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任意売却後の引越費用を確保するには?

更新日:2019年07月09日
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任意売却後の売買代金はどのように配分されるのか。

 任意売却とはローンの返済が滞ってきたときに不動産物件を債権者が差し押さえ売却することです。売却した不動産の価格がそのままローン返済に充てられます。任意売却はいわばおおっぴらにされない差し押さえです。任意売却をする際は不動産のコンサルタントや法律家など専門家が債権者と債務者の間に入ることで調整を行います。債権者が承諾をすれば不動産売買価格がローン残高を下回っていても売却できる素晴らしい制度なのです。例を出せばローン残高が2000万円だとしても債権者が承諾すれば500万円で不動産を売却しても問題ないのです。それくらい少額でも支払われないに比べればマシだという考えです。

 任意売却にすると競売にかけるよりも高額で不動産を売買できる点や引越し時期や明け渡し時期に融通を利かせることができる点、近所の人に知られることなくプライバシーが守られる点、支払いや催促の精神的負担から早期に解決されることなどがメリットとしてあげられます。

 そんなメリットも多い任意売却をした後の売買代金はどのように配分されるのでしょうか。基本的に配分されるものとして住宅ローンの残り・物件売却に関わった不動産仲介手数料・抵当権の抹消・管理費など滞納分・固定資産税の滞納分があります。住宅ローンの残りというのは債権者に対して支払うローン残高のことですね。このローン残高に対する支払いが割合で多くを占めます。次に物件売却時の不動産仲介手数料ですが、これは不動産管理会しゃに支払われます。売買された不動産に対して何パーセントというので決まっています。

 任意売却をする物件には抵当権がかけられています。この抵当権を抹消するには司法書士へ依頼をする必要があるので抹消費も必要になりますね。他にはマンションなど共有スペースの管理費がかかった場合はその滞納分の支払い、市役所などに固定資産税の支払いを滞納していれば固定資産税の支払いにも回されます。

 この必ず配分される費用の他に交渉次第で債務者に配分されるのが引越し費用や残金の振込手数料・不要物の処分費用です。ただし、交渉次第という言葉は重要になります。債権者も住宅購入者も債務者に引越し費用を含めこれらすべての費用を支払う必要はありません。そこを善意で認めてくれているのです。というのも任意売却をする人にお金で困っていない人はいません。皆、お金に困ったから任意売却をするのです。そこを購入者もわかっているので少し役立てて欲しいという意味で引越し代を負担してくれる優しい人もいます。

 しかし、あくまでこれは優しさなので必ず負担してもらえるものではありません。引越し代を負担されないケースの方が多いです。
 
 そこで債務者は自身が頑張って努力をしたけれどこの物件を手放すことになったと理解をしてもらう必要があります。貯蓄の有無・手持ちの有無を切実に説明することで購入者や債権者に同情させれば状況の変化はいくらでも期待できます。また、任意売却になりそうな場合は少しずつでもお金を貯金しておけば引越し費用に充てることができますよね。

任意売却と引越し代

 任意売却と引越しの話を詳しくする前に任意売却と競売。この2つの違いについて紹介していきます。これら2つとも最終的に不動産物件を手放すことになりますが任意売却の方がメリットが多いです。中でも大きいのがこの項目で紹介する引越し代です。競売にかけられてしまうと裁判所からの立ち退き命令が出るので立ち退き料が出ません。しかし、任意売却は債権者と債務者で話し合いを行い、交渉の結果次第では引越し代として最高30万円が支払われることになっています。

 ただし、任意売却をすると誰でも引越し費用をもらえるわけではないです。任意売却に対して前向きな人生設計を持っている人には引越し費用を用意することが多いように感じます。引越し費用を出すからまた人生頑張れよと債権者からのメッセージに捉えて頑張る人が多いです。また、それ以上に大切なのは債権者との交渉です。お金がない中で任意売却をするので少しでも引越し代を工面したいと思っているでしょうが、焦らずに交渉をすることが大切です。

競売と任意売却の場合の違い

 競売と任意売却では引越し費用が出る可能性がある違いがありました。では、それ以外で競売と任意売却でどのような違いがあるのでしょうか。競売と任意売却で大きく異なるのは売却価格です。どちらも市場価格よりも安価に取引されることには変わりないです。

 しかし、競売の場合は市場価格の7割程度。任意売却は市場価格に限りなく近い価格で取引されます。また、競売の場合は官報やインターネットで競売物件として公開されることが多いですが、任意売却の場合はプライバシーが保護された状態で販売されます。一見しただけでは任意売却物件とは思えないほどです。また、競売も任意売却もローン返済に充てるために売却をするのですが競売は市場価格よりも3割ほど安く販売されてしまうのでローン返済額があまり減らないことがあります。

 任意売却では市場価格に近い金額で売却できるのでローン返済が少額になる傾向があります。
 また、競売と任意売却で違う点として自分が住居に住み続けられるか否かが関わってきます。例えば競売の場合はいわゆるオークションのような形で購入者が決まり、お金がないので取り戻すことも難しいです。任意売却をすると親子間や親戚に購入してもらうことで自分が住居として住み続けることが可能です。

 引越し費用に関しては既に紹介していますが任意売却の場合30万円までであれば債権者・購入者からの善意で負担してもらうことができます。それだけでなく引越しをする日までも任意売却だと選ぶことができるのです。競売だと所有者の意思は全て関係なく引越し日を決められてしまいます。

任意売却だと引越し費用が貰える可能性がある理由

 あくまで引越し費用はもらえる可能性があるというだけで確実にもらえるわけではありません。法律では債権者にも購入者にも引越し費用を負担しなければいけないという決まりはありません。もちろん過去の道理や判例でも引越し費用を認めた判例はありません。完全な債権者と購入者の善意で引越し費用を負担しているのです。

 多くの場合、引越し費用を負担してもらえないですが、なぜ引越し費用をもらえる可能性があるのでしょうか?それは「特典」です。免許合宿でも本当に欲しいのは車の免許証なのにお米やレジャー体験など付帯品を特典に生徒を募集していますよね。それと同じで引越し費用はあくまで特典として位置付けられることが多いです。不動産管理会社も引越し費用を口実に任意売却を勧めたほうが利益を大きく出せるのであればそちらを優先させますね。

 買い主としても任意売却で良い物件を購入できるのであれば引越し費用を負担しても良いと思っている人が少なからずいます。さらに、不動産物件を確実に明け渡してもらうには引越し費用を支払うという人もいますね。

必ず払われるものではない(引越し代)

 不動産管理会社の中には「引越し費用を支払います」と明言しているところがありますが、注意が必要です。何度も言いますが引越し費用を債務者がもらえる法律や道理は存在しません。必ず引越し代はもらえないということを念頭に置いておきましょう。

 では、引越し費用は相場でどの程度なのでしょうか。一昔前であれば50万円前後もらえるところもありました。しかし、現在は10万円〜30万円程度が相場です。
 フラット35で有名な独立行政法人「住宅金融支援機構」の場合、任意売却に対する費用控除について基準を決めています。フラット35では引越しに対して10万円〜35万円ほどの引越し費用を上限としています。
 引越し費用はいつ頃振り込まれるのでしょうか。基本的に引越し費用が振り込まれるのは住宅が明け渡されたときです。引越しを確実に終わらせてから引越し費用を負担することになりますが、債務者が一度引越し費用を負担しなければいけない点は変わりません。引越し費用として用意しても生活費にされてしまうと元も子もないですよね。

まとめ

 今回は任意売却語の売買代金をどのように配分させるのかについて紹介していきました。また、任意売却をした際に引越し費用を負担してもらえるのかという話については必ず負担してもらう保証はありません。あくまで購入者と不動産管理会社からの善意で負担されるというのを忘れないようにしましょう。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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