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契約更新は気をつけて、費用は?しっかりチェックしよう

更新日:2022年01月12日
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あなたは今、賃貸アパートなど、賃貸物件に入居していますか?賃貸物件の契約更新は、通常2年に1回巡ってきます。その条件を知っていますか?
アパートに入居する時には、複数ある候補の中から「これ!」という物件を選ぶために、不動産業者からの説明を聞き、契約書もよく読んで、条件を確認してから契約をしたことでしょう。ところが忘れがちなのが契約更新の条件です。説明を受けたけれど、2年前のことで忘れてしまった、という人も多いですね。今回は賃貸物件の契約更新について、トラブル事例をみながら、費用などチェックすべきポイントをお知らせします。

1. 契約更新時によくあるトラブル例

契約更新時には、トラブルが起きやすいのです。その理由は大きく3つにわかれます。
1つ目は、借り主が更新料を払うこと自体を忘れていた場合。お金の用意が無い、などのトラブルが起きがちです。
2つ目は、更新料を支払いたくない借り主の場合。同じ地区に「契約更新料無し」の物件を見つけたので、自分も払いたくない、という支払いを拒否する、などのトラブルが起こります。
3つ目は「契約更新の時に、家賃や管理料を値上げしよう」と考えたオーナーさんと、「古くなったのだから、安くなる方が普通じゃないか」と反発する借り主の間で起きるトラブルです。

オーナーさん側には、賃貸契約は数年ごとに更新するものだから、その際に話し合って賃貸料など変更した契約を結び直したい、と思っている方も多いでしょう。ところが契約更新時に、契約内容の話し合いをする以前に、契約更新料そのものに疑問を持った借り主からクレームがつくことがあります。
この場合、借地借家法によって借り主は保護されますので、契約書に特別な記載がない場合、「法定更新」という同じ契約内容の万で、期間の決まっていない契約に切り替わるのです。契約、というと双方が同じ力を持っていて、話し合いで変えられる、と思いがちですが、現在の借地借家法は借り主を保護する力が強く、借り主が有利になることを心に留めておきましょう。そのため、オーナー側としては、契約更新時にトラブルを起こさないために、最初の契約時に内容をよく考えて準備することが必要です。

2. 契約更新料とは

そもそも賃貸物件の契約更新料には、民法などの法的な裏付けがありません。つまり契約更新料=不動産賃貸の必須条件、ではないのです。ではなぜ契約更新料があるのか、といえば、長年のその地域の慣習によるもの、としか説明ができません。そのため、地域によっては契約更新料無しの物件がほとんどだったり、契約更新料が必要な物件と必要のない物件が同じ地区に交じり合っていたりする場合もあります。
少し古いのですが、国土交通省が平成17年から18年の実態を調査した資料によると、契約更新料が必要な物件は北海道で28.5%、神奈川で90.1%、東京で65.0%、千葉で82.9%、愛知で40.6%、大阪で0%、京都で55%と、地域によって大きな差があることがわかりました。

「同じ地区に契約更新料を払わない人がいるなら、もしかして、自分も払わなくてもいいのかな?」と思われるかもしれませんね。実は契約更新料を支払いたくない、という借り主も、借地借家法によって保護されています。そのため、究極的には法定更新という、借り主の権利を保護する規定により、契約更新料を支払わなくても、自動的に契約が更新されることになります。ただし、これは契約書に契約更新の条件に「法定更新の場合でも、契約更新料を支払うこと」とか「契約更新時には、契約更新料を支払うこと」と明記されていない場合のみ、有効です。

もしあなたの持っている賃貸契約書に「法定更新の場合でも、契約更新料を支払うこと」と書かれていたら、契約更新料を支払わないこと=契約違反、となりますので、大家さんは契約を解除する「正当な理由」を持つことになり、借り主であるあなたに退去を求めることができます。
つまり、契約更新料は由来は不明なものの、それを払うか払わないかは、賃貸契約書に明記されているかどうかにかかっています。気になる方は、お手元の賃貸契約書をすぐに確認しましょう。

2. 契約更新料の相場は?他にかかる費用は?

契約更新料の相場は、だいたい家賃の1か月分から2ヶ月分が相場です。これも地域によって異なります。1.でご紹介した国土交通省の調査によると、北海道で0.1、神奈川で0.8、東京で1.0、千葉1.0、愛知0.5、大阪0、京都1.4(いずれも平均値、〇ヶ月分)でした。同じ地域でも物件の新しさなど、条件によって契約更新料が異なります。これも契約書に明記されていますので、確認をしましょう。
契約更新時には、契約更新料以外にも必要な費用があります。

更新事務手数料(管理会社へ支払うもの)

契約更新時には、借り主へ契約更新の希望があるかの確認、新しい契約書の作成、保証人のチェックなど様々な事務手続きが発生します。その費用が契約書上で借り主が支払うことになっている場合は、そこに記載されている金額を支払うことが必要です。更新事務手数料は、管理会社によってまちまちなので、契約書でしっかり確認しましょう。

火災保険料

次の更新までの2年分、だいたい1~2万円が相場です。

保証会社の費用

物件によっては、保証会社を間に入れて賃料を支払う契約になっている場合があります。その場合、保証会社への契約料を支払わなければなりません。こちらも会社によって手数料が異なりますから、最初に作った賃貸契約書で確認しましょう。
出典:民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)-国土交通省2007年6月

3. 退去や更新をしない場合

時には、契約を解約して退去する、または契約更新をせずに退去して引っ越すということもあります。そんな時、どのようにしたらいいでしょうか。

1. 退去や契約更新をしない場合、誰にどう連絡をするのか

退去する、と決めたら、大家もしくは管理会社に電話で連絡をします。どちらに連絡をするべきかについても、契約書に書いてありますので、それに従いましょう。初めの連絡は電話ですが、実際に退去をする日が決まったら、「退去届(解約届)」を提出します。「退去届(解約届)」の用紙そのものは、最初の契約時に渡されていると思いますが、念のため手元を確認しましょう。また「退去届(解約届)」の提出方法の確認もしておきましょう。
退去届(解約届)は、退去連絡をした証拠として、トラブルを避けるために必要な書類です。必ず提出しましょう。

2. 退去や契約更新をしない場合、その連絡と実際の退去日の関係は?

退去の連絡と、実際の退去日の関係は地域によって異なります。多いのは①でが、②~④の場合もあります。
①引っ越しの1ヶ月前
例:2/20に退去の連絡をした場合、その日から1ヶ月後の3/20が解約日になります。
②引っ越しの1ヶ月前(月単位)
例:2/20に退去の連絡をした場合、次の月の末日、すなわち3月末日が解約日になります。
③引っ越しの2ヶ月前
例:2/20に退去の連絡をした場合、4/20が解約日となります。
④賃貸借契約書に「契約の解除について」の記載がない場合は3ヶ月前
これは、民法617条の規定によります。
いずれにしても、退去の連絡と実際の退去日については、ほとんどの契約書には書いてありますので、新しい物件を探す前に確認をしましょう。そうでないと、最悪、新しい物件と今の物件の両方に家賃を長期間支払うことになりかねません。新しい物件の入居日を決めるためにも、まず契約書を確認しましょう。

3. どのタイミングで連絡をするの?

これは、次の物件の入居日が決まってからにしましょう。実際に入居審査に通り、入居できる、という状態になってから連絡をする方が安心です。

4. トラブルになる前に弁護士に相談しよう

賃貸物件の契約更新時には、契約書に従って更新をすることが必要です。しかし、契約更新の際に、合意していない家賃の値上げや、契約条件の変更などを迫られる、というトラブルに巻き込まれることもあります。また退去時には、退去届(解約届)をきっちりと提出しておかないと、電話連絡だけでは「言った」「聞いていない」等のトラブルに発展することもあります。
さらに退去時には、管理会社と立ち合いで部屋の状態を確認するのですが、傷の認定や、原状回復の義務をどこまで果たすべきなのか、などでお互いの意見が合わずにトラブルになりやすい時でもあります。
このように、賃貸物件の契約更新および退去時には、トラブルの種がたくさんあります。実際にトラブルが発生して、こじれてしまうと、次の物件への入居手続きや引っ越しをこなしながら、トラブル対策にあたらなければならず、経済的にも精神的にも大きな負担になります。

こうした場合、トラブルになる前に専門家に相談することが大切です。契約更新や退去に関する場合は、契約書や借地借家法など法律が関係するので、弁護士が最適です。弁護士は「法律のプロ」ですから、あなたの状況を把握して、契約書の内容も含めて法的に正しいものかを的確に判断し、有効なアドバイスをくれます。トラブルになる前、また残念ながらトラブルになってしまってからでも、それ以上こじれないために、ぜひ弁護士に相談をしましょう。

5.まとめ

賃貸アパートに住んでいる場合、避けては通れないのが契約更新です。その内容や方法などの規定は、通常、最初に取り交わした契約書に書かれています。まずは契約書をよく読んで、理解することから始めましょう。もし契約書を読んでもよくわからない場合には、そのままにせずに、弁護士に相談しましょう。今は弁護士も初回相談無料、など、気軽に相談しやすくなっていますから、利用しない手はありません。
快適に住み、そして退去できるように、自分でできることから始めてみませんか?

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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