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立ち退きの強制執行⁉必要なものと方法は?

更新日:2019年07月09日
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そもそも強制執行って何?

 強制執行とは裁判所の判決により強制的に手続きが行われることを指します。別名差し押さえとも呼ばれていて債務者の財産を差し押さえることで債権者への返済に充てるというものです。債権者からの再三の連絡に応じなかったり、債権を放置したままの債務者に対して債権者が起こす民事訴訟で判決が下ります。強制執行という言葉だけ聞くと給料や不動産、家の中にある家具・家電など全てを差し押さえられるのではと思う人がいますよね。テレビドラマでも「差し押さえ」とかいてある紙を自宅の中にペタペタ貼るシーンは見たことある人が多いのではないでしょうか。
 強制執行は大きく分けて3種類に分けることができます。債権執行と不動産執行・動産執行の3つです。この3つの執行について紹介していきます。
 債権執行:債権執行は債権者が起こした民事訴訟で一番多い執行です。債務者個人が対象の場合は給与や預金を差し押さえることができます。一方、事業主や企業などを相手に債権執行をするときには売掛金債権や貸与金債権が対象になることが多いです。
 不動産執行:不動産執行は債務者の所有する土地や建物など不動産資産を対象に差し押さえる強制執行です。自宅や自社ビルなども対象になります。さらに登記されている地上権も強制執行の対象にすることができます。
 動産執行:動産執行は不動産ではなく動産。つまり通常の現金・不動産以外の資産が対象になる強制執行です。代表的なものとして骨董品や貴金属、現金でも66万円までならば動産資産として強制執行の対象になります。
 強制執行するというのは債務者の資産を奪い債権者への返済に充てることになりますが、債務者が日常生活を送る上で必要最低限の生活費は差し押さえることができません。それなので債権執行で給与を差し押さえる場合は1/4まで、動産執行の場合では衣類や家具など日常生活に必要なものは差し押さえしないというルールが決められています。テレビドラマで家具に「差し押さえ」のシールを貼っているのはフィクションというわけですね。

強制執行に必要なもの

 強制執行をする上で必要なものを含め、強制執行までの流れを紹介していきます。強制執行をする際には債務名義の公正証書に強制力を持たせなければいけません。そこで公正証書を作成する必要があるので公正証書正本と戸籍謄本・住民票や免許書・印鑑と印鑑証明書を用意しましょう。さらに調停調書や仮執行宣言付判決には収入印紙300円を添付する必要があります。
 ここまでで強制執行の申し立てに関する準備が整いました。これからは強制執行の申し立てを行っていきます。債権執行の強制執行で申し立てをする際には、債権差押命令申し立てというのを行います。これは債務者の住所を管轄する裁判所に提出する申請書で、申請時に必要なものとして当事者目録・請求債権目録・差押債権目録・債務名義・送達証明書・申し立て手数料・郵便切手代がかかります。
 不動産執行の強制執行を申し立てをする場合は不動産を管轄する地方裁判所へ申請をします。不動産は差押をしてもすぐに価値がつかず、競売というオークションにかけることになります。しかし、競売は民間の行うオークションよりも比較的安価な最低価格から始まることが多く、相場よりは安価になりがちです。さらに競売が完了するまでには約1年ほどかかるので時間がかかることを覚悟しておいてください。
 ここからは必要書類の中に出てきたキーワードについて解説していきます。まずは「債務名義」です。債務名義とは判決のことを指すものだと思っておいてください。送達証明書とは判決が債務者に送達されたことを証明する書面のことです。法律で強制執行をする場合は相手方に必ず判決が送られなければいけません。
執行官との打ち合わせ

執行官との打ち合わせ

 不動産執行において債権者側の申し立てにより強制執行が確定した場合は執行官との打ち合わせが行われます。裁判所によって異なりますが直接会って打ち合わせをすることもありますし、電話で済ませることもあります。このときに明け渡し催告の日が決められて執行補助業者をどこの会社にするかなど執行官へ伝えることになります。執行補助業者とは引っ越し業者のようなもので強制執行で荷物を運び出す・保管する業者のことを言います。もし、執行補助業者が決まっていない場合は執行官の方から紹介してくれることもあるようです。
 ここで注意すべきなのは執行補助業者への日当です。執行補助業者と言っても相手は民間企業なので費用形態は様々です。各執行補助業者が担当する部屋の大きさや荷物の多さによっても費用にばらつきは出てきますが大まかに15万円〜60万円程度の間で推移するでしょう。できるだけ安い執行補助業者を選ぶことをお勧めします。

明け渡し勧告をする方法

 執行官との打ち合わせで明け渡し催告の日が決まったら債務者へ明け渡しの日にちを知らせに行く必要があります。これは郵便などではなく直接出向かなければいけないことが多いです。債務者の占有している賃貸物件や不動産に債権者または代理人・執行官・執行補助業者・立会人で向かいます。立会人は執行官が用意してくれることが多いです。債務者の占有不動産へ向かったら物件の占有状況を再確認し引き渡し期限と強制執行日を公示書に記載して不動産に貼り付けます。これは民事執行法で定められている正式な方法です。
 通常、明け渡し日は明け渡しの催告があった日から1か月となっています。ちなみに実際に強制執行されることは「断行」と呼ばれます。断行日というのは明け渡し日よりも数日前に設定されることが多く、あくまで完全な明け渡し日が決められているのです。
 なぜ明け渡しの催告をするだけなので執行補助業者が帯同する必要があるのでしょうか。それは実際に不動産や室内を見て執行補助業者が見積もりを出す必要があるからです。この段階になってやっと強制執行にかかる費用が明らかになります。

断交日にすること

 断交日になったら執行補助業者の協力のもと、強制執行を行います。不動産内から出された家具など荷物類は執行官が用意した場所へ一時的に保管されその後、廃棄されます。強制執行までに債務者が不動産の明け渡しをしてくれる場合には強制執行をしなくて済みます。そこでより強制執行をしないで済む可能性が高い方法を紹介していきます。
弁護士に依頼する

弁護士に依頼する

 家賃の滞納や不動産からの退去を弁護士へ依頼すると強制執行前にことが解決することが多いです。その理由としては個人や企業として債務者に連絡を取るよりも早い段階で債務者にプレッシャーをかけることができるからです。皆さんも自分宛に弁護士や弁護士事務所から手紙が届いたら焦りや不安が大きくなりませんか?それと一緒で心理戦にはなってしまいますが弁護士を早期に使うことでことを早く解決できる可能性が広がります。
 また、執行補助業者とのつながりが深い弁護士の場合は執行補助代を安価で引き受けてくれる業者を知っているかもしれません。
 ただし、弁護士に依頼するとデメリットもあります。それは弁護士費用です。弁護士を雇用し案件の解決に働きかけるので弁護士費用は切っても切れない関係ですが、弁護士費用というのはどの程度かかるのでしょうか。
 弁護士に支払う費用は大きく分けて2つです。着手金と成功報酬。着手金とは案件に着手する段階で発生しる費用でいわゆる手付金のようなものです。報酬金は成功報酬によって左右しますが不動産の強制執行では成功しても利益はそこまでないので滞納があった場合は回収金額の10%前後が適正価格だといえるでしょう。

強制執行の流れとその後…

 強制執行した後はどうなるかといえばハウスクリーニングをしてから別の賃貸希望者へ賃貸契約をさせる、新しい家主を見つけるなどの方法があります。持ち家を強制執行で競売へかけた場合は競売が終わる約1か月後に競売価格が手元に入ってくるでしょう。
 その後に執行補助業者への支払いや弁護士を利用した場合は報酬金などを支払って強制執行を含む不動産執行が終了になります。不動産さえこちらのものになれば新しく借主を探すとき、買主を探すときと同じような流れになります。

まとめ

 強制執行は裁判所からの判決で命じることができますが、用意する書類や手続きの大変さが問題点になります。そこで強制執行をする前の段階で弁護士に依頼をして代わりに交渉してもらうことで債務者にプレッシャーをかけることができ、強制執行まで行かずにことが解決することもあります。強制執行にまで発展しても強制執行に慣れている弁護士を介在させることで円滑に話を進めることができます。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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