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任意売却物件の購入方法とは?

更新日:2021年12月08日
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任意売却物件の購入方法とは

 「任意売却物件(※1)」を購入したいと考える人が増えています。任意売却物件は、普通の物件とは違ってメリットが多いと思われているからでしょう。実際、メリットが多くお得感のある物件なのですが今ひとつ購入方法がわからないという方も多いのではないでしょうか。
 任意売却物件の購入方法は、通常の物件を購入するときと違った手順をとる必要はなく、同じような方法で大丈夫です。ただし、不動産業者が債権者に確認をとるという工程が必要になります。

※1「任意売却物件」
 物件の持ち主が、金銭的な余裕がなくなり融資の返済ができなくなったことで、抵当権が実行されたもののこと。競売にかける前に、第三者の買主に売却するための物件のことです。

任意売却物件はどうして安いの?

 一般に任意売却物件は、市場価格よりも価格が低めに設定されます。ほぼ1〜2割ほど安くなるので、買主からすればお得感があるでしょう。
 では、どうして安くなるのでしょうか。簡単にいえば、物件の状態が悪い可能性があったり、取引がスムーズに進まないなどのリスクがあるからです。
 任意売却となる理由は、売却する側がローンを滞納したこと。物件に手入れがなされていない可能性があり、購入後に買主側が修繕やクリーニングを行う必要があるかもしれません。また、任意売却は債権者が絡んでくるものです。そのため、手続きが少しだけ複雑になるという面もあります。
 このような理由から、任意売却物件は若干安くなるのです。上記のようなリスクがあることを踏まえて購入を検討しなければなりません。

押さえておきたい!任意売却のデメリット

 では、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。任意売却物件のデメリットを説明します。

時間がかかる

 任意売却物件は、物件の持ち主だけでなく、融資をした債権者が物件に関する権利をもっています。そのため、売却の手続きを進めるときは、債権者との交渉・了承を得ることが必要になるのです。そのぶん、時間がかかるというデメリットがあります。

免責事項

 任意売却物件の売主は、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)が免責されます。物件になんらかの瑕疵があった場合には、売主が修繕などを行ってから売却しなければいけないという義務のことを瑕疵担保責任といいますが、任意売却物件の場合はこの義務がないということです。つまり、購入後に、思わぬ瑕疵があってもそのことを理由に取引をキャンセルするといったことができないということになります。

値引き額に制限がある

 債権者が関わってくるので、値引き交渉が満足にできない可能性があります。もし、売主に安くても売りたいという意志があったとしても、基本債権額より低くなる値引きはあり得ません。

残置物

 債務者としての立場である売主は、住宅のローンが返済できない経済状態ですのでいろいろなことに余裕がなくなっている可能性が高いでしょう。家を売却して引っ越すとしても、引っ越し先のほうが間取りも狭くなると思われます。そのため、物件に残置物があるケースが多いです。使えるものならばいいですが、買主側で処分しないといけないということになると、処分だけでも費用がかかる可能性が否めません。また安易に処分してしまうと、トラブルになることもありますので、不動産会社に相談するのが望ましいです。

知って得する!任意売却物件のメリット

 任意売却物件には上述したようなデメリットがありますが、それに目をつぶりたくなるようなメリットもあります。
 やはりなにより一番のメリットといえば、安く購入できるということでしょう。一般の売却不動産よりも、かなり安くなります。

 どの程度安くなるのかというと、同条件の物件と比較して、1〜2割、場合によっては3割ほど安くなることもあるそうです。
 例えば、通常は3,000万円の市場売買価格の物件ならば、任意売却物件であるということだけで2,100万円になるのですから、見過ごせません。

 もちろん、価格は債権者や売主の考えや、物件の状態などによって異なりますが、いずれにしても幾分かは低めの価格になることは間違いありません。少しでも費用を抑えたいという方にとっては、大変お得感のある物件ということになるでしょう。

任意売却物件購入する場合の費用にはどんなものがある?

 では、任意売却物件を実際に購入するときに、必要となる費用にはどのようなものがあるでしょうか。一覧で示しますので、押さえておきましょう。

購入時に必要となる費用一覧

  • 印紙代(売買契約書に貼付するために必要)
  • 不動産所得税
  • 登録免許税
  • 仲介手数料(仲介してくれた不動産業者に支払う手数料)
  • 保険料(火災保険などに加入するために必要)
  • 融資事務手数料(物件を購入するときに融資を受けた場合のみ必要)

こうしてみると、一般的な不動産の購入と同じだということがわかるでしょう。特段、特殊な費用がかさんでくるということはないのです。ただ、注意したいのは、売主でもある債務者が、引っ越しにかかる費用を支払って欲しいと希望してくる場合があります。この場合は、交渉して、お互いの納得のいくかたちで取り決めましょう。必ずしも費用を負担しなければならないというルールはありません。
 上記の一覧にした費用は必ず生じるものですので、物件の購入資金とは別に用意しておかなければなりません。
 登録免許税というのは、登記や登録などをするときに課せられる国税です。不動産を購入し、登記するときに必ず納めないといけません。「登記代」という言い方をする場合もあります。

任意売却物件購入の注意点

 任意売却物件は、安くお得に物件を購入できるというメリットがありますが、実際に購入するとなると、リスク面が気になるものです。リスクを回避するためには、問題になりそうなところをあらかじめチェックして、確認を重ねていくことが必要。注意点を踏まえて慎重に購入手続きを進めていけば、トラブルを回避することができます。
 とくに注意しておきたいことを2つ、ご紹介しますので、しっかりと押さえてください。

1. 手付金の扱い方に注意

 いろいろなケースがありますので一概に単純化することはできませんが、物件の持ち主は、債務者です。それも、住宅ローンを返済できなくなって金銭的な問題を抱えている人ということになります。現金がのどから手が出るほど欲しいという状態であるといっても過言ではないでしょう。
 そのような状況の人に、現金をうっかり渡してしまうと、それをもって行方不明になってしまう可能性も否めないのです。そういう事態を避けるために、任意売却物件の場合は、手付金を売主に支払うのではなく、仲介業者に預かり金として支払っておくというスタイルをとります。いざ決済という段階になったら、債権者に対して仲介業者から支払われるのです。
 このような流れで支払うことで、手付金が安全に債権者のもとに入ることになります。これが1つ目の注意点です。

2. 手続き上の欠けがないか注意

 もう一点、注意しておきたいのは、きちんと間違いなく手続きが進められているかをチェックするということです。というのも、任意売却物件の場合は、通常の物件よりも少しだけ手続きすることが多くなります。通常の売買に慣れた方こそ、このイレギュラーケースの手続きをスルーしてしまうリスクがあります。
 任意売却物件は、いったん債権者に差押えられていることが前提です。つまり、この段階では裁判所に対して競売の申し立てがなされている状態ということになります。
 任意売却をすることになった時点で、次の2つの手続きが必要です。

  • 競売の取り下げ
  • 差押えの取り消し

通常は、担当の司法書士が手続きをすることになっています。しかし、万が一、この手続きが忘れられていたり漏れがあったりして、競売にかけられてしまったら取り返しがつかないことになってしまいます。大きなトラブルに発展する可能性があるので注意しましょう。

まとめ

 任意売却物件は、住宅ローンが払えなくなった債務者が売主となって、債権者に返済をするために売却を行う物件です。物件自体に問題がある可能性があったり、取引がスムーズに進まない可能性があったりするので、市場価格と比べて1〜3割程度、安く売却されます。物件を少しでも安く購入したいという方にとってはメリットが大きいですが、任意売却ならではのリスクもあり、注意点をしっかりとおさえておくべき。取引にあたって不安がある場合や、トラブルになった場合は、すぐに弁護士に相談して安全に手続きを進めるようにしましょう。

この記事の著者

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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