不動産トラブル弁護士ガイド

不動産トラブル専門の弁護士検索・法律相談ポータルサイト

不動産契約時(売買・賃貸)での重要事項説明で注意すべき10点

更新日:2021年08月25日
不動産契約時(売買・賃貸)での重要事項説明で注意すべき10点のアイキャッチ

重要事項説明書は、取引物件の重要な事項を記載されています。

重要事項説明とは

(宅建業法35条)取引主任者は、売主(貸主)買主(借主)に対し「取引物件の重要な事項」について書面説明の義務があります。
この説明時期は、売買・賃貸の契約成立までと定められています。
不動産取引の当事者達は、重要事項説明を受ける事で、正確な情報を理解しなければなりません。

記載事項

重要事項説明書の内容は、大きく二つの事項に分けられます。

  • 対象物件に関する事
  • 取引条件に関する事

対象物件に関する事

1. 物件について

対象となる物件の所在地住所や面積など
・広告、ウェブ照会などと、記載されている面積、登記簿上の面積、実際の面積に違いがないかの確認

登記簿に記載されている項目

  • 「抵当権」の設定がされている場合、抹消時期が契約書に明記されているかの確認
  • 「仮登記」「賃借権」そのままだと物件を所有できなくなる可能性もあります

※抵当権 住宅ローンなどの借金が返済できない場合、物件を売却した金銭で優先的に弁済を受ける権利
※賃借権 賃貸借契約に基づき、借主が契約物件を使用する権利
※仮登記 本登記に備えて行う登記です。
仮登記を付けたまま所有権移転を行った場合、仮登記をしたものが所有権移転したことにより仮登記人の名義へと変更されます。

所有権移転での順位変更

2. 法令上の制限について

用途地域や建ぺい率など、各種の法令に基づく制限事項
・住宅を建築・建替え・増改築が可能となっている区域になっていないかを確認
・購入物件周辺の土地の「用途地域」は何か? その地域の建物がどんなものか具体的に確認
・その土地に建築できる「建物の高さや面積」などに関する法基準を確認

※用途地域 都市計画法の地域地区の一つで、住居・商業・工業などの用途の混在を防ぐために定められた地域
※建ぺい率 敷居面積に対する建築面積の割合で、建物を建てる時には建ぺい率の範囲内で行う必要があります。
 建ぺい率 = 建築面積 / 敷地面積

3. 土地と道路の関係について(主に一戸建て・土地)

敷地に接する道路幅、道路と敷地が設置面の長さ

  • 敷地が接する道路の幅が4m未満の場合はセットバックが必要
  • 道路と敷地が2m以上接していない場合、建物は建てられない

私道負担に関する項目

  • 敷地が私道にのみ接している場合、「道路位置指定」を受けていないと建物の建築ができない
  • 私道は敷地にならないので、建ぺい率・容積率の計算には含められない

※セットバック 道路幅を将来的に4m確保するため、敷地境界線の後退を行うこと
※道路位置指定 私道として都道府県や市町村から道路の位置指定を受けたもの
※容積率    敷地面積にたいする延べ床面積の割合です。

4. インフラの整備について(主に一戸建て・土地)

水道・電気・ガスなどの供給、排水施設について

  • 排水が公共下水道でない場合は、下水をどのように処理するかを確認
  • 水道・電気・ガスの供給施設が未整備の場合、いつまでに誰が整備し工事費を負担するかの確認
  • 負担金がある場合は、何に対していくら必要とされているかの確認

5. 敷地や建物の状態について

敷地の形状や、建物の構造・仕様(未完成の場合、完成予定の内容を元にする)についての確認

  • 物件の道路からの高さ、傾斜の有無、排水施設の状態など
  • 未完成物件のパンフレットや図面集を確認し、気になるところがないか
  • 中古物件の「付帯設備表」「物件状況確認書」を見ながらの現地確認

6. 共用部分について(マンション)

管理形態や委託先、管理費、修繕積立金の確認

  • 管理費、修繕積立金の金額を確認
  • 中古マンションの場合、売主の管理費・修繕積立金の滞納確認
  • 滞納がある場合、対応方法の確認
  • 大規模修繕などの契約や、管理規約の確認

共用部分の範囲や使用方法
専用使用権について
・駐車場などを使用する場合、使用する人の決定方法、使用金額のチェック

取引条件に関する事

1. 代金以外に必要な金銭について

契約時の手付金等(売買代金の2割以内)

  • 手付金の目的(解約手付金・違約手付金・証約手付金)や、必要な金額を確認
  • 手付金等について、保全措置の有無や保全方法などを確認

※解約手付 売主・買主のいずれかが契約を解除したいときのための保証金です。
当事者の間で同意により「手付解除を認めない」「手付解除可能な期間」を自由に定めることができます。
買主は、手付金を放棄することで解約できます。
売主は、手付金を買主に倍返しすることで解約できます。

※違約手付 契約違反による契約解除の「違約金」として利用されます。
買主側の契約違反があった場合、手付金が没収されます。
売主側の契約違反があった場合、2倍にして返金しなければいけません。

※証約手付 購入する意思があることを示し、契約成立を証明するものとして預けるお金です。

※保全措置 物件の引き渡しまでの間に、売主が倒産などで物件の引き渡しが出来なかった場合
支払った手付金を返還してもらう措置のこと。
売主が不動産業者 買主が個人の場合のみに措置が発生

2. 契約解除について

手付解除について
・買主からは手付の放棄、売主からは手付の倍返しで契約を解除できるとする場合が多いです

契約違反による解除について
・売主が引渡期日になっても物件を渡さない場合
・買主が代金支払い期日になっても決済をしない場合
この場合、契約解除とともに違約金を請求できる場合が多い

「ローン特約」による解除について
・利用予定としている住宅ローンの取扱金融機関名や、借入・返済内容の記載確認
・「ローン特約」がない場合、なぜ特約がないのかを尋ねてみてください

※ローン特約 予定していた住宅ローンが利用できない場合、ペナルティなしに契約を解除できる特約。

3. 供託や保険加入について

・供託所などについての確認
・瑕疵担保責任の履行のための措置についての確認

※供託所 不動産業者との取引で損害を受けた消費者が、供託されたお金から弁済請求を受けることができる。
その供託を行った場所、機関名

※瑕疵担保責任 売買完了後、売買の目的物に取引上で要求される品質が書けた状態であり、
それが通常の注意で気づかない欠損である場合に、売主が負う修復・損害金などの責任

4. 「その他」「承認事項」など購入者が事前に知っておくべき内容

・工場や墓地など周辺の嫌悪施設について
・生活上のルール
・判明している設備不備について
・気になる部分の最終確認内容の明記

まとめ

重要事項説明書に記載されていない内容は、説明が行われていないとされ、訴訟となった場合の証拠として扱われる重要な書類です。
反面、重要事項説明書に記載されていた場合「説明がない」「理解できていない」と言う状態であっても、主張が出来なくなります。
重要事項説明書は、それだけ重要な書類と言えるのです。

万が一のトラブルが発生し、弁護士に重要事項説明書の確認を行ってもらい、法的な効力を確認してもらうことをおすすめします。

この記事の著者

不動産トラブル弁護士ガイド 編集部の画像

不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

ベンナビ弁護士保険