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民泊新法(住宅宿泊事業法)とは、施行・営業日数・届出などは?

更新日:2021年11月04日
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1. 民泊新法(住宅宿泊事業法)とは?

 今も増加の一途を辿っている、いわゆる「民泊(一般の民家に宿泊すること)」。旅行の際などに宿泊費を抑えたいと考えている人にとっては、ホテルと比べて安価に宿泊できるという利点がありますし、ホスト側にとっては利用していない空き部屋や空き家を貸し出すことで利益が生まれますので、双方にとってメリットがある宿泊形態です。若い世代を中心に利用者は増加し続けており、今後は外国人の利用者も増えることが予想されます。
 これまで、家屋に他人を泊めることで利益を生み出す事業形態としては、主にホテル、旅館、簡易宿所、下宿というものがありました。このほか、特殊なものとしては、国家戦略のための特区民泊というものもあります。しかし、近年もてはやされている民泊は、一般の人が他人を家屋に宿泊させるもので、いわばホストのほとんどが不慣れな素人です。ルールも明確に定められていないため、トラブルが起きやすい状況を招いていました。そのため、さまざまな面でトラブルが多発して社会問題になっているという側面もあります。
 そこで、これからますます増える傾向にある民泊をめぐって混乱を招くことのないように、一定のルールを定めて規制しようというのが「民泊新法(住宅宿泊事業法)」を制定することになった理由の一つです。

1. 民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行日は?

 2017年6月9日に成立した新たな法律、「民泊新法(住宅宿泊事業法)」は、2018年6月15日が施行日となっています。正式に施行されるにあたり不備がないようにと、施行日に向けて下記のような細かいルールも順次加えられてきています。

  • 2017年10月27日公開…住宅宿泊事業法施行規則
  • 2017年10月27日公開…国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則
  • 2017年12月26日公開…住宅宿泊事業法施行要領

2. 営業日数は百八十日

これによって、民泊サービスは「旅館業法」の対象外となるのですが、要件を満たすためには、宿泊日数が大きく関与します。条件として定められているのは次のルールです。

人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないもの

出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp)

もし、一年間で百八十日を超える場合は、民泊新法の対象とはなりません。この場合は「旅館業法」に基づいて営業許可を得る必要が生じてきますので注意しましょう。

2. 民泊新法を適用させるには、届出書が必要

 民泊サービスを行う人は、新法上では「住宅宿泊事業者」と呼ばれます。民泊新法に則り、住宅宿泊事業者となり民泊サービスを開始するためには、届出書が必要となります。
 本来、自分が所有する物件に他人を宿泊させるなどして利益を得るには、旅館業法上で定められた許可が必要になります。しかし、民泊新法によると届出を行って受理されれば、旅館業法の許可がなくても民泊サービスを開始できるということになっています。
 人を泊めるスペースに家主が同居していない「家主不在型」、あるいは「家主同居型」のいずれの場合においても同様です。
 つまり、この届出書をしっかりと作成して提出することが大切になってきます。申請していなかったために新法民泊として認められなかったということにならないように、早めに準備に取りかかり、しっかり届出を行いましょう。
 なお、届出書を作成するときは、日本語で行う必要があります。名称などの固有名詞に外国語が含まれる場合は、そのままでも大丈夫です。

3. 届出の提出先・内容・期限は?

 実際に届出する際にはどうすればいいのか、まとめてみました。民泊サービスを開始したい時期と照らし合わせながら、スケジュールを組んでみてください。

届出の提出先

 届出の提出先は、各都道府県知事です(民泊新法3条)。

届出の内容

  • 商号、名称または氏名および住所
  • 役員氏名(法人の場合)
  • 法定代理人の氏名と住所(未成年者の場合)
  • 住宅の所在地
  • 委託する場合、住宅宿泊管理業者の商号や氏名、登録年月日(登録番号)など
  • 法人の場合は、法人番号
  • 住宅の不動産番号
  • 事業者の住宅に人を宿泊させるとき、事業者本人が不在とならない場合には、そのことを申し添える
  • 住宅図面
  • 誓約書

 住宅の所在地については、届出住宅を明確化する目的で、建物やアパート名の正式な名称と、部屋番号も記載することが義務付けられます。
 一戸建ての住宅なのか、長屋になっているのか、共同住宅型なのかといった届出住宅の実態についても正しく記載します。それぞれの住居の形態についてきちんと認識しておく必要があります。
 誓約書は、様式が二種用意されており、これを使って作成することになっています。様式Aが法人用、様式Bが個人用で、本人の署名または押印が必要です。

 また、届出の際には以下のような添付書類が必要であると定められています。

  • 定款または寄付行為
  • 登記事項証明書
  • 入居者募集の広告
  • 賃借人の場合は賃借人が承諾したことを証する書類
  • 区分所有の建物の場合は、規約のコピーなど

 届出書として作成した添付書類は、日本語だけでなく英語で記載されたものも認められます。ただし、英語で記載されている場合は、日本語翻訳を一緒に添付することが求められるので注意しましょう。特例として、日本語・英語以外でも認められることがありますが、このときもやはり日本語翻訳は必須です。
 官公署が証明する書類が必要になる場合がありますが、こうした証明書類は届け出る前の3ヵ月以内に取得したものと決められています。写しなどは認められず、官公署から直接発行された書類でなければなりません。

届出の期限

 民泊新法は、2017年6月9日に通常国会において成立しました。公布されたのが6月16日で、施行期限は成立から1年以内と定められているため、2018年6月15日の期限満期を迎えて正式施行となります。
 新法民泊を希望する事業者は届出を行わなければなりませんが、この期限はとくに設けてありません。受付は3月15日から開始されています。申請しても許可がすぐに下りるとは限りませんので、できるだけ早く営業を開始したいと考えている事業者は、早めに申請を行うべきでしょう。

4. 業務ルールなどはあるのか

 当然のことながら、業務を行う上では数々のルールが設けられています。このルールが遵守されているかどうかについては、都道府県知事による報告徴収と立入検査によって調査され、問題が発見された際には業務改善命令や停止命令、廃止命令がくだされます。(この命令は基本的には公表されることはありません。)
 まず、民泊の営業で得た利益には、納税義務があります。普段は会社員として働いている人が副業として部屋を貸し出すような場合、納税することに不慣れであまり関心がないかもしれません。しかし、だからといって納税を怠ると立派な脱税行為とみなされてしまいます。うっかりミスでそのようなことにならないように、普段から帳簿付けをする癖をつけておくと良いでしょう。
 次に、特に家主不在型の場合には、マナーを守らない旅行者によって、地域住民に迷惑がかかるようなことのないように注意が必要です。少しでも問題回避のための対策として、本人確認やパスポートの複写を取得して置くこと、そして滞在者名簿に必ず記載をもらうようにすることが義務付けられています。
 また、これまでの旅館業法においてはフロントの設置が必要でしたが、現在は宿泊者数が10人未満の場合に限って必ずしも必要ではないという方向性になりました。そのため、ワンルームマンションでも民泊を営業することが可能なかたちになったのですが、マンション管理の規約で住宅以外の用途として使用してはならないという記述があることが多いので、そうしたルールを慎重に確認する必要があります。
 そのほか、主なルールを列記しておきます。

  • 営業びは年間百八十日まで
  • ゲストの宿泊日数や人数は、知事に報告する
  • 安全性の確保に努める
  • 衛生面の管理
  • 災害時などの非常用照明器具や避難経路の設置
  • 近隣住民からの問い合わせへの対応

5. その他の細かい注意事項

 上述した業務上の主なルール以外にも、トラブルを避けるために注意したい事柄を3つ挙げておきます。

ゴミ出しには細心の注意を

 ゴミの出し方には、地域によって大きな差があります。宿泊者が良心からゴミの分別をしておいてくれたとしても、それが地域のマナーや条例に合致していなければ意味がありません。一度でも近隣住民とのトラブルに発展してしまうと、民泊の経営が困難になります。ゴミの分別を宿泊者にお願いする場合は、分かりやすいようイラストを利用するなどして説明を行うようにしましょう。

誇大広告はNG

 民泊を運営するからには、宿泊を希望する人を増やす必要がありますが、貸し出す住居のイメージと現実が大きくかけ離れているような広告を出すと、のちのちトラブルにつながりかねません。誇大にならないように注意して、あくまで誠実に営業を行いましょう。

投資目的の購入は慎重に

 民泊の流行に伴い、民泊投資を行う人も増えてきています。民泊投資用の物件を購入して経営する場合、思惑どおりに宿泊者数が伸びなかったり、購入してみたら思っていたような優良物件ではなかったりという事態があり得ますので、重々注意が必要です。

まとめ

 まだまだブームが始まったばかりの民泊。新法の施行によって、これまでグレーゾーンとされた営業が淘汰され、クリーンなイメージが浸透していくものと思われます。人気のホストになれれば、多くの収入を見込めるという希望がもてる分野ですので、ぜひトライしてみたいですね。のちのちトラブルや失敗につながらないようにするためには、今のうちから細かいルールをしっかりと読み込んで事前に準備しておくことが大切。ルールの細かい部分はこれからまた試行錯誤が重ねられて、少しずつ固まってくるはずです。今後のルール改正などにもよく留意して、賢く運営していけるように努めましょう。

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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