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オーナーさん確認しなくて大丈夫?「建物の用法違反・目的外使用」

更新日:2024年03月11日
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建物の用法とは?

 不動産関連の書類をみていると必ず出てくる「用法」という言葉。聞き慣れていないとなんのことかよくわからずピンとこないかもしれませんが、要は建物の用途のことを指しています。
 主に、建物は、その用途によって3種類に分けられます。一つは「専用住宅」でもう一つは「共同住宅」、三つめが「併用住宅」となります。
 専用住宅は、戸建住宅などの独立した住宅のこと。これに対して共同住宅は、一つの建物のなかにいくつもの(2つ以上の)世帯が存在します。世帯ごとに戸室があり、それぞれに炊事が可能な設備をもっている住宅です。併用住宅は、住居としての利用の他に、事業など住居以外の用途でも使われる建物のことを指しています。
 建物は、それぞれに特性をもっていて、用途に合った使い方をしないと支障が生じる場合もあります。不動産トラブルを避けるために、貸借が行われるときには必ず確認するべき事項です。

使用目的は賃貸契約時に決める

 建物を本来の用途と違う目的で使用したときは、まず構造上の問題が生じることが考えられます。建物は地盤の頑強さや壁の厚みなど、もろもろ建築基準法に基づいて建てられているので、それに合わない使い方をすると危険さえ伴うこともあり得るのです。
 また、決められた用途以外で使用することで、近隣の住民とのトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
 そうした問題が起きないように、賃貸借契約を結ぶ際には、その使用目的をきちんとお互いに確認し合うことが必要なのです。
 賃貸住宅の場合は、使用目的が基本的には「居住のみ」ということになります。賃貸借契約を締結する際には、「賃貸住宅標準契約書(※1)」を用いますが、ここでいう「住宅」は、使用目的を自己の居住に限定しています。もちろん、貸主と借主のあいだで話し合いのうえ合意が合って特約をつければ、例外となります。
 居住目的以外で使用する場合は、貸主が特約で注意点を明確に定めることが必須です。ただし、注意したいポイントとしては、賃貸住宅標準契約書が住居以外で使用する可能性があるという前提で作られていないということがあります。
 つまり、事務所や作業所、店舗や教室など営利を目的とした使用は想定されていないのです。住宅として利用する場合は、ごく限られた人だけが物件に出入りすることになりますが、もし、営利目的で利用する際は多くの人が出入りし、どんな状況になるのか予想することが難しいため、基本的には認めないという方向にしているのです。
 事務所などで利用する場合の契約には、賃貸住宅標準契約書ではなく、別の契約書を作成する必要は出てきます。
 
※1「賃貸住宅標準契約書」
 国土交通省が公表している賃貸借契約書の雛形。

目的外使用をされた場合の対処法と備え

 居住用の賃貸アパートで、住居としての使用目的に反する使い方があったときにはどのように対処するとよいのでしょうか。じつは、これはそれほど単純な問題ではなく、センシティブな問題をはらんでいます。というのも、問題となった行動が、住居としての使用の範疇かどうかが争点となるからです。
 例えば、過激な夫婦喧嘩が原因で、他の住民からクレームが出ているとしても、夫婦で住居として使用しているなかで起きた喧嘩にすぎないので、用法違反といえるかどうかは疑問でしょう。また、大勢の人を呼んでパーティーを行ったとして、ただちにこれが用法違反であるとするのも無理があります。
 もし、こうした住民との賃貸借契約を解除したいという場合は、事前に賃貸借契約書にきっちり明記しておけばスムーズです。判断が難しそうな問題について、あらかじめ合意を取り付けておきます。代表的な例は以下の通り。

  • 他の入居者に迷惑となるような深夜の騒音や振動
  • ペットの飼育行為
  • 貸室の外に物品の放置

これらの事項を、禁止事項として明記し、借主にも納得してもらっておくこと。これで、なにか問題が起きたときにスマートに対処することができますし、安心です。
 しかし、それだけでは万全とはいえません。実際にトラブルが起こったとしても、一度や二度程度ではなかなか契約違反として即、契約解除することは難しいです。こうしたトラブルが再三注意して警告も行っているにもかかわらず、継続してしまうというときには、契約解除の要件となるでしょう。契約解除をお願いするときになって困らないように、注意や警告は必ず記録に残るように書面で行うようにしておくのが得策です。

目的外使用の例

 目的外使用の例として一番多いのが事業を始めるケースです。物件を借りるときには事業を始めることを想定しておらず、借主に悪気はないケースも多いので話は複雑です。
 ただ、住居専用の部屋であるにもかかわらず、営利目的で使用しているとすれば、これは立派な「用法遵守義務違反」となります。
 最近多く見られる目的外使用の例を挙げてみます。

  • インターネット通販
  • 在宅ワーク

インターネット通販は、扱う商品によっては問題があるかもしれません。例えば、商品が大きくて運搬する際に壁を傷つけたり汚したりする可能性が大きい場合。また、臭いのする商品や、音が出る商品も問題です。他の入居者からのクレームの原因になることが大いに考えられます。しかし、扱う商品がごく小さなアクセサリーなどだったらどうでしょうか。特段、普通に住居として利用している場合と違いはほとんどないでしょう。
 また、在宅ワークといってもいろいろありますが、例えばパソコンを使ってデザインするグラフィックデザイナーだったらどうでしょうか。一日中パソコンの前に座っているような仕事です。大きな音も立てないでしょうし、普通に居住しているだけの人より静かかもしれません。
 このように、実際の目的外使用例を詳しくみてみると、契約解除するほどの問題がない場合もあるということがわかります。

契約を解除したい!「信頼関係の破壊」が必要

 必ずしも住居以外の目的で使用していないとしても、それだけで契約解除となるケースばかりではないということがわかりましたが、もちろん他のケースもあります。カラオケ教室を始めるなどがその例です。
 その場合は、契約解除を検討するべきでしょう。それが、他の入居者を守る行為にもつながります。そのまま放置してなんらかのトラブルに発展してしまったら、それこそ大変な損失です。
 契約解除をする際には、信頼関係の破壊が条件となります。注意や警告を繰り返しても、一向に改善されないならば、信頼関係が成り立っていないということになるでしょう。しかし、一方で、一度注意をしたらすぐにやめてくれたというようなときは、信頼関係が成り立っていますので、契約は継続するのが一般的でしょう。
 ただこれも、やはり他の入居者のクレーム度合いにもよりますし、一筋縄ではいきません。どんなに小さなアクセサリーのネット通販でも、他の入居者が気に入らないとなれば、やはり契約解除を検討する必要が出てきます。
 いずれにしても、契約解除となる要件には、「貸主と借主とのあいだの信頼関係が破壊された」状況であることが含まれることを知っておきましょう。

穏便に済ませたい時は専門家に相談を

 いろいろとややこしい賃貸借契約解除問題。問題をややこしくしているのは、つまるところ、人間関係がベースにあるからでしょう。なんとなく見て見ぬふりをすることもできることであるからこそ、どこで線引きをすればよいかという判断が難しいのです。
 しかし、入居者が安心・安全に居住できることは、当然に認められた権利です。管理する側としては、万が一、借主の一人が他の入居者に迷惑をかけているなら、それを解決しないといけません。もしも、契約違反を知っていて、対策をしない場合は、たまりかねた入居者から、債務不履行などの責任を追求されても文句はいえません。
 もし、住居の目的外の使用があると知り得た場合は、できるだけ早い時期に適切な対策をとることが必要です。まずは、注意、そして警告。使用方法を改善するようにとの催告を出します。必要であれば、内容証明郵便を送付することも考えるべきです。契約解除通告書を作成し、このなかで、通告するに足る理由を付記した上で送付します。
 直接、対応するのが不安・心配なときは、弁護士などの専門家に相談するのが一番早くてスムーズな解決への道です。放置している時間が長くなればなるほど、問題は悪化しますので、できる限り速やかに、対応しましょう。

不動産に関する困りごとは弁護士へ相談を

住居として貸している物件を、住居以外で使用されたときには契約解除を通告することができます。

自力での対応が難しいときは、弁護士の力を借りて可能な限り速やかに対応しましょう。

弁護士であれば、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、不動産関連で起きやすいトラブルを未然に防いでくれるでしょう。

弁護士を選ぶ際は、トラブルの内容に精通しているかどうかや相談のしやすさ、説明の分かりやすさを意識しておくのが重要です。

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