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立ち退き通知書とは?賃貸・賃家の【立ち退き通知書の例】も含めて解説

更新日:2024年02月08日
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 突然大家さんから送られてきた「立ち退き通知書」。
 きちんと家賃も支払っているし、どうして急に立ち退きをしなければならなくなったの!?
 さらに通知書を読んでみたら“立ち退き料として引っ越し費用の負担をします”と書いてあるけれど、新しい家に住むときにはまた敷金や礼金も発生するのにそれについては書かれていないってことは自分負担なの!?

 など、急に立ち退けと言われたら困惑してしまいますね。
 立ち退きに応じて引っ越しをすることとしても、もう少し立ち退き料を多く請求することができるのではないか、そもそも立ち退き料の相場はいくらなのか、提示された立ち退き料は妥当な金額なのか…わからないことがたくさんありますね。

 立ち退き通知書とはどういった内容のものなのか、書いてある内容は正当な理由なのか、立ち退き料の詳細など、立ち退きに関する事を詳しくみていきましょう!
 

立ち退き通知書って?

 まず、立ち退き請求とは賃貸借契約において、大家さんが建物の建て替えや取り壊しなどの理由から、賃借人に対して、契約期間の更新拒絶または解約の申し入れをして、物件からの退去を請求することを言います。
「立ち退き通知書」とは、文字通り賃貸物件から立ち退きを依頼する文書のことです。

借りている賃貸物件が、老朽化で危なくなっていることもあるでしょう。
老朽化をしている建物は、地震などの自然災害が発生した際に倒れたり、壊れたりする恐れがあり、常に入居している人が危険に晒されるようになります。

このような場合などに、賃貸物件に入居している人が、立ち退きを依頼されることになります。
立ち退き通知書はその際に送られる文書というわけです。

その立退き通知書の内容は正当事由?

では、立ち退きの正当事由とはどのようなものでしょうか?
立ち退きの正当な理由としては、以下を考えて判断されます。
・建物を借主・貸主が必要とする事情
・今までの賃貸の経過
・建物を利用している状況
・現在の建物の状況
・立ち退き料

建物を借主・貸主が必要とする事情

居住や営業の必要性で、例えば、借主は賃貸アパートに住む必要性は認められるが、貸主は建て替えてマンションにしたいだけの場合は、貸主が賃貸アパートを使う必要性はそれほど認められません。
しかし、建て替えたマンションの家賃収入が唯一の生活する手段であれば、賃貸アパートを使う必要性が貸主にもあります。

今までの賃貸の経過

賃貸をした経緯や、賃料の停滞や信頼関係が壊れる行いが、契約している期間中にあったかなどです。
例えば、借主はきちんと家賃を払っていれば契約違反はありません。

しかし、注意する必要があるのは、建て替えを借主がいつ分かったかということです。
例えば、借主が、賃貸アパートが将来的に取り壊すことを把握したうえで借りた場合は、立ち退きを拒めないことがあります。

建物を利用している状況

契約違反などを借主がしないで、建物を有効に使用していたか、また、あまり実際には使っていなかったことはないか、が考えられます。

現在の建物の状況

建て替えする必要性はあるかどうか、あるいは、十分に経済的・社会的効用があるかどうかということから判断されます。

立ち退き通知書がきたらまず、賃貸契約書を見直そう

現代はネットなどの情報が多くあるため、マンション・アパートなどに入居している人の法律や権利についての意識が従来に比較して非常に変わっていると言えます。

従来のように借主にとって貸主と言うと親のようなものと言うようなものではなく、貸主と借主の関係に変わり、法的な内容や権利主張が多くなっていくでしょう。

貸主と借主の関係でトラブルに最もなっているものとしては、資金精算、原状回復があるでしょう。
貸主が行うこと、借主が行うことがきちんと取り決めされていなければ、このようなトラブルが生じます。
不動産仲介会社が作っている賃貸契約書の場合は、曖昧な表現が全体的に多く、一見すれば公平に感じるでしょう。
というのは、当然ですが、不動産仲介会社は管理会社ではないためです。

賃貸契約書は、貸主と借主のバランスを取ったり、内容が一方的にならないようにする必要があります。
しかし、貸主自身も高齢化しており、昔のいい時代を知っている貸主は、賃貸契約書については意識をそれほどしていないでしょう。

賃貸契約書を十分に読んでいない人も多くいるのではないでしょうか。
現在でも、条項が多くない賃貸契約書に疑わないで多くの人が契約しているようです。
賃貸契約書の場合にリスクがあると思うのであれば、定期借家契約で対応すると問題ありません。

しかし、借主自身が契約を不動産仲介業者に全て任せていれば、契約をきちんとした賃貸契約書で行うことは期待できません。
借主を保護する賃貸契約書は、不動産仲介業者は作れないし、もし作ったとしてもそのような賃貸契約書では締結もできないでしょう

というのは、不動産仲介業者の場合は、借主も貸主もお客さんになるため、賃貸契約書は割合中立的なものになりがちであるためです。
賃貸契約書を見直して、賃貸トラブルから借主を保護するものにしましょう。

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通知書は何ヶ月前からもらうものが妥当か?

賃貸契約書には、一般的に、「契約を貸主側から解除する場合は、文書で半年前までに予告しなければならない」というような文言が書かれています。
では、立ち退きの要求を半年前に受けた場合は、絶対に自分で引越し先を探して出ていく必要があるのでしょうか?

引越しするためには、引越しする費用や新しく賃貸物件を契約するための敷金・礼金、契約金など、出費も相当あります。
借主の中には急に引越しするための費用が経済的な理由で準備できない場合は、強引に立ち退きをさせられると住むところが無くなります。

借主をこのような不安から守るために借地借家法があり、長期間家賃を滞納したなどの正当事由がなければ、通知が半年前にあった場合でも、貸主は強制的に借主を立ち退かせられません。

この権利は、法律で決まっているものではありませんが、借家権と言われるものです。
貸主が指定した立ち退きの期限が過ぎても、正当に家賃を払うと、借主は住み続ける権利があります。
もし家賃の受け取りを貸主が拒んだ場合は、国の機関の供託所に家賃を預けると家賃を正当に払っているようになります。

立ち退き通知書の例

 
 ここまでで
  ・立ち退きには正当な理由が必要なこと
  ・立ち退き勧告は原則として期間満了の6ヶ月以上前までに申し入れる必要があること
 などがわかりました。

 ではその立ち退き通知書の中身がどのように書かれているか、具体例をみてみましょう。

平成○○年○月○日

●●県●●市●●区●● ●番●号
●● ●●殿

〇〇県〇〇市〇〇区〇〇 〇番〇号
○○ ○○ 印

通知書

 

私は貴殿に対し、平成●●年●月●日より私の所有する下記の建物を賃貸してまいりましたが、賃貸借契約は平成○年○月末日をもって期間満了となります。

下記建物はすでに築50年を経過し、ひどく老朽化しておりますので建て直さなくてはならない状況となっております。

そのため、本書面をもちまして下記建物の賃貸借契約の解除の申し入れをさせて頂きます。

従いまして、賃貸借期間が満了になり次第、下記建物を明け渡して下さいますようお願い申し上げます。

私からの退去願いでありますので、原状回復費としてお預かりしております敷金の返還および転居先への引っ越し費用を負担させていただきます。

ただし、それ以上の費用の負担については一切考えておりません。

つきましては明け渡し日が確定いたしましたらご連絡ください。退出手続きおよび返還手続きを行わせていただきます。

 

勝手ではございますが、ご了承のほどよろしくお願いいたします。

 

建物

所在 ●●県●●市●●区●● ●●番地●

家屋番号 ●●番●

種類 居宅

構造 木造かわらぶき2階建

床面積 1階 ●●・●●平方メートル

2階 ●●・●●平方メートル

 

このように、何故立ち退きをしなければならないのか、いつ頃契約解除になるのか、建物の詳細などが書かれています。
 文面が決まっているわけではありませんので、どこまで詳細に書かれるかは大家さん次第といったところですが、抑えておくべきポイントとしては
  ・正当事由がきちんと書かれているか
  ・立ち退きの期限が半年以上空けられているか
  ・立ち退き料について書かれているか
 といった内容が書かれているかどうかです。

立ち退き料って?そもそももらえるのか?

立ち退きを貸主から通知するのは半年以上前になっているため、これより前は普通は交渉もできません。
そのため、貸主と借主が話し合いをして合意するようになります。

一般的に、新しい賃貸物件へ引越しする際の立ち退き料を、借主に貸主が払うようになります。
賃貸物件の場合の立ち退き料の金額の相場は、家賃の約6ヶ月~10ヶ月程度です。
この立ち退き料を払うことが、法律などで必ず決まっているということではありません。
借主と貸主がお互いに合意して、借主が退室を気持ちよく行うための条件です。

貸主が新しい住まいを見つけて準備する、あるいは原状回復の費用を免除するなど、合意をどのような条件でするかは交渉によって決まります。
 ちなみに金額は条件によって異なりますが、立ち退き料を全くもらえないといったケースはごくまれです。
 倒壊する恐れがあるアパートですら、裁判をすると立ち退き料が発生するケースが多いと言います。
 しかし、倒壊する恐れがあるような古いアパートなどの場合は、住民に危険が及ぶ可能性があるため立ち退き料が支払われたとしても減額される可能性があります。
 逆に立ち退き後に新しい物件が建つなど、再利用をするための建て替えを理由に立ち退きをする場合には多く立ち退き料がもらえる可能性があります。

 では、立ち退き料の請求ができないのはどういったケースなのでしょうか?

立ち退き料の請求ができない場合

●家賃滞納をしている場合
立ち退き料が発生するケースは、大家さん側に立ち退いてもらう事情がある場合です。
そのため、家賃滞納をしている場合の立ち退き請求は立ち退き料の請求はできません。

●定期借家契約の場合
定期借家契約は、家を借りる契約の種類の1つで、契約の際に設定した賃貸期間が終了したら借家契約も終了するため、賃貸期間終了時には賃借人は退去しなければなりません。契約によって当然に退去することになりますので、立ち退き料の請求をすることはできません。

●一時使用目的の賃貸借契約の場合
一時使用目的のために建物を賃貸借する契約のことです。
例えば選挙事務所や転居のための仮住居や仮店舗など、客観的に見ても一時利用である場合にはこの一時使用目的の賃貸借契約をすることがあります。
この場合も立ち退き料の請求をすることはできません。

●取り壊し予定の建物の賃貸借契約をしている場合
  賃貸借契約の時点で建物の取り壊しが決定しており、取り壊しと同時に契約が終了するという契約をしていた場合も、立ち退き料の請求はできません。

立ち退き料の内訳とは?

ここでは、一般的な立ち退き料の内訳についてご紹介しましょう。
立ち退き料は、裁判の場合は具体的なケースでの正当事由を考慮して決まるので、必ずしもここでご紹介する全ての項目になるということではありません。
また、逆に、正当事由が全ての項目を支払うと認められるということでもありません。

移転するための費用

引越し費用としては、借主が引越しするための費用、引越し業者に頼む場合の費用などです。
賃貸契約を新しく結ぶための費用としては、引越し先の貸主に支払う礼金や権利金、不動産仲介業者に支払う手数料、保証金や敷金が以前よりも高くなる場合は差額などです。

雑費としては、引越しの通知のための費用、事務所や店舗の場合はホームページを変更する費用などです。
家賃差額の補償としては、立ち退き前の家賃と引越し先の家賃との差額の補償です。

投資した資金が回収できない場合の補償

店舗を賃貸物件で営業している場合は、入居する際に高額な費用をかけて造作などをしているでしょうが、このような投資した資金に関して減価償却ができない時期に、貸主の都合で立ち退きする場合は、この損失補償があるでしょう。

営業補償

借主の営業が特殊な内容であるため、現在の賃貸物件から移転した後、別のところでは営業が継続できなくて廃止せざるを得ない場合は、営業を廃止することに対する補償があります。

現在の賃貸物件から移転した後、営業が移転先でできる場合でも、商圏が変わったなどの事情によってお客さんが少なくなるなどの恐れがある場合は、移転することによる実際に失う儲けの補償があります。

営業を移転先で再開するまでに準備が相当必要になるなどで、休業期間が必要な場合は、休業期間の補償があります。

借家権の補償

借家権に関しては算定が必ずしも簡単ではなく、考え方として立ち退き料の場合は参考くらいにしかならないというものもあります。

その他

居住用住宅の場合は、特に場所が変わることによって社会的、地縁的変化によるメンタル的な迷惑料もあります。
また、早期に立ち退き交渉を終わらせるために、貸主が上乗せ分を支払うこともあります。

わからないことは弁護士に相談

立ち退きの請求をされた場合にどうしても納得がいかなければ、自分一人で大家さんと話をするよりも弁護士と一緒に話をしたほうが、話がスムーズに進む可能性があります。
 特に立ち退きをしたくない場合は、絶対に立ち退きをしてほしい大家さんとトラブルになってしまう可能性が高いです。
 立ち退き料をたくさん貰えればいつ立ち退きをしてもいいと思っている場合は自分一人で話を進めても良いと思いますが、そうでないのであれば弁護士に相談すると良いでしょう。

 また、立ち退きの理由や条件に疑問や不満がある場合も弁護士に相談することをおすすめします。

 ●弁護士に相談するメリット
  一番のメリットは、弁護士は法律のプロであるということです。
  大家さん側も弁護士に依頼をして立ち退きの請求をしている可能性が高いです。そのため、法律の知識が少ない状態で弁護士が付いている大家さんと話し合うとかなり不利であると言えます。
  弁護士の中には不動産の問題に強い弁護士もおりますので、そういった弁護士に依頼をすることで自分が望む結果に近づけることができるかもしれません。

 ●弁護士の依頼料
  弁護士に依頼をした場合、多くは着手金と報酬金がかかります。
  着手金は成功・不成功に関係なく弁護士に問題に対応してもらうために支払う金銭で、問題に着手する前に支払います。
  また、報酬金は“成功報酬”のことを言います。成功の度合いに応じて支払うことになりますので、問題が解決した後に支払います。
  着手金も報酬金も家賃や依頼者の経済的利益に応じて計算されますので金額に大きな差がありますが、数十万程度かかると思われます。
  その他、証明書の取得費用や郵便代などの負担をすることがあります。

 ●弁護士の相談費用
  相談費用は弁護士や事務所によって異なりますが、最近では初回の相談は無料で行っている事務所が多くあります。弁護士に依頼したほうが、依頼料を支払ったあとでも多くの立ち退き料が手元に残るのか、そもそも依頼料はいくらになるのかなどの相談を一度してみるのも良いかもしれません。
  初回無料は時間制限があることがありますので、質問をあらかじめまとめておいて、聞きたいことを時間内にたくさん聞けるようにしておいた方が良いでしょう。

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