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任意売却とブラックリスト

更新日:2019年07月30日
任意売却とブラックリストのアイキャッチ

 住宅ローンを支払うことができなくなった際に、競売にかけられたくない場合は任意売却を検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 しかし、任意売却をすると、ブラックリストに登録されてしまう事は避けられません。
 任意売却とブラックリストについて、詳しくみていきましょう。

任意売却とは?

 任意売却とは、購入した不動産の住宅ローンを支払えなくなった場合に、その不動産を売却してローンの返済をする方法の事です。
 普通にローンの返済中や支払い後に、引っ越しや買い替えで売却する場合とは違い、支払いが滞っているため、通常は競売にかけられてしまいます。競売とは、住宅ローンなどの借入金の返済ができなくなった結果、債務者が担保として提供していた土地や建物などの不動産について、債権者(銀行などの金融機関)が裁判所に申し立てることによって、裁判所が強制的に該当不動産を差押え・売却をし、その売却金額から住宅ローンの返済に充てるというものです。

 競売にかけられるのを避けるため任意売却を選択するわけですが、通常、不動産を売却するためには、金融機関が設定している抵当権(住宅ローンの支払いができなくなった際などに、その返済のために金融機関が不動産を売却し、優先的に返済を受ける権利)の解除をしなければなりません。
 任意売却を選択した場合は、不動産仲介会社が間に入り、金融機関の承諾を得て、住宅ローンを残したまま抵当権を解除し、不動産を売却することが可能になります。

 しかし何故、競売という方法があるにもかかわらず任意売却を選択するのでしょうか?
 それには次のようなメリットがあるからです。
  ・競売よりも任意売却のほうが売値が高くなる
   →競売だと、市場価格の5~7割程度の設定になってしまいます。任意売却だと市場価格に近い金額で売却が可能となります。
  ・仲介手数料を準備しなくて良い
   →通常の不動産売買の場合は別途仲介手数料を用意しなければなりませんが、任意売却の場合は売却金額の中から支払うことができます。
  ・周囲に知られずに売却ができる
   →競売が決まると、インターネットや新聞に競売物件であることが公開されます。競売物件=住宅ローンを滞納したことにより競売にかけられたことがわかってしまいますので、近所の人などに住宅ローンの滞納を知られてしまいます。任意売却の場合は通常の売却と変わりありませんので、住宅ローンの滞納まで知られることはありません。
  ・退去日が調節できる
   →競売の場合、落札後は強制立ち退きとなります。立ち退きに従わなければ不法占拠となってしまいます。任意売却の場合は、債権者や購入者との話し合いによって、退去日を調節することが可能です。
  ・ローンの残りを少しずつ返済できる
   →競売の場合、債権者から一括返済を求められます。売却金額では一括返済ができず、その結果自己破産をする方も多いようです。任意売却の場合は、債権者と話し合い、残債に対して、債務者の無理のない範囲で返済することができます。
  ・引越費用などを捻出できる可能性がある
   →競売の場合、引っ越し費用などは自己負担となりますが、任意売却の場合は、債権者との話し合いにより、引っ越し費用などを売却金額から差し引いてもらうことも可能なケースがあります。

しかし、すべての不動産が任意売却できるわけではありません。
例えば債権者が任意売却を認めなかった場合や、競売のほうが売却金額が高くなる場合、任意売却ができる期日が迫っている(競売売却の期限は、競売の開札開始の前日までとなっています)場合などは、任意売却をすることができません。
そして任意売却ができなかった場合には、競売にかけられることとなります。

任意売却をするとブラックリストに載ってしまう?

 さて、任意売却ですが、住宅ローンが支払えなくなったからと言ってすぐに任意売却ができるわけではありません。
 住宅ローンの滞納が始まってから3ヶ月から半年の間に「期限の利益喪失」といわれる、借り手に有効な権利である“返済期限までは借りたお金を返さなくていいという権利”が無くなったという予告書や通知書が送られてきます。
 この期限の利益喪失の通知が届いてしまったら、担保となっている不動産は売却し、住宅ローンの返済に充てる以外の方法はありません。
 そしてこの期限の利益喪失の通知が届いてから、任意売却の手続きが可能となります。

 つまり、任意売却ができる期限は、期限の利益喪失の通知から競売の開札開始までということとなります。

●任意売却をする時点ではブラックリストに事故情報の登録がされています!
  よく、「任意売却をするとブラックリストに載ってしまう」と勘違いされる方がいらっしゃるようですが、そもそも任意売却をするか競売にかけられるかということが原因ではなく、住宅ローンを一定期間滞納したことにより、信用情報機関に登録をされてしまうことが、いわゆる「ブラックリストに載る」ということを意味します。

  任意売却をするという事は、期限の利益喪失について先述したとおり既に住宅ローンを滞納した状態にあるため、イコール「既に信用情報機関に登録された状態」だということですので、「任意売却をしたことによりブラックリストに載る」というわけではないことがわかります。むしろ信用情報機関に登録された状態だからこそ任意売却ができるといったほうがわかりやすいかもしれません。

ブラックリストとはどんなリストなのか?

 実際に「ブラックリスト」というリストは存在しません。
 破産や債務整理、ローンの滞納やクレジットカードなどの返済が滞った場合など、信用情報機関にその事故情報や延滞情報が登録されることを「ブラックリストに載る」と表現されます。

 ブラックリストに載ってしまうと、各種ローンなどの取引情報が登録される為、金融機関などは新たに貸付をしません。そのため、次のようなことができなくなります。
  ・借り入れ(キャッシング)ができなくなる。
  ・各種ローン(ショッピング・住宅・自動車など)が組めなくなる。
  ・クレジットカードの契約ができなくなる
  ・携帯電話の分割での購入ができなくなる
 などです。
 また、現在使用しているクレジットカードが使用できなくなる、キャッシングやカードローンは返済しかできなくなる、場合によっては強制的に解約されるという可能性があります。

 ちなみに信用情報機関は、次のようなところがあります。
・株式会社日本信用情報機構(JICC)
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
 →ローン会社や金融機関からの借り入れの確認は上記2社
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
   →銀行系の金融機関からの借り入れの確認はこちら

ブラックリストに登録される情報とは

ブラックリストに登録される「個人信用情報」は、次のようなものとなります。
・債権者の氏名、年齢、性別、生年月日、住所、電話番号
・職業、勤務先、勤務先の電話番号
・年収
・契約日、契約金額、契約の種類など
・現在の借入金額
・過去の返済履歴
・自己破産申立
・個人再生申立
・債務整理
などの個人情報が掲載されます。
これらの情報は、一定期間支払いの滞納が発生した場合に、各信用情報機関で共有されます。ローン会社やクレジット会社は、各信用情報機関に問い合わせをし、その人物が社会的に信用できる人物であるかどうかを判断するために情報を利用するというわけです。

ブラックリストに登録される期間はどのぐらいなのか?

 信用情報機関によって、ブラックリストに登録される期間は異なります。

自己破産 個人再生 任意整理
株式会社日本信用情報機構
(JICC)
5年 5年 5年
株式会社シー・アイ・シー
(CIC)
5年 載らない 載らない
全国銀行個人信用情報センター
(KSC)
10年 10年 任意整理の区分なし

これらの期間が終了した後は、またローンが組めるようになったり、クレジットカードを作れるようになったりします。

 ちなみにブラックリストの情報は、間違っていない限り消すことはできません。
 ブラックリストの情報は、信用情報機関や金融機関の利益のために、情報を大切に取り扱っているからです。もしも、「ブラックリストの情報を消します」などという広告があれば、それは詐欺の可能性がありますのでご注意ください。

 信用情報機関に登録されているかどうかを知りたい場合や、自分の情報がどうなっているかを調べたい場合は、「個人信用情報の開示」をしましょう。
 窓口や郵送、パソコンやスマホでの情報開示が可能です。手数料として500円~1,000円程料金がかかりますが、どのように情報が登録されているかなどがわかります。

まとめ

 任意売却をするに至るには、リストラや病気、減給など、様々な理由があると思います。ブラックリストに載ってしまうのは避けられませんが、競売よりメリットが多いので、任意売却がうまくいき、少しでも住宅ローンを減らしたり、負担を減らすことができると良いですね。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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