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賃貸物件での喫煙はトラブルのもと!?

2018年07月24日 公開
賃貸物件での喫煙はトラブルのもと!?のアイキャッチ

1. 『賃貸物件』部屋の中でタバコを吸っても大丈夫!?

 賃貸アパートや賃貸マンションなどに入居している喫煙者の方が、いざ退去するとなったときに、まさか想像もしていなかった高額の費用を請求されて驚いてしまうというケースがあります。
 賃貸物件には原状回復のルールが設けられていて、借主は退去時に部屋を入居前の状態に戻してから退去しないといけません。そのため、長期間の喫煙による汚れや臭いを除去するための修繕費が必要になるのです。タバコによって壁紙が変色したり臭いが取れなくなったりした場合は「過失」扱いになり、借主は修繕費を求められてしまいます。これまでは、借主と貸主のあいだでトラブルが多かったため、国土交通省も明確なガイドラインを設けており、喫煙による汚れに対しては、厳しいルールとなっています。

 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

※タバコ等のヤニや臭い
 喫煙等により当該居室全体に置いてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。

 
出典:国土交通省ホームページ (http://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf)

 壁紙を修繕しようとすると、一般的な部屋で4万円〜5万円の修繕費用が必要になります。実際には壁紙だけでなく、ドアの建具やスイッチ、エアコンなどがヤニで黄ばんでしまうので、これを清掃する費用も必要です。
 そんな話を聞くと、賃貸物件では喫煙が絶対NGであるかのようですが、実際にはいろいろなケースがあり、請求金額もさまざま。上手に工夫すれば、やり方次第で費用を請求されずに済むという場合もあります。
 それでは、どんな場合に費用が請求されるのか、請求されないようにするにはどんな工夫が必要なのか、詳しくみていきましょう。

2. 室内でタバコを吸うとどうなるの?

タバコの汚れは少しずつ溜まっていく

 タバコを吸いたくなるタイミングは、個人差はあれど食事の後や仕事中という場合が多いでしょう。つまり、部屋の中で吸う場合がほとんどです。ところが、部屋の中にはタバコの汚れがつきやすい場所がいくつもあります。例えば、天井や壁。毎日、タバコの煙を浴びているうちに少しずつ黄ばんできて臭いも付いてきます。少しずつの変化なので、住んでいる本人には分かりづらく、掃除をするタイミングをはかるのも困難です。賃貸契約期間のあいだ一度も掃除をしない場合もあるでしょう。すると、退去時に積もり積もった汚れが、通常の汚れとして扱われないという事態に発展することになります。

原状回復のために費用が請求されることも

 汚れがひどいことを理由に、退去時に修繕費用を請求されるというケースもあり得るので注意が必要です。賃貸物件を退去する際には、入居前と同じ状態にして返却しないといけないというルールがあるからです。国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に明記されています。もともとの状態と違う場合は、修繕してから退去しないといけません。タバコを部屋で吸うことによる汚れは、きれいに除去してから退去しないといけないということになります。壁紙を張り替えるとなると、費用は高額になってしまいます。

 部屋でタバコを吸う生活をしたいなら、退去時に高額の支払いをするのは仕方のないこととしてあきらめるべきでしょうか。

3. タバコの汚れと原状回復は?

生活上の汚れによる修繕費用は家主が負担

 賃貸物件の場合、通常は、借主に壁紙を張り替える義務が生じることは稀なことです。というのも、壁紙はそのまま放置しておいて誰も使っていなくても、経年によって劣化していくものです。年月を経ると同時に、価値が下がっていくものとされます。耐用年数という考え方もあり、ある程度の年数を重ねると価値が消失してしまうというふうに捉えられるのです。そのため、もしも借主が賃貸マンションの壁に何らかの汚れをつけてしまって、修繕が必要であるとみなされた場合でも、それが通常の生活でついてしまう程度の汚れであれば修繕費用は家主が負担することになっています。

喫煙による汚れはケースバイケース

 喫煙による汚れや臭いは、その程度や前提条件によって対処方法がさまざまです。多少の汚れであればクリーニングで落とすことになり、その場合は敷金の範囲内で済むはずですので費用を請求されるということはまずないでしょう。
 しかし、黄ばみや臭いが強く、クリーニングでは除去できないということになると話は変わってきます。全室の壁紙、天井を張り替えることになり、床のクロスも取り替えるということになってくると、これにかかる費用が敷金として納めていた金額を上回ることもあり得ます。これが、借主に費用が請求されるというケースです。
 ポイントは、喫煙による汚れが「通常を超えた使用による消耗」と認められるかどうかという点にあり、このあたりは借主と貸主のあいだでお互いが納得のいく妥協点を探っていくことになります。もし、喫煙不可の部屋に入居していて、喫煙による汚れがひどいという場合は、借主に費用が請求されても文句は言えません。逆に、あらかじめ喫煙による汚れは費用請求から除外するという取り決めがなされている場合もありますので、事前によく調べておくのが望ましいでしょう。

4. 喫煙による多額の請求を受けないためには?

 部屋で喫煙し続けたことによって、退去時に多額の請求を受けるということにならないための有効な対策は、三つ挙げられます。どれも決定的な対策とは言えませんが、使える方法を上手に組み合わせて、自分の環境に合わせながら対策を講ずるようにしたいものです。

部屋では喫煙しないのが理想

 常に部屋で喫煙する場合と、たまに喫煙する場合では、部屋に残る臭いの強さは雲泥の差です。一番手っ取り早いのは、部屋では吸わないと決めてしまうこと。吸うときは、ベランダに出たり、換気扇の近くで吸うことに決めておくなどして、そもそも臭いが残らないように工夫するのがおすすめです。ただし、ベランダで吸う場合は近隣住民の方からクレームがつかないように注意が必要です。もし、自宅近くに喫煙できるスペースがあるならば、そこを利用するといいでしょう。

空気清浄機を使う

 二つ目におすすめしたい対策は、空気清浄機を使うことです。空気清浄機のなかでも、タバコの臭い対策のために作られたものがあるので、それを選ぶといいでしょう。電気代は1時間に1〜2円ほどですし、最近は加湿機能なども付いた高機能商品も出ています。タバコ臭以外にもホコリや粒子を除去してくれて室内の空気がきれいになるため、家族の健康のためにも良い効果が期待できて一石二鳥です。

掃除する

 最後にご紹介する対策は、掃除です。長い間、積み重なったタバコの汚れはなかなか落としにくい頑固な汚れとなってしまいますが、こまめに掃除をしていけばそれほど大変なことではありません。おすすめなのは、重曹を使った拭き掃除。黄ばみは緩和されますし、臭い対策にも最適です。掃除する場所は、壁紙や床、天井など。手の届きにくいところでも、煙は容赦無く届いていますのでできるだけ頻繁に拭き掃除を行いましょう。

5. 喫煙対策しても臭いは残る!

 原状回復のための請求を受けることがないように、喫煙対策をしっかりと行ったつもりになっていたとしても、実際にはタバコの臭いが残ってしまっているということが少なくありません。その理由は主に二つあります。

想像以上に飛散するタバコの煙

 日本禁煙学会によると、喫煙した際に発生するタバコの煙は、全くの無風状態であっても直径14mの離れた位置まで届くと言われています。喫煙した場所が屋外であれば、タバコの煙が拡散してある程度薄まるという面もありますが、もし屋内であれば閉じられた空間に煙が充満して滞留するため、臭いがしっかり残ってしまいます。
 喫煙者が賃貸物件を借りる際には、できる限りタバコの臭いを残さないように、何らかの対策を講ずるでしょう。しかし、14mも離れたところにまで煙が行き渡ることまではなかなか想像できるものではありません。そのため、喫煙者本人が思わぬところにまで臭いが残っていたり、閉じられた空間に煙を充満させることで想像以上に濃く残ってしまったりするのです。そのような細かい場所にまで注意を払ってタバコの臭いをすっかり除去するということは不可能です。

臭いに鈍感になっている

 ややこしいことに、ヘビースモーカーであればなおのこと、喫煙者本人はタバコの臭いに鈍感になってしまっています。そのため、客観的な視点で臭いをチェックするのが難しいのです。喫煙者本人は臭いが全く気にならなかったとしても、臭いに敏感な人からすれば吐き気や頭痛、目眩がするという場合もあり得ます。臭いが消えたかどうかを調べるときには、そうした齟齬が生じないように、非喫煙者にチェックしてもらうのが望ましいでしょう。

まとめ

 喫煙者にとって、部屋でタバコを吸えるのか否かという問題は、重要です。タバコの汚れに厳しい家主ではないか、ガイドラインにどう明記されているか、きちんと事前にチェックして、退去時になって困るということにならないよう対策しておきましょう。
 その上で、もしも多額の請求をされた場合は、専門家に相談して必要以上の支払いをしなくて済むように十分気をつけてください。

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