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家賃増額の請求をされてしまった!拒否することはできる?

更新日:2024年02月14日
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家賃と言えば固定費として考えている方が多いでしょうし、家計の管理をする際も固定費として管理をしていますよね。
 では、住んでいるアパートなどの家賃が突然増額するとしたらどうでしょうか。
 固定費である家賃が増額してしまったら、当然家計は圧迫されます。
 場合によってはこれから引っ越しを考えていた物件が値上がりしたことによって家計と合わなくなり、再度物件探しをしなければならなくなったというケースもあるのではないでしょうか。

 家賃が値上がりするのはなぜなのでしょうか?
 値上がりの理由や、拒否ができるかという点などについてみていきましょう。
 

家賃増額の条件と増額のタイミング

 そもそも家賃を増額していいのかという点についてですが、家賃については借地借家法第32条第1項によって次のように定められています。

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

①家賃を増額するための条件
  まずは家賃を増額するための条件です。借地借家法第32条第1項によると
   Ⅰ 土地または建物に対する租税などの増減により土地または建物の価格が上昇または低下した場合
Ⅱ 経済事情の変動があった場合
Ⅲ 近隣の類似物件の家賃と比較して不相当になった場合
  このような場合は契約条件に関わらず家賃額の増減を請求することができるとしています。ただし、一定期間家賃を増額しない旨の特約がある場合は特約に従います。

  では、増額の条件に当てはまった場合の増額理由はどういったものなのでしょうか

Ⅰ 土地または建物に対する租税などの増減

   賃借人はあまり気にすることが無いと思いますが、土地には地価があります。
   地価は変動しますので、大きく地価が上がる可能性も否定できません。
   地価が上がれば、当然固定資産税が上がります。その固定資産税分を補うために家賃の請求がされるというわけです。
   また、税金が増税される際にも「税率の変更の際には家賃を見直の見直しをする」といった特約がある場合には家賃の増額の請求がされる可能性があります。

Ⅱ 経済事情の変動

   インフレなどによって物価が上がった場合や平均賃金の上昇などがあった場合にも家賃の増額を請求されることがあります。

Ⅲ 近隣の類似物件の家賃と比較して不相当

   同じような築年数、間取りの物件だと家賃はだいたい同じぐらいの価格であることが多いと思います。
   長く貸し出していると、同じような物件と比較した時に大幅に家賃が安くなっていたというケースがあります。こういった場合も家賃の増額ができるとされています。

 ②家賃の増額のタイミング
  家賃の増額には、いくつか増額されやすいタイミングがあります。
  

契約更新

   最も多いのは、契約更新時です。
   一般的に賃貸借契約は2年の契約となっているため、2年を過ぎた後も引き続き賃貸物件に住みつづける場合は契約更新をします。
   突然家賃の増額をすれば賃借人が良く思わないので、契約更新のタイミングであれば大家さんが増額を伝えやすいという理由などから契約更新時の増額が多いようです。

地価上昇や物価変動

   契約更新を待たずに、地価上昇や物価変動を理由に家賃の増額を請求される場合もあります。その理由として“入居態度が悪い”ということが挙げられます。
   大家さんとよく挨拶を交わしている、家を綺麗に使っているなど大家さんとの関係が良い場合は、大家さんも優しく接してくれますし、家賃の増額も契約更新まで待ってくれる可能性がありますが、逆に大家さんを無視する、共有スペースにいつもゴミを置いているといった大家さんと関係が悪い人は、契約更新を待たずして地価上昇や物価変動のタイミングでさっさと増額交渉をされてしまう可能性があります。
   もちろん面と向かって「あなたの態度が悪いからです」とは言われませんが、あまりにも態度が悪い場合は要注意です。

その他のタイミング

   態度が悪くなくても、大家さんと仲が良くても、契約更新の時期ではなくても、値上げの条件に当てはまれば家賃の増額をすることができますので、突然増額することも十分に考えられます。
   よくある増額のタイミングとしては次のようなものがあります。
    ・消費税増税
    ・土地開発
    ・リフォームをする代わり
  

家賃の増額を拒否できるか

 家賃の増額に納得がいかないので拒否をしようとしている場合は注意が必要です。
 それはなぜかというと、下記のように

  1. 家賃の増額の通知が来たが納得がいかず大家さんに抗議
  2. 取り合ってもらえず家賃の支払い期日を迎える
  3. 仕方ないので今まで通りの家賃を支払おうとする
  4. 「(増額した額と)金額が異なるので受け取れない」と拒否される
  5. 家賃を滞納したことになる
  6. この状態が続くと契約書に記載されているように家賃滞納を理由に追い出される

 といった状況になってしまう可能性があるからです。
 
 増額の通知や請求に納得がいかなければ、大家さんとの話し合いをきちんとすることが大切です。
 増額の告知については時期が定められていないため、急に増額を告知されてもそれ自体には問題がありません。だからといって言われるままに増額に従う必要はありません。まずは大家さんと話し合いをしてみましょう。

 大家さんが話し合いに応じない場合や、話し合っても折り合いがつかない場合でも、引き続き賃貸物件に住みつづけるのであればきちんと家賃を支払わなければなりません。
 家賃を支払わないと家賃を滞納したことになってしまいますので、ひとまず今までの賃料を支払っておく必要があります。
 しかし、先述したとおり「(増額した額と)金額が異なるので受け取れない」と受け取りを拒否される可能性があります。

 この場合は言われるままに増額後の家賃を支払うのではなく、法務局で「供託」をして家賃を支払ったことにします。

 ●供託とは
  供託(きょうたく)とは、供託所にお金を預けることによって、家賃や地代などを支払ったことにする制度です。
  供託所とは、法務局や法務局の支局などのことを言います。
  家賃を受け取ってくれない大家さんの代わりに、供託所に家賃を預けることで支払った事と同じ効果を認めてもらうことができます。そのうえで大家さんに「供託の事実」を通知してくれます。

 ●供託の方法
  まず供託には「供託原因」が必要です。
  供託原因となるのは次の3つです。
   ・受領拒絶(家賃を受け取ってくれない)
   ・受領不能(大家さんが行方不明になったため家賃が支払えないなど)
   ・債権者不確知(大家さんが亡くなって、誰が大家さんの相続人かわからず家賃が支払えないなど)
 
供託は、債務履行地の供託所(一般的に大家さんの住所を管轄する法務局など)においてある「供託書」に必要事項を記入して提出し、相当と考える家賃を供託します。
「相当と考える家賃」として今まで支払っていた家賃の金額を供託しておけば家賃滞納にはならないでしょう。

 ●このような場合も供託をしましょう
  「家賃の増額に同意しない場合は契約更新をしない」
  「家賃の増額に同意しない場合は契約期間終了までに家を明け渡すように」
  などと大家さんに言われたとしても、きちんと供託をしていれば従う必要はありません。この旨を賃貸借契約書に記載されていたとしても従う必要はありません。

  その理由は、契約満了までに何らかの理由で契約更新ができなかった場合は「法定更新」されるからです。法律によって自動的に更新されます。
  ただし法定更新の注意点は、契約期間の定めがなくなってしまうことです。
  期間の定めがなくなってしまうため、解約通知の期限は3カ月前になってしまいます。通常の契約では1ヶ月前が一般的ですので、解約をするまでの期間が無駄に長くなってしまう可能性があります。

増額交渉をされた場合の注意点

 大家さんから増額の交渉をされた場合に注意すべき点を抑えておきましょう。

 ①家賃の増減額は大家さんと賃借人の合意が必要
  大家さんだけが家賃の増減額を決定できるわけではありません。
  場合によっては不動産会社が交渉に出てくる場合がありますが、大家さんが不動産会社を介して連絡をしてきた場合は問題ないですが、不動産会社自身が交渉をしてきた場合は弁護士法違反の可能性があります。
  家賃を支払っている以上、大家さんと賃借人の立場は対等です。きちんと話し合いをして合意をするようにしましょう。
 
 ②不動産会社が言った相場に注意
  不動産会社が大家さんに近隣の家賃の相場などについて教えている場合があります。
  しかし、家賃の相場だけではなく物件の状態や置かれた環境によって近隣の家賃の相場と必ずしも一致するわけではありません。
  相場だから仕方ないか…と思えない場合は決して合意しないことです。

 ③増額の条件に当てはまっているか
  ただ単に「大家さんの懐事情が良くないので増額します」といったように大家さんの都合で値上げをすることはできません。
  先述した増額の条件に当てはまっているかどうかをきちんと確認しておきましょう。

契約更新に合わせて引っ越しをしてみては?

 話し合いをした結果、折り合いがつかなかった場合には引っ越しも検討してみてはいかがでしょうか?
 
 まず、契約更新をする際には契約更新料がかかることが多いです。
 契約更新料は家賃の1~2ヶ月分が相場ですので、結構な出費となります。
 引っ越しにもお金はかかりますが、現在の家が増額した場合の家賃と新しい家を借りた場合の家賃を比べて、それに引っ越し費用を加えて計算をしてもそこまで損をしないというケースもあります。

 引っ越しをする場合にかかる初期費用としては、敷金・礼金に加えて仲介手数料や火災保険料などがあります。おおよそ家賃の4~5ヶ月分ぐらいだと考えられます。
 それと引っ越し業者に依頼をした場合は引越費用がかかります。
 住みつづけたほうが安い可能性もありますが、気持ちよく生活をするためにも引っ越しを検討してみる価値はあると思います。

困ったときは弁護士に相談を

 話し合いがうまくいかない場合や、もめごと・トラブルが起こってしまったなど、困ったことがあれば法律のプロである弁護士に相談してみましょう。
 特に供託をした後にも大家さんが納得しなければ調停をすることになる可能性もありますし、調停が整わなければ裁判となります。こうなると弁護士に依頼することは避けられません。
 

不動産トラブルに関する困りごとは弁護士へ相談を

家賃の増額は条件を満たしていないといけません。大家さんが増額する理由がきちんと条件に当てはまっているかどうか確認する必要があります。

不動産や賃貸で困ったことがあれば弁護士に相談することが大切です。

弁護士であれば、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、不動産関連で起きやすいトラブルを未然に防いでくれるでしょう。

弁護士を選ぶ際は、トラブルの内容に精通しているかどうかや相談のしやすさ、説明の分かりやすさを意識しておくのが重要です。

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