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長期借り上げ保証の裏とは?高齢者破産にならないために注意すべきこと

更新日:2019年04月02日
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契約から10年、一方的な契約解除

 ほとんどの人はマンション経営や不動産に関する知識がありません。そんな中、高齢者に対して「節税」の言葉をチラつかせてマンションやアパート経営をさせる業者が多いです。もちろん中にはアパート経営で好転する人もいますがそれは極一部です。
 多くの業者は「サブリース契約」でオーナーとなる高齢者と契約します。サブリース契約とはアパートの建設費をオーナーに負担してもらい運営・管理は全て業者が担当するといったものです。
 サブリース契約は空室・滞納など不動産運営上で起こりうるトラブルの有無にかかわらずオーナーへ行って医学の賃貸料を支払ってくれます。
 他にもトラブルとして起こりうる近隣住民とのトラブルや住居人同士のクレーム・維持や管理も業者が対応してくれます。そのためサブリース契約を口実にして高齢者にアパート建設を促しやすく、高齢者もアパート経営という未経験の分野に飛び込みやすくなっているのです。
 さらに「節税」の観点からも高齢者がアパート経営に乗り出しやすくなっています。更地と物件が建っているのでは物件が建っている方が土地の価値が下がります。所有している土地の資産価値に応じて相続税や固定資産税が変わってくるので更地で遊ばせておくよりかアパートを建ててあえて資産価値を下げる方が税金対策として有効なのです。
 さらに平成27年に行われた税制改正では相続税の課税対象が拡大しました。そのため納税義務が発生する人が増えたのも現状です。
 納税義務が発生した人はどうにかして節税対策をしようとしますよね。そんな人にアパート経営の話が回ってくると食いついてしまう人が多かったのです。
 しかし、そんなうまい話はありません。
 サブリース契約には10年という暗黙の期間が設定されているのです。その10年経った際に行われる契約更新が高齢者のトラブルの元凶になりかねないのです。

サブリース契約によるトラブルの例

 サブリース契約に隠されている10年契約問題とはどのようなことなのでしょうか。それは10年経ち更新するとなった時に家賃減額の交渉を業者がオーナーにできると契約書に書いてあるのにもかかわらずオーナーへ説明する際に「家賃は一生下がらない」「老後まで安定して副収入が得られる」といい勧誘しているからです。
 もちろん契約書は熟読するのがオーナーの責任ですが細かく書いてあることを噛み砕いて正しく説明するのが業者のマナーですよね。
 最初の契約から10年経ち契約更新の話になった際にはアパートはもちろん築年数が10年となっています。
 新築の物件と10年経った物件では新築物件の方を取り扱いたいと業者は考えます。また10年経った物件を契約更新すれば5年や10年継続して業者が取り扱わなければいけません。
 業者の多くは10年経った頃になると契約破棄を念頭に置き話を進めてきます。しかし、契約破棄を一方的に告げればオーナーから批判が出るためオーナー側が契約できないほどの家賃減額交渉を行うのです。
 大きなお世話ですが業者は10年しか契約できていないと利益を出せないのではと思いませんか?
 業者も法人です。利益を出すために出来る手は打っています。
 業者の金儲けはアパート経営で管理する時からではないです。アパートを建設するところから始まっているのです。
 何なら業者の一番の目的はアパートを建てさせることです。長期借り上げを餌にして建築費で概ね利益を出している業者が多いです。

家賃収入の2割近くの軽減を迫られる

 家賃の減額と言っても実際にいくらほど減額交渉をされるのでしょうか。地方に在住の女性オーナーは義理の両親が所有していた土地に「長期借り上げ」で勧誘されアパートを建設しました。
 建設費用は2棟のアパートで2億円。もちろん手持ちではなく銀行からローンとして借り入れをしました。新築物件の際は部屋も満室が続き問題なかったですが、どうしても築年数が上がると空き部屋も増えていきました。しかし、    サブリース契約のおかげで入居部屋数に関係なく月150万円近くの家賃収入を得ていました。
 ここまでくれば誰もが羨む家賃収入(不労所得)生活ですよね。
 契約10年目にさしかかるところで夢から現実に戻されました。業者が契約解除を念頭に置き家賃減額交渉をしてきたのです。
 最終的に業者からは現在の家賃から2割減まで金額提示をされました。2割家賃収入が減ってしまうと銀行から借りた2億円の返済プランにまで影響が出てきてしまうとなり業者との契約は解消することになりました。
 業者から返ってきたアパートは数部屋の空き部屋があり、家賃も低額に設定されていた部屋もありました。
 全て業者へ任せるとオーナーは楽ですが実際にどのような形でアパート経営がされているのかが不透明です。
 最終的にこの女性は自己破産をするまで追い詰められてしまいましたが勧誘時にアパート経営のリスク説明があればと後悔していました。

「30年間安心です」という話から一転

 もう一人男性オーナーの話も紹介していきます。
 この男性は祖父の所有していた土地にアパートを建設しました。当時は周辺にライバルアパートがなく入居者も上々でしたが周辺にアパートが建設されてきたことで状況は一変します。
 男性自身アパートを建設する気は全くなかったのですが、住宅メーカーの営業担当者は祖父の病室まで押しかけて熱心に営業していたそうです。
 また「30年間安心して運用を任せられる」と説明を受けていて信頼してしまっていました。根気負けで銀行から7千万円借り入れアパートを建ててしまったのです。
 サブリース契約で問題になりやすい10年契約更新はクリアしましたが、アパートを建てて16年目に突然契約解除の申し出をされたそうです。
 当初は30年間安心任せられると言われていたのに14年残しての契約解除です。
 住宅メーカーからの仕打ちはこれだけではありませんでした。
 アパート管理関係を返却してもらってから気づいたことですが、今まで入居していた人は住宅メーカーの系列アパートへ引越しをしていたのです。
 アパート契約を解除されただけでなく入居者も奪われてしまいました。

少しでも違和感に気づいたら相談

 こうしたトラブルは氷山の一角です。更地を見つければ営業マンはところかまわず営業の郵便物や直接訪問してくるでしょう。
 2つ目に紹介した男性は口頭で30年間安心と説明を受けていました。
中には「将来にかけて家賃収入が安定する」といったうたい文句で営業をかけてくる会社もあります。
 中にはしっかりと管理・営業・運用している業者もあり一概に批判ができませんが少しでも違和感を覚えたら弁護士に相談をするようにしましょう。
 違和感の具体例は以下のものがあります。

  • 未来など不確定なことに関して言い切って営業している
  •  未来のことは誰にもわかりません。将来的に保障する、何十年契約でなどと言い切っている業者の場合は口頭で話を聞くのではなく録音や書面に
    書いてもらうなど対処をしましょう。

  • 担当者が毎回異なる
  •  担当者が毎回異なると会社としての信用が失われます。弁護士へ相談して会社の情報を調べてもらう、対応を弁護士に変わってもらうなど対処方を取るのが良いでしょう。

  • 営業所が現住所より遠い
  •  何かあってもすぐに駆けつけてくれない業者は親身になって対応してくれると考えにくいです。

  • 大手バンクや自分の住んでいる地方銀行で融資させようとしない
  •  通常、融資を受ける際は大手メガバンクを第一選択に入れるのではないでしょうか。もちろん事業の大小や借り入れ金額によっては地方銀行など地域性豊かな銀行を選ぶことがあるでしょう。
     自分の住んでいる地方銀行を選べない場合は少し違和感を覚えますよね。
    例えば北海道に住んでいる人が沖縄の地方銀行を利用するのは違和感を覚えます。

まとめ

 長期借り上げを名目に高齢者を狙ってアパートを建てさせる悪質企業がいるのは事実です。アパート経営を今までしたことがない人は長期で借り上げてくれるのと思い込んでしまいなすが実際に契約書には家賃減額交渉が含まれているのがほとんどです。家賃が下がってしまえば銀行からの借り入れを返済するのが大変になりますよね。そこにつけこんでアパート管理を最終的にはオーナーへ返してしまうのです。
 業者はアパート建設の段階で建設費に上乗せ分を乗せているのでアパートを建てさせれば利益のほぼ半分を得ることができるのです。
残りの半分の利益は10年ほどアパート管理を代行すれば得ることができます。
もし土地活用をするためにアパート経営の話が来たらできるだけやり取りを書面や録音して残しておくようにしましょう。そして何か業者に違和感があれば弁護士へ相談するようにしましょう。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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