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立ち退きの強制執行⁉必要なものと方法は?

更新日:2021年09月15日
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そもそも強制執行とは?

借り主は建物を立ち退きせよというような勝訴判決が裁判所から出た場合でも、強制的に賃貸物件の部屋の中に入って貸し主が荷物を搬出することはできません。
貸し主としては、「強制執行」によって荷物を適法に搬出して立ち退きをしてもらうことが必要です。
強制執行というのは、国の機関が強制的に権利者の権利を実現する手続です。

強制執行に必要なもの

強制執行に必要なものとしては、債務名義、執行文、送達証明書になります。
債務名義というのは、貸し主の明渡請求権がある公証文書で、民事執行法第22条に債務名義になりうるものが記載されています。
簡単に言うと、「仮執行宣言付きの判決」「確定判決」になります。
執行文というのは、債務名義の正本の最後に執行文付与機関が付けた公証文言のことで、債務名義の執行力の範囲を証明するためのものです。

なお、裁判所の書記官のことを、執行文付与機関と言います。
簡単に言えば、申し立てを判決が下された裁判所の書記官のところに行って、執行文を判決の末尾に付けてもらうことが必要ということです。

それと、執行文の付与の申請から、執行文の付与を実際にもらうまで期間は、実際には次にご紹介する「送達証明書」と一緒にもらう場合が多くあります。
送達証明書というのは、裁判所の書面で、相手方に債務名義が送られたことを証明するものです。
強制執行を始めるためには、民事執行法第29条によって、債務名義が借り主に送られる必要があると決められているので、送達証明証が必要です。

当然ですが、判決を送るには、送る判決正本が裁判所で作成済になっていることが必要です。
判決が言渡された後、判決正本が作成されるまでは、裁判所によって違っていますが、1日~1週間くらいの期間がかかります。
そこから、判決が借り主に対して送られるようになります。

執行官との打ち合わせ

債務名義、執行文、送達証明書が準備できれば、強制執行を申し立てます。
賃貸物件があるところを管轄している地方裁判所の執行官に、強制執行は申し立てします。
申し立てする際は、予納金を執行官に納める必要があります。

予納金としては、相手方の人数や裁判所によって違ってきますが、1人の相手方の場合は、予納金が6万円~7万円くらい必要になります。
なお、執行官というのは、裁判所法第62条、執行官法1条で決まっている、事務として裁判の執行など行う、それぞれの地方裁判所に在籍している裁判所職員です。
建物の立ち退きの執行について言えば、執行官は、建物の立ち退きを命令された借り主が建物を立ち退かない時、借り主をその建物から排除した上で、貸し主に建物を明け渡す事務を行います。
強制執行を申し立てすると、打ち合わせを執行官と行うようになります。
裁判所によっては、打ち合わせを直接執行官と面会して行うこともあり、打ち合わせを電話で行うこともあり、ケースバイケースです。

この時、「立ち退きの催告」の日が決定され、執行官にどの業者に執行補助者をするかを伝えるようになります。
執行補助者というのは、強制執行の際に、荷物を実際に搬出して保管する業者です。
一般的には、貸し主側で事前に執行補助者を決定しておきますが、執行補助者が決定していなければ、執行補助者を執行官が紹介してくれます。

注意する必要があるのは、執行補助者を使う際は、当然ですが日当などの費用を執行補助者に対して払う必要がありますが、その報酬体系は執行補助者によって違っているということです。
強制執行が終わった際に、報酬として執行補助者に払う金額は、荷物の量や部屋の大きさによっても違いますが、約15万円くらいから、50万円を多い場合はオーバーすることもあるため、非常に高額なものになります。
そのため、事前に可能な限り安く請け負ってくれる執行補助者を見つけておくようにしましょう。
なお、弁護士に頼む時は、建物の立ち退きの実務経験があれば、執行補助者としてすでに懇意にしている人がいることが多くあります。

しかし、付き合いが古くからあるため、執行補助者の特定の人に頼んでいることも多くあり、費用面についてそれほど意識していない場合もあります。
そのため、強制執行を頼む弁護士を見極めるための判断基準として、きちんとこのことを弁護士が意識しているかを直接チェックしてみることも、方法の一つでしょう。

明け渡し勧告をする方法

「督促手続」というのは、実質的な裁判という審理を行わないで、あるいは、借り主の意見を聞かないで、簡易的に経済的かつ迅速に、貸し主に効力が判決と同じようにある「支払督促」を取得する手続です。
「支払督促」と、この督促手続そのものを言うこともあります。
この手続の特徴は、「少額訴訟」のケースと違って、上限が請求額になく、何回でも利用できることです。
「明渡しの催告」の日が執行官との打ち合わせで決定すれば、賃貸物件に実際に訪問するようになります。
「明渡しの催告」というのは、民事執行法第168条の第2項で決まっている、執行官、立会人、貸し主あるいは貸し主の代理人、執行補助者、鍵業者が、賃貸物件を訪問して、物件を占有している状態をチェックした後、公示書に引き渡し期限と強制執行を実際に実施する日を書いて、物件の中に貼る手続です。

立会人については、執行官が準備してくれることが多くあります。
鍵業者は、合い鍵が物件にないケースなどに必要になります。
鍵業者は、ケースバイケースで準備しましょう。

一般的に、貸し主側が鍵業者は準備しますが、頼むと執行補助者が準備してくれます。
しかし、鍵業者に頼む場合は、費用が別途かかるようになります。

勧告後の流れ

民事執行法第168条の第2項で 、明渡しの催告の日から1ヶ月が経った日が、立ち退きの期限と決められており、強制執行が実際に実施される日は立ち退きの期限の数日前に一般的に設定されます。
普通、強制執行を実際に実施することを「断行」と言って、「断行日」とこの日のことを言います。
そのため、断行日と立ち退きの期限は同じ日ではないため注意しましょう。

借り主にとっては断行日が大切であるため、この日は忘れないように十分にチェックしておくことが必要です。
強制執行を申し立てしてからは、約2週間くらい「明渡し催告」の日まではかかります。
そのため、断行日までは、4週間くらいさらにかかるようになります。

なお、明渡しの催告の時に、物件の中に残っているものの廃棄・保管の方法などが執行官の判断で決定され、これによって、強制執行のための費用見積りを執行補助者が提示するようになります。
そのため、この時になって、具体的に強制執行にかかる費用が初めて算出されるようになります。
明渡し催告の時に、ほとんど荷物が残っていなければ、立ち退きが執行官の判断ですぐに終わることもあります。
このような場合は、断行の手続が必要なく、立ち退きが完了になります。

断交日には?

断行日には、催告と同じように賃貸物件に執行官らが訪問しますが、この時は、執行補助者が実際に荷物を物件から搬出するようになります。
搬出した荷物は、一般的に、執行官が決めた保管場所に普通は1ヶ月くらいの一定期間保管するようになります。
全ての荷物を搬出した後に鍵を換えて、立ち退きが完了になります。

保管した荷物は、借り主が一定期間内に引き取りしなければ、廃棄したり、売ったりするようになります。
強制執行のこのような手続きが終わると、適法に建物の立ち退きが完了するようになります。

強制執行の流れとその後

ここでは、強制執行の流れについて、まとめてご紹介しましょう。

  1. 弁護士に相談する

    相談の主な目的は、状況を弁護士に伝えて意見を聞くことです。
    なお、まず弁護士が聞きたいことは、借り主が家賃をどうして支払わないかです。
    借り主が家賃をどうして支払わないかという要因はいろいろあるでしょうが、ここでは、借り主にお金がないうことを前提としましょう。
    方針が決まると、正式に契約書を結びます。
  2. 解除と催告の通知

    家賃を滞納している借り主に、弁護士名で支払いの催促を内容証明郵便で行います。
    借り主に、法的手段を弁護士が取ることをイメージづける効果が期待できます。
    この時に、家賃として滞納しているものを全て払うと、余力が借り主にあるのが分かります。
    また、この時に建物を諦めて立ち退きするのであれば、立ち退きを弁護士が立ち会って確認します。
  3. 裁判

    裁判の期日前は、訴状を弁護士が作って裁判所に出します。
    契約書などの証拠の写しを訴状には添えます。
    裁判所に訴状を出すと、1週間~2週間程度して第1回の期日が裁判所から指定されます。

    期日を弁護士と裁判所が協議するため、弁護士が出頭可能な日が決定されます。
    期日が決定すると、期日の呼出状と訴状の副本を裁判所は借り主に郵送します。
    裁判当日は、事案が家賃滞納の場合は、裁判所に出ないで、書類を借り主に出さないことが多くあります。
    この場合は、貸し主の主張を借り主は認めたようになるので、判決が訴状で請求したように出ます。

    だいたい、判決の言い渡しは1週間程度第1回の期日より後になります。
    判決期日には、借り主も弁護士も出頭する必要はありません。
    判決書を言い渡しがある場合はもらえるため、判決を裁判所にその日のうちにもらいに行きます。
    裁判所は、借り主には郵送で判決を送ります。
    強制執行を申し立てする際に、この送達した証明書が必要になります。
    借り主は、判決に対して控訴ができます。
    しかし、このような判決は控訴を借り主がしたとしても強制執行が可能になっている場合が多く、この時は強制執行の申立は借り主に判決が送られるとできます。

  4. 強制執行

    強制執行の申立は、判決に基づいて行うようになります。
    建物の立ち退きの強制執行の申立は、裁判所の執行官に行います。
    建物の立ち退きの強制執行の申立は、必要書類の送達証明書などを判決に添付して行います。
    必要な資料を準備するために、強制執行の申し立てする際は判決言い渡しから最低でも1週間くらいは必要です。
    判決の受け取りを借り主が拒んだ時は、手続きとして訴状の受け取りを拒んだ時と同じものが取られます。

    最終的には送られるようになりますが、強制執行の申立まで判決の受け取りを拒んだ時は時間が少しかかります。
    強制執行の申立をすれば、基本的に、担当の執行官とその次の日に面接して、現地を執行官が訪問する日を決めます。
    2段階に強制執行は分かれています。

    まず、賃貸物件まで執行官が行って、自主的に1ヶ月のうちに出て行くように借り主に告知します。
    強制執行を、もし出て行かないと行うという予告をします
    そして、強制執行する時にどのくらいの費用になるか見積します。
    借り主がいない時でも、建物の中に鍵を開けて執行官は入ります。

    執行官が強制執行の催告をした日までに出ていかなければ、強制執行になります。
    執行官が再度現場に行って、荷物を執行補助業者が雇った作業員らが搬出します。
    搬出した荷物は、倉庫にトラックで運搬します。

    強制執行は、荷物を建物から搬出した段階で終わりになります。
    強制執行が終わった後は、建物が借り主から貸し主に返還されたようになります。

 

立ち退きの強制執行のまとめ

ここでは、そもそも強制執行って何? 強制執行に必要なもの、執行官との打ち合わせ、明け渡し勧告をする方法、勧告後の流れ、断交日には? 強制執行の流れとその後…、についてご紹介しました。
強制執行というのは、国の機関が強制的に権利者の権利を実現する手続です。
強制執行に必要なものとしては、債務名義、執行文、送達証明書になります。
強制執行を申し立てすると、打ち合わせを執行官と行うようになります。

「明渡しの催告」というのは、民事執行法第168条の第2項で決まっている、執行官、立会人、貸し主あるいは貸し主の代理人、執行補助者、鍵業者が、賃貸物件を訪問して、物件を占有している状態をチェックした後、公示書に引き渡し期限と強制執行を実際に実施する日を書いて、物件の中に貼る手続です。

強制執行を申し立てしてからは、約2週間くらい「明渡し催告」の日まではかかるため、断行日までは、4週間くらいさらにかかるようになります。
断行日には、賃貸物件に執行官らが訪問しますが、この時は、執行補助者が実際に荷物を物件から搬出するようになります。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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