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共有名義不動産!名義人が亡くなってしまったら?

更新日:2021年09月08日
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共有名義の名義人が亡くなったら?

建物が2人の共有になっている場合に、1人が死亡しました。
相続人が死亡した人にはいませんが、死亡した人の共有持分はもう1人に移るのでしょうか?
死亡した人の共有持分は、もう1人に移るということではありません。

財産分与が特別縁故者にされない場合に、死亡した人の共有持分がもう1人に帰属するように民法958条では決まっています。

一方、民法255条では、持分を1人の共有者が放棄した場合、あるいは相続人が死亡してもいない場合は、別の共有者にその持分は帰属すると決まっています。
この条文のみで判断すれば、1人の共有者が死亡した際に相続人がいない場合は、別の共有者に権利が移るようにも判断できます。

しかし、民法958条の3第1項の特別縁故者に対する財産分与には、権利を相続人として主張する人がいなければ、「相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」という規則もあります。

そのため、1人の共有者が死亡して、相続人がいないことがはっきりして、精算手続きが受遺者や相続債権者に対して終わった際、死亡した人の持分が、255条を優先する説である255条によってすぐに別の共有者に帰属するか、あるいは958条を優先する説である958条に基づいて財産分与として特別縁故者に対するものの対象になって、財産分与されない場合に、別の共有者に255条によって帰属するか、ということがあります。

このことに関して、最高裁判所としては、最高裁平成元年11月24日判決において、958条が優先する説に立つことを次のように判示して明らかにしています。

『958条の3の規定は、本来国庫に帰属すべき相続財産の全部又は一部を被相続人と特別の縁故があった者に分与する途を開き、右特別縁故者を保護するとともに、特別縁故者の存否にかかわらず相続財産を国庫に帰属させることの不条理を避けようとするものであり、そこには、被相続人の合理的意思を推測探究し、いわば遺贈ないし死因贈与制度を補充する趣旨も含まれているものと解される。』
『被相続人の療養看護に努めた内縁の妻や事実上の養子など被相続人と特別の縁故があった者が、たまたま遺言等がされていなかったため相続財産から何らの分与をも受けえない場合にそなえて、家庭裁判所の審判による特別縁故者への財産分与の制度が設けられているにもかかわらず、相続財産が共有持分であるというだけでその分与を受けることができないというのも、いかにも不合理である。

これによって、共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり、右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には、特別縁故者を保護することが可能となり、被相続人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに、家庭裁判所における相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり、具体的妥当性を図ることができるのである。

したがって、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、この財産分与がされず、共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、255条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。』

民法255条が適応されるってどういうこと?

2人で土地を共有していた場合、1人の共有者が亡くなるともう1人の共有者は共有持分を得ることができるのでしょうか?
なお、亡くなった人には親族はいません。
亡くなった人に内縁関係にある妻などの特別縁故者がいない場合は、亡くなった人の共有持分をもう1人の共有者は得ることができると考えられます。

民法255条が適応される理由について

民法255条においては、「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」と規定されています。
親族が亡くなった人にはいないため、基本的に、亡くなった人の持分はもう1人の共有者に帰属するようになりそうです。

一方、民法958条の3項には「…相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」 と規定されています。

なお、この規定が存在するのは、被相続人が亡くなって相続人がいなければ、相続財産を国に帰属するよりは、事実上の養子や内縁の配偶者などの特別に縁故がある人が得る方がいいのではないか、という理由からです。

民法255条と民法958条の3項はどのような適用関係になるのでしょうか?

別の共有者と特別縁故者のいずれが優先されるのでしょうか?
ここでは、参考判例についてご紹介しましょう。

参考判例としては、最高裁判所の最高裁平成1年11月24日の判決があります。
この判旨としては、『共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、法九五八条の三の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法二五五条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。』となっています。

相続財産の帰属は、相続人がいない場合はまず民法958条の3項(特別縁故者)が適用になり、次に民法255条が適用になるという順番で決していきます。

つまり、相続人が特別縁故者にいるかどうか、いれば持分の帰属は共有者へ帰属しない、というようになります。
相続人が特別縁故者にいない場合には、別の共有者へ帰属するかどうかということになります。

当事者間で共有持分を売買する場合は、買い主と売主は相反する思惑になるため、話を共有者同士でまとめるのは非常に難しいでしょう。
微妙な親族間の関係性や、一気に古いことによる遺恨などが出てきたりする金銭トラブルが絡んでくれば、さらに難しいでしょう。

 

相続を原因とする所有権移転登記って?

人が死亡した場合、相続人がその人が所有していた財産は相続します。
この相続財産が預貯金や現金などの場合は、相続人で分割することができます。

しかし、不動産であれば、全員の相続人で分割して相続することもできないため、話し合いを全員の相続人で行って、この中のいずれか1人が相続する場合が多いでしょう。
このような場合は、不動産の名義を死亡した人から相続人に変更するようになります。
所有権移転登記とこのことを言います。
この場合は、死亡した被相続人が生まれてから死亡するまでの全部の戸籍謄本・除籍謄本、全員の相続人の住民票と戸籍謄本、遺産分割協議書という話し合いをしたことが分かるものを作って、登記申請を法務局に行う必要があります。

所有権移転登記を自身で手続きするには?

このような所有権移転登記の手続きは自分自身でもやることができます。
ここでは、所有権移転登記の手続きを自分自身でやった場合の一般的な流れについてご紹介しましょう。
なお、司法書士事務所の中には、所有権移転登記の書類を集めること、作ること、申請することの中で全員の相続人が遺産分割協議することと遺産分割協議書に添える印鑑証明書を入手することを除いて、手続きの全てを代理で行っているところもあります。

相続人を調べる

死亡した被相続人が生まれてから死亡するまでの除籍謄本・戸籍謄本・除票・原戸籍謄本などを集めます。

相続人を確定させる

全員の相続人の住民票・戸籍謄本を入手して、相関関係を説明するための図を作ります。
なお、相関関係を説明するための図のサンプルは、ネットなどでダウンロードできるものが紹介されています。

遺産分割協議を行う

どのように遺産を分割するかを、全員の相続人で話し合いをします。
なお、遺言書が残っていれば、遺言書に書かれている内容にしたがって分割するため、遺産分割協議は基本的に行う必要はありません。
所有権移転登記を申請する場合は、全員の相続人の話し合いで遺産分割協議が終わっている必要があるため、遺産分割協議が終わっていない場合は、司法書士事務所では依頼を受け付けしてくれません。
なお、遺産分割協議がどうしてもまとまらないような場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
また、知り合いの弁護士がいなければ、希望すると司法書士事務所で弁護士を紹介してくれます。

・遺産分割協議書を作る

遺産分割協議書を作って、遺産分割協議の中味が分かるようにします。
また、署名・捺印を遺産分割協議書にして、印鑑証明書を準備します。
なお、遺産分割協議書を作る方法については、ネットなどで紹介されているため参考にしましょう。

所有権移転登記の申請を相談する

自分自身で所有権移転登記の申請をする時には、法務局を訪問して、申請書はどのように作るといいか相談に行きましょう。
また、所有権移転登記の申請を代理で司法書士が行う場合は、法務局に申請書を相談する必要はありません。
しかし、問題点が法的にあれば、事前に司法書士も相談を法務局と行って所有権移転登記の手続を行うようになります。

所有権移転登記の申請書を作る

このような書類を準備して、所有権移転登記の申請書を作成します。
所有権移転登記の申請書は、空白を埋めるような書類が準備されているため、全部最初から作る必要はありません。
なお、所有権移転登記の申請書のサンプルは、ネットなどで紹介されているため確認してみましょう。

所有権移転登記を申請する

書類を全てまとめて、所有権移転登記を申請します。
なお、申請を司法書士事務所で代理する際は、申請をオンラインで行います。

登記識別情報通知書を回収する

所有権移転登記の手続きは、1週間くらいで終わります。
そのため、法務局を再度訪問して、所有権移転登記が終わった書類を受け取ります。
受け取った書類の中に登記識別情報通知書が入っており、効力が従来の「権利証」と同じようにあります。

知ってる?持分を共有者に遺贈できる

共有持分は、放棄すると共有者に寄贈することができます。

共有持分を放棄するのはどのようなこと?

共有持分を放棄するというのは、自分の持分を1人の共有者が放棄することで、共有状態を無くすための一つの方法として挙げられます。
共有持分を放棄する際には、承諾を別の共有者から得なくても、持分を放棄する人だけで自由にいつでも行うことができます。

共有持分を放棄するとどうなる?

共有持分を放棄すれば、別の共有者に放棄された持分は帰属すると、民法255条で決まっています。
持分を放棄する人以外に複数の共有者がいる場合は、放棄された持分が別の共有者のそれぞれが持っている共有持分の比率によって帰属するようになります。

持分放棄による登記手続きはどのように行うのか?

共有者の持分を放棄することは、単独行為という相手方がないものと解されていて、持分を放棄する人が意思表示を別の共有者(複数の別の共有者がいればその全員)に対して行うだけで実現できます。
しかし、持分を放棄する意思を別の共有者に対して共有持分を放棄する人が伝えた場合でも、当然ですが、これによって不動産の登記名義は変わりません。
登記名義を変えるには、持分を放棄する原因の名義書換手続を管轄の法務局に行う必要があります。

 

共有名義不動産に関して相談するには?

共有名義不動産に関して相談する際には、信用できる持分売却のプロがおすすめです。
共同名義や共有名義の不動産などで悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
持分売却のプロでは、豊富に共有持分の取り扱い実績がある弁護士、司法書士、不動産鑑定士、税理士と連携する体制を整備しています。
問い合わせについては、「相続した不動産が共有名義で親族でトラブルになっている」「共有名義の不動産を離婚したため売りたい」などの共有持分に関係する相談がよくあるそうです。
共同名義・共有名義の不動産は、承諾を共有者に得なくても売れます。

しかし、売るためには豊富な経験がある不動産業者に頼む必要があります。
持分売却のプロでは、無料で相談できるため、まずは気軽に連絡してみましょう。
また、「親族に分からないように売りたい」「現金に早くしたい」というような要望についても相談にのってくれます。

共有名義の名義人が亡くなった時のまとめ

共有名義の名義人が亡くなった場合は、財産分与が特別縁故者になされない場合に、亡くなった人の共有持分が別の共有名義人に帰属するように民法958条では決まっています。
相続財産の帰属は、相続人がいない場合はまず民法958条の3項(特別縁故者)が適用になり、次に民法255条が適用になるという順番で決していきます。
所有権移転登記は、不動産の名義を死亡した人から相続人に変更することです。
所有権移転登記の手続きを自分自身でやってみる場合は、ここでご紹介した一般的な流れを参考にしましょう。

共有持分は、放棄すると共有者に寄贈することができます。
共有名義不動産に関して相談する際には、信用できる持分売却のプロがおすすめです。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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