いたします。 当職は、不動産鑑定士の資格を保有しております。 法律家としての問題解決と合わせて、不動産の鑑定評価業務も行っており、不動産関係も専門性を持ち合わせております。 不動産に関するトラブルや問題解...

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