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土地は「相続」と「生前贈与」のどちらが得するのか

更新日:2024年03月19日
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親の名義の土地を、親が生きている間に子の名義に変更する一連の手続のことを「贈与」と言います。贈与はよく聞く遺産相続、すなわち親が亡くなって、その財産を法律によって定められた相続順位に基づいて継承する「相続」とは違います。
贈与とは親が生きているうちに、本来は贈与者(親、財産を渡す人)が亡くなった後に相続されるはずの財産を、受贈者(子、財産を受ける人)へ無償で譲ることを意味します。今回は贈与と相続、どちらが土地を受け継ぐ場合に得なのかをお伝えいたします。

1. 土地は「相続」と「贈与」のどちらが得なのか

 土地を親から継承する場合の方法は2つあります。
一つが「相続」です。これはよく「遺産相続」ということばで表されていますね。親が亡くなったあと、遺言書または法定相続、遺産分割協議など、相続人全員が納得する方法に従って、相続財産の一部である土地を自分のものとして、不動産名義を書き換える(=不動産登記情報の変更)をします。その際に、相続税がかかる可能性があります。
 2つ目が「贈与」です。贈与は、親が生前本来は自分が死んだ後に、相続されるはずの土地を事前に子供に無償で譲ることです。
この2つの方法では、どちらが土地をお得に親から受け取ることができるのでしょうか?
生前贈与をしているほうが節税になる、と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。でも実は相続税と贈与税の税率は、同じ課税価格であれば、贈与税の方が高いのです。それなら贈与よりも相続によって財産を引き継いだ方が、税金が安くなってお得か、と言うと一概にそうとは言えません。むしろ、贈与を組み合わせた方が、税金が安くなるケースが多いのです。
なぜそうなるのか。その理由の一つとして、相続税も贈与税も、多様な控除(非課税枠)があり、それらを組み合わせて適用を受けると、節税になるからです。さらに相続税や贈与税の税率は、累進課税制です。財産の額が大きければ大きいほど税率が高くなる仕組みになっています。そのため、課税率が低い範囲の額を毎年贈与することで、低い税率で財産を引き継ぐことができます。
このように、一概に「相続の方がお得」「贈与の方がお得」とは言い切れず、相続と贈与のそれぞれの仕組みを理解して、上手に組み合わせることが大切になります。

2. 不動産を「生前贈与」するメリット

 では不動産を「生前贈与」するメリットは何でしょうか?
 まず初めに、贈与であれば贈与者、すなわち親の意向が確実に反映されることです。相続の場合では、遺言で財産の継承者が指定されていても、ほかの相続人が遺言の内容に意義を申し立てれば、遺言通りの内容で相続が行われない場合もあるからです。
2番目に、将来的に評価額が上昇する見込みのある不動産の場合は、生前贈与をする方が、メリットがあります。贈与税は、贈与の契約が成立した時点での財産評価額によって税率が決まります。そのため、将来的に親が亡くなってから相続をすると、その間に評価額が上昇した場合の相続税と比べると、税負担を抑えることができます。
 3番目としては、贈与を先にしておくことで、相続財産を減らすことができるので、結果的に相続税を抑えることができます。ただし、これは贈与する対象の不動産の評価額によって大きく変わる点に注意が必要です。
 4番めには、贈与の場合、比較的短期間にその手続きが可能なことです。
 最後に、65歳以上の親が20歳以上の子に贈与しり場合にもメリットが生じる可能性があります。この場合、贈与税の支払い方法として「相続時精算課税制度」の選択が可能となります。これを選択すると、2500万円までの基礎控除に加え、贈与者が亡くなった際に発生する相続税については、それまで支払った贈与税分も控除されるメリットがあります。

3. 不動産を「相続」するメリット

では次に、不動産を相続するメリットを見ましょう。
まず税率の違いがあります。贈与税は、相続税よりも負担が大きく設定されており、生前贈与を選択しても、さほど税負担の軽減に繋がらないケースが多くあります。
相続税では、原則として3,000万円の基礎控除+相続人の数×600万円が適用されますから、これは大きなメリットです。一般的なマンションや戸建て住宅であれば、非課税となるケースがほとんどでしょう。また、不動産の相続では、相続人に対して不動産取得税が課税されないという点もメリットです。

3. 不動産を「相続」するデメリット

不動産を相続する場合、何らかの理由で不動産の評価額が大きく上がってしまった場合には、相続した時点での評価額によって相続税が計算されるので、10年ほど前に生前贈与してもらったよりも高い相続税を納めなければならないデメリットがあります。
また税率が贈与の場合よりも低くても、相続税の納付期限は被相続人の死亡後10か月と決まっています。相続した不動産の評価額が高い場合には、一度に多額の税金を支払う資金が必要になる可能性があることもデメリットです。

4. 不動産を「生前贈与」するデメリット

不動産を生前贈与した場合のデメリットは、まず税率の高さがあります。贈与税は相続税よりも高く設定されていますので、同じ評価額の不動産の場合、相続よりも税金が高くなってしまいます。さらに、一度生前贈与の契約が成立すると、ほかの方法に切り替えができないため、相続税制度の改正があった場合、不利になってしまうことも考えられます。また相続と違って不動産取得税が課税されるのもデメリットです。

5. まとめ

不動産を親から受ける場合に、一概に「贈与が得」「相続が得」とは言えないことがわかりました。
特に不動産の場合には、贈与税の1年間の非課税枠である110万円を超すものがほとんどであるために、現金などのように、少額ずつ生前贈与することができません。そのため、基本的には不動産の評価額が、相続税の基礎控除3000万円+相続人数×600万円の中に納まるのであれば、生前贈与を考える必要はないと考えられます。
 ただし不動産の評価額が相続税の基礎控除額を超えている場合には、生前贈与を使う方がいいでしょう。この場合は「生前贈与するメリット」でもお伝えしたとおり、相続時精算課税制度の利用がオススメです。相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から、20歳以上の子供(推定相続人)や孫に対する贈与のうち、2,500万円までを非課税とする制度です。この制度では、贈与する対象物が現金や不動産などどのようなものでも可能です。しかし、2,500万円を越える贈与金額に対しては、一律20%の贈与税が課せられてしまうため注意が必要です。
不動産を贈与する場合の財産評価は、対象となる不動産を贈与する時点に下されます。
そのため、贈与した後に不動産の価値が上がったとしても問題ありません。つまり、今後価値が上がることが予想される財産については、生前贈与を行うことが得策です。アパートやマンションなどの不動産の贈与では、対象となる不動産の評価額が固定資産税の評価額となります。
 この評価額は不動産のそのもの評価額(時価)より低く、対象不動産の借家権割合に応じて固定資産税としての評価額が下るため、一般的には不動産そのものの評価額(時価)の40%で贈与が可能です。これは現金で同額の生前贈与をした場合と比較しても贈与税を抑えることができるため、持っている現金を、いったん収益が生まれる不動産へと代えてから生前贈与を行う人も少なくありません。
収益を生む不動産は相続税対策にも有効です。もしこのような不動産を贈与せずに相続することになった場合、毎月得られる収益はそのまま相続財産の増大へとつながり、多額の相続税を支払う必要が出てきます。しかし、生前贈与では不動産で得た収入がそのまま贈与を受けた人の収入となるため、相続税を支払うための準備資金として活用できる可能性が生まれます。
 このように評価額の高い不動産、または収入を得られる不動産を持っている場合には、様々な非課税制度などを含めた税の優遇措置を組み合わせることが大切です。
ご自分の不動産の場合はどうなのか、と思った場合には、ぜひ専門家、特に弁護士に相談することをお勧めします。

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