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家賃を滞納されたら?時効や解決方法について

更新日:2020年11月24日
家賃を滞納されたら?時効や解決方法についてのアイキャッチ

賃貸アパートを経営していたところ、家賃を滞納されてしまった。

家賃を滞納されたらどうしたらいいのでしょうか?
家賃滞納の時効や解決方法についてチェックしていきましょう!

家賃滞納の消滅時効は5年

 家賃を滞納されたまま長期間放置すると、時効によって滞納されていた家賃の回収ができなくなってしまうおそれがあります。

 まず、家賃は法律上「債権」にあたります。債権とは「特定人に対して特定の給付や行動を求める権利」のことで、この場合「大家さんが賃借人に家賃を請求する権利」ということになります。
 そして債権には「消滅時効」があります。消滅時効とは、ある権利を一定期間行使せずにいた場合に、その権利を消滅させてしまう制度のことです。債権の消滅時効は、通常は10年とされています。

 ここで注意しなければならないのは、家賃を請求する権利は「賃料請求権」と言い、民法第169条の「定期給付債権」に該当するということです。定期給付債権は消滅時効が5年となっています。
 民法第169条の条文は次の通りです。

年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。

つまり、家賃を請求する権利を5年間行使しなかった場合は、消滅時効によって権利が消滅してしまうというわけです。消滅時効の5年の起算日はそれぞれの月の家賃の支払い日となります。そのため何か月も滞納している家賃がある場合は、毎月消滅時効が訪れることになります。

家賃が支払えなくなったらどうすればいい?

 例えば怪我で入院することになったりリストラに遭うなどして、急に家賃を支払うことができなくなったらどうすればいいのでしょうか。
 先ほどは消滅時効について触れましたが、消滅時効まで滞納し続けることは現実出来ではありません。
 
 ●まずは管理会社や大家さんに相談しましょう
 管理会社や大家さんに連絡して、家賃を支払うことができなくなった事情を説明して、いつ支払うことができるかなどを連絡しておけば、支払いを遅らせてもらう事や、滞納分を分割払いに変更することができる可能性があります。
 連絡しなかった場合は支払う意思が無いとして今後に影響してしまいます。

 ●家賃を支払えなくなった時にすべきこと
 一時的に支払うことができない事情がある場合は次のことをしてみましょう。

貯金を崩す

 貯金があれば崩してでも支払うのが最善の方法です。誰にも迷惑をかけることなく、家賃を滞納することもありません。

連帯保証人などに連絡する

 多くの人は両親兄弟などの親族が連帯保証人になっているのではないかと思いますので、連絡をして一時的にお金を借りて支払う方法があります。親族からお金を借りる場合は、たとえ親族であってもきちんと支払えなくなった理由を説明するなどトラブルにならないよう気を付けましょう。場合によっては借用書などを作成し、借用書に沿って返却するなどすることも考えておく必要があります。

保険の契約者貸付制度を利用する

 生命保険に加入している場合、契約者貸付制度を使って解約払戻金の一部を借りる事ができます。つまりは保険会社からの借金というわけです。
 契約プランによって利用できる場合とそうでない場合がありますので、利用する前に一度確認してみましょう。

キャッシングを利用する

 上記の方法が使えない場合は、やむを得ずキャッシングをしてお金を借り入れて支払う方法もあります。
 借金ですし利息もかかりますが、急いで支払いをしなければならない時には即日キャッシングしてもらうことも可能ですので便利ではあります。
 しかし、審査がありますので必ず借り入れができるわけではありません。

 法律によって具体的に家賃の滞納の期間が定められているわけではありませんが、一般的に家賃を滞納したまま3ヶ月を超えると強制退去させられたり、訴訟を起こされたりしてしまいます。
 事情があったとしても、家賃はできる限り滞納しないようにしましょう。

消滅時効を避けるには?

 大家さんは家賃が消滅時効によって時効消滅になってしまったら大変です。
 消滅時効を避けるにはどうしたらいいのでしょうか?

 家賃滞納の消滅時効の中断をする方法で最も現実的なものは“家賃滞納者を訴える”ことです。家賃滞納の消滅時効の中断をする前にまず、滞納者に次のことを行っておく必要があります。
  ・電話で催促する
  ・督促状を送付する
  ・直接家を訪問する
  ・連帯保証人に連絡する
 (これらの内容については後程詳細に書いていきます。)
 ここまでしても支払いに応じなかった場合は、消滅時効にかかる恐れのある未払い家賃を中断します。
 中断方法は次の通りです。
 
①簡易裁判所に申し立てをする
 滞納者からの支払いがされない場合、簡易裁判所で支払督促の申し立てをします。
 支払督促を行っても応じなかった場合や、滞納者が督促に対して異議申し立てをした場合は民事訴訟をすることになります。

 ②内容証明郵便で催告書を送付する
 家賃を支払うこと、そして支払わなかった場合には賃貸借契約を解除するという内容を記載した催告書を、内容証明郵便で滞納者に送ります。
 内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に差し出されたかということを、郵便局が証明してくれる制度です。
 内容証明郵便を送った時点で消滅時効は一時的に6ヶ月間中断されます。しかし、消滅時効の中断を成立させるためにはこの6ヶ月の間に裁判所に申し立てる必要があります。

 ③民事訴訟をする
 ①であったように、滞納者が支払督促に応じなかった場合や支払督促に対して異議申し立てがあった場合は、民事訴訟をします。
  大家さんなどが訴訟を起こして判決を取った場合、消滅時効は10年に延長されます。

家賃を滞納したまま逃げたらどうなる?

 さて、それでも何とか家賃を支払ってくれればよいのですが、いわゆる夜逃げではありませんが、家賃を滞納したまま逃げられてしまう可能性があります。
 家賃の滞納者は逃げたらいったいどうなってしまうのでしょうか?

 まず消滅時効については先ほど書いた通りで、訴訟を起こして判決が取られた場合、10年間延長されます。滞納者はこの判決によって財産などを差し押さえられるリスクを負います。さらに、大家さんなどの賃借人は判決確定後10年を経過する前に、消滅時効の期間を延長する裁判を起こすことができます。そこでまた判決が取られれば、時効はさらに10年間延長されます。
 仮にその期間中に滞納者が亡くなったとしても、滞納者の子供などの相続人が滞納した家賃の支払い義務を負うことになります。(相続放棄をした場合は別です)

 また、滞納者が荷物を置いたまま逃げた場合、その荷物は賃貸人が勝手に処分することは原則認められません。
 次の人に部屋を貸すために、滞納者との賃貸借契約を解除し部屋を明け渡す裁判を起こされて、その判決が取られた場合、賃貸人は滞納した家賃にプラスして、荷物が残っていたことによって明け渡しまでの家賃と、明け渡しが遅れたことに対する損害金を請求されます。それに加えて荷物の保管費用も支払うことになります。
 つまり荷物を置いたまま逃げるとかなり高額な費用が請求されることになります。

 最終的には自己破産をしなければならなくなるということが考えられます。
 自己破産をすると携帯電話や家の契約などの審査が通りにくくなるなど、色々と生活に支障をきたします。
 
 家賃滞納をしてしまいそうな場合は、きちんと賃貸人に連絡をし、必ず家賃を支払うようにしましょう。逃げるのはもってのほかということです。

家賃を支払ってもらう手順

 家賃滞納の消滅時効の中断をするための簡易裁判所への申立をする前にまず、滞納者に次のことを行って支払いをしてもらうよう交渉しておく必要があります。
 交渉から裁判まで、滞納された家賃を払ってもらう手順を確認しておきましょう。

 ①家賃を支払ってもらうよう交渉する
 交渉の基本は“電話”“文書”“直接交渉”をすることです。

電話で催促をする(電話)

 まずは電話で滞納者に支払いが遅れていることを伝えます。
 ただ単に支払いを忘れているという場合は電話連絡だけで支払いをしてくれるでしょう。
 滞納者と話ができた場合は、いつまでに支払えるか確認をすることと、支払期日をきちんと伝えておきましょう。
 電話の際は感情的な口調にならないように注意しておきましょう。

督促状を送付する(文書)

 電話に出ない場合や、電話で支払いを求めても支払いが無い場合は、督促状を送付します。
 文書には家賃の支払期日と、支払わなかった場合は賃貸借契約を解除するという内容を記載します。

直接家を訪問する(直接交渉)

 督促状にも応じなかった場合は直接交渉をします。
 どの交渉方法にも共通することですが、交渉は冷静に行うことがポイントです。感情的になって強迫をしたり暴行をしたり、無段で立ち入る、鍵を勝手に付け替えるなどという事してしまうと不法行為として罪に問われたり、損害賠償の請求をされてしまう可能性があります。特に直接交渉を行う際はご注意ください。
 また、交渉の記録を残しておくと、後々訴訟を起こす際などに有効です。

 ②連帯保証人に連絡をする
 家賃が滞納されたら連帯保証人や保証会社に連絡をします。
 保証会社によっては一定の期間家賃の支払いを保証してくれます。
 ちなみに親族だからとって連帯保証人以外の親族への連絡をすることは法律違反になってしまう可能性がありますのでやめておきましょう。

 あとは先述したとおり、次のことを行います。
 ③簡易裁判所に申し立てをする
 ④内容証明郵便で催告書を送付する
 ⑤民事訴訟をする

 支払いのや立ち退きの交渉は、当人同士で行うと感情的になりやすく、トラブルになりかねません。また、裁判を行うには専門的な知識が必要です。
 弁護士に依頼すると代理で立ち退き交渉や、裁判を行ってくれます。
 家賃滞納があった場合は弁護士に相談してみましょう。

まとめ

 家賃滞納があった場合は、支払いをしてもらうまでにたくさんの手順があり大変だということ、逆に滞納してしまった場合は家賃だけではなく損害金なども発生するため高額な請求がなされることや滞納して亡くなった場合には子供などの相続人に迷惑が掛かってしまうことなどまでわかりました。
 家賃は滞納しないことが一番ですね。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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