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賃貸管理は建物だけじゃない! 駐車場などの不動産トラブル

更新日:2024年03月11日
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駐車場って責任は誰にあるのか!?

 店舗の形態によっては、来店率や売上率を上げるためにお客様が来店するための駐車場が欠かせません。駐車場を設置した場合、お客様が単独で事故を起こしたり、お客様同士で衝突したりと、駐車場内でトラブルが発生するリスクが生じます。もし店舗の駐車場内で事故が起きた場合、その責任は誰にあるのでしょうか。

 事故に対して店舗側の責任が発生するかどうかはケースごとに変わってきます。店舗の駐車場内で事故や事件が起きた際、ほとんどの場合は事故を起こした当事者であるお客様に責任があることになり、店舗側が責任を負う必要はありません。ところが、駐車場の環境に問題がある場合は、事故や事件の責任を店舗側が負わなければならないことがあります。例えば、以下のようなケースが挙げられるでしょう。順に解説していきます。

  • 駐車場の環境に問題があるケース
  • 駐車場の設備などが原因で事故が起きたケース

駐車場の所有者は、お客様が駐車を安全に行えるような環境を整備しておかなくてはなりません。例えば、駐車場内の照明の電球が切れていて対向車が見えにくかった、フェンスがないため、店舗利用者でない人物が怪しまれることなく駐車場内に侵入できたなど、事故や事件を誘発するような環境があった場合、駐車場の所有者が駐車場としてあるべき適切な環境作りをしていなかったとして、ある程度の責任が問われる可能性ががあります。そうならないためにも、十分な駐車スペースの確保や防犯性の高い駐車場作りを心がけたり、メンテナンスを徹底したりする必要があるでしょう。

 駐車場内にある設備などが原因で事故が起きてしまった場合も、店舗が責任を負わなくてはならないことがあります。例えば、駐車場内に立てかけられていた看板が倒れてお客様に当たって怪我をした、駐車場内に植樹されていた木の枝が折れて落下し、停めてあった車を傷つけたケースなどが該当します。駐車場の所有者は、駐車場内にあるあらゆる設備の安全性を定期的に点検する必要があるといえるでしょう。

契約している貸主が負う義務は?

 月極駐車場の契約において、貸主と借主とは、例えば駐車場を1ヶ月あたり30,000円で貸すという具合に、賃貸借契約を締結します。駐車場の賃料を得る代わりに、貸主は土地や区画などを駐車場として借主が問題なく使えるような環境を整えなくてはなりません。つまり、契約している貸主が負う義務とは、駐車場の所有者として、借主に貸すスペースを駐車場として利用できるような状態を維持すること、ということになります。そのため、借主が駐車場を使えなくなるようなトラブル(例えば無断駐車など)を排除するよう努めなくてはなりません。
 では、万が一、駐車場で事故や事件が発生した場合、駐車場の貸主は管理を怠ったとして責任を問われるのでしょうか?これは、駐車場の状態と契約時の内容によって変わってきます。
 例えば、窃盗事件が発生した場合、借主に生じた損害の賠償責任は加害者にあります。ところが加害者が見つからない場合は、被害者が駐車場の管理者に対して責任を問う場合があります。気をつけたいのは、次の二つのケースです。

A. 駐車場が監視カメラなど防犯設備の高さをセールスポイントとしていて、借主が契約した理由もそこにあった
 
B. 駐車場の管理者が車の鍵を預かるなど、自動車を管理・保管する責任義務があった

A.のケースでは、もし防犯カメラがダミーであり、実際には防犯の役に立たなかったなど、防犯設備の高さが虚偽であった場合、管理責任の不備を問われる可能性があります。B. のケースでは、貸主と借主とのあいだに寄託契約が結ばれていることになります。自動車を預かっている管理者には善管注意義務(業務を委任された人としての能力、地位などから考えて通常期待される注意義務のこと)があり、責任を問われることになります。
 上記いずれのケースにも該当しない場合、貸主には自動車を管理する義務がありません。窃盗行為など、駐車場の所有者が責任を問われる可能性は低いといえるでしょう。
 駐車場内で接触事故が起きた場合はどうでしょうか。駐車場内での事故によって生じた被害の賠償責任は事故の加害者にあります。そのため、借主と加害者とのあいだでトラブルを解決するのが原則。駐車場の所有者は関与しないのが普通です。ところが、事故の原因が駐車場の貸主にある場合は、責任が問われる可能性があります。
 例えば、次のようなケースが想定されます。

・駐車場内のマンホールが開いていたために自動車の車輪がはまり、車体を損傷した。
・破損していた駐車場のフェンスに自動車が接触し、傷ができた。
・車止めの位置が通常よりも下がっていたため、後方のフェンスに当たり、車体を損傷した。

以上のようなケースの当てはまる場合は、駐車場の設備に問題があることになり、事故によって発生する損害の賠償責任を問われる場合があるので注意が必要です。

有料?無料?で変わってくる駐車場トラブル

 一口に駐車場といっても、空き地を無料開放しているだけという場合もあれば、月極駐車場のように借主が貸主に対して利用料金を支払って駐車している場合など、実にさまざまです。駐車場の利用料金が有料か無料かによって、管理者に発生する責任が変わってくるので注意が必要です。

 有料駐車場では、お客様と店舗とのあいだで一時的な賃貸借契約が成立していることになります。駐車場の利用料金を支払う代わりに、借主が当該スペースを駐車場として利用できるようにするための環境を整える義務があるわけです。そのため、駐車場の貸主には駐車場を安全に管理する責任が発生します。
 とはいえ、駐車場の設備に問題があるなど、明らかな過失がない限り、駐車場内で起きた事故や事件は利用者やお客様の自己責任となることが多く、駐車場の所有者に責任が問われることはあまりありません。
 しかし、もしも駐車場内で大きな事故・事件が起きてしまった場合、駐車場あるいは店舗に付属する駐車場の場合は店舗の評判にさえも大きく関わってきます。駐車場が有料か無料かにかかわらず、借主が駐車場を利用できなくなるようなトラブルを未然に防ぐためには、防犯カメラを設置したり、警備員・誘導員を配置したりなどの対策を行う必要があるといえるでしょう。
 車の動線を考慮したり、各駐車スペースを広めにとったりなど、事故が発生しにくいレイアウトにすることも大切です。また、定期的にメンテナンスを実施することも、事故・事件が発生する可能性を大幅に下げることにつながるでしょう。

駐車場管理者の責任が関わってきます

 これまで述べてきた通り、駐車場内で自動車同士や人と事故との接触事故が起きた場合、生じた損害の賠償責任は事故を起こした加害者にあります。そのため、駐車場の所有者が責任を問われる可能性はあまり高くはありません。
 ただし、どんな場合でも駐車場管理者の責任が問われないわけではないことを理解しておく必要があります。民法では、事故原因が駐車場内の設備などのメンテナンスが不十分であったなど、損害の発生を防ぐための対策が万全ではなかったためと判断される場合は、駐車場の所有者が責任を負わなくてならないと定めています。
 フェンスや車止め、屋根などの欠陥だけではなく、以下のような場合にも駐車場管理者の責任が関わってくる恐れがあるので注意が必要です。例えば、駐車場の出入口が通常に比べて狭いために見通しがよくないケース。ミラーを設置したり、交通整理のための人員を配置したりといった必要な対策がとられていないことで事故が発生したと判断され、駐車場管理者の責任が問われることがあります。
 近隣に小学校があるケースも注意が必要です。子供の駐車場への侵入や子供の飛び出しが十分に想定されていたにもかかわらず、注意喚起などの措置が十分ではなかったと責任が問われる可能性があります。駐車場内の事故に駐車場管理者の責任が関わってくるケースがあることを認識し、必要な対策をとるよう心がけましょう。

「責任は一切負いません」の看板、意味あるの?

 駐車場内に、次のような文句が書かれた看板があるのを目にしたことがあるのではないでしょうか。

「当駐車場で起きた事故やトラブルに関して、一切の責任を負いかねます」

こうした断り書きさえあれば、駐車場管理者としての責任が問われるのを避けることができるのでしょうか?
 答えは、NO。法的にはほとんど効果がないとされています。駐車場の貸主や管理者は、借主と賃貸契約を締結し賃料を徴収しています。そのため、貸主は事業者に該当するため、「消費者契約法第10条」により上記のような看板の文句は、借主にとって一方的に不利な契約とみなされ、無効を主張することができます。設備のメンテナンスが不十分であるなど、駐車場内の事故が管理者による過失(故意かどうかにかかわらず)によって発生した場合、駐車場の貸主や管理者は事故の責任を負う必要があります。ただし、駐車場を無償で提供している場合はこの限りではありません。

不動産に関する困りごとは弁護士へ相談を

駐車場内で事故や事件が発生したという不動産トラブルの場合、駐車場の貸主や管理者の責任が問われることはあまりありません。
しかし、損害の原因が設備などの瑕疵にあると認められる場合は、損害を賠償しなければならないことがあるので注意が必要です。

そこで頼りになるのが「弁護士」の存在です。

弁護士であれば、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、不動産関連で起きやすいトラブルを未然に防いでくれるでしょう。

弁護士を選ぶ際は、トラブルの内容に精通しているかどうかや相談のしやすさ、説明の分かりやすさを意識しておくのが重要です。

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