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賃料の増額請求ってどうしたらいいの?

更新日:2019年10月01日
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遠い過去に作った賃貸契約書で定めた賃料が、年月の経過によって周囲の賃貸相場よりもはるかに安いと気づいた場合などに、オーナーは賃料を増額することができます。これを「賃料増額請求」と言います。けれどもこの賃料増額請求に、賃借人が簡単に同意してくれるとは限りません。さらに現在の借地借家法では、賃借人の権利が手厚く保護されていますので、賃貸借契約を締結した後に賃料増額を実現することは決して容易ではありません。ここではどのようにトラブルなく賃料増額請求をすることができるのか、賃料増額書類の書き方、さらに賃料増額請求の流れについてお伝えします。

1.賃料の増額請求とは

 遠い昔に賃貸契約を結び、賃料をそのままにしてある物件の場合、気がついたら周囲の同じような物件と比べると格安で契約していると気づく場合があります。また、それまではのどかな郊外住宅地だったのが、駅前の再開発でタワーマンションが建ち、それに伴って地価が上昇、さらに賃料の相場も急上昇、という場合もあります。
 こうした状況に気づいたオーナーが賃料の値上げを請求することを「賃料の増額請求」と言います。実はこの賃料の増額請求は、賃借人に有利になっていると言われている、現在の借地借家法でも認められた行為なのです。

〇借地借家法32条1項:建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

つまり、以前取り決めた賃料が、経済状況の変化などにより、周囲の賃料と比較すると不適当である場合には、オーナーによる賃料の増減を認めています。これを賃料増減額請求権と言います。そして判例により、賃料増額請求の意思表示が、賃借人に示された日から、賃料をあげることができるとされています。

<h2>2.賃料の増額請求書の書き方

賃料の増額請求をするためには、増額しますよ、というオーナー側から賃借人向けの意思表示が必要です。このように大切なことは、口頭で伝えると「言った」「聞いていない」というトラブルの元になりかねません。またメモ書きや手紙にして、普通郵便で届けた場合でも「受け取っていない」と言われたら、それきりです。
 そのため賃料の増額請求をする場合には、きちんとした書式で書き、さらに内容証明郵便で賃借人に間違えなく届けた記録が残るようにしましょう。賃料の増額請求書には、増額するに至った理由を書くと説得力が増すと言われています。文例は下をご覧ください。
賃料の増額請求通知

<h2>3.賃料の増額請求の流れ

賃料の増額請求書を出して、すぐに賃料の増額に応じてくれる賃借人ばかりではありません。では、どうやって請求をしていけばいいのでしょうか。賃料増額請求は、通常は
1.当事者同士の協議
2.調停
3.訴訟
という3つのステップで行われます。以下にそれぞれについてご説明をします。

<h3>1.当事者同士の協議

まずは通知を出したオーナーと受け取った賃借人の間で協議をして、賃料増額に対する合意ができれば、その合意に基づいて賃料増額することができます。その取り決めには、賃料増額の幅や、増額のための経過期間をどうするかについての制限がありません。これらの点についても、当事者間の合意によって、自由に取り決めることができます。
しかし実際のところ、一度合意した賃料の増額にやすやすと応じる賃借人は少ないと思われます。

<h3>2.調停

当事者間の協議がまとまらなかった場合には、調停の申し立てをすることになります。
賃料の増減請求においては、「調停前置主義」といって、訴訟を提起する前に必ず調停を申し立てなければなりません。
調停では、裁判官に民間の調停委員を加えた調停委員会が双方の当事者の事情を聞き、話し合いでの解決を目指す手続です。
そこで合意が可能であれば調停が成立し、賃料が増額されることになります。
賃料増額に関する調停や裁判は不動産の所在地を管轄する簡易裁判所が管轄となります

<h3>3.裁判

話し合いでもまとまらない場合には、調停不成立として訴訟に持ち込まれます。話し合いの途中でも、合意の見込みがないと判断された場合には、直ちに調停不成立となり訴訟に移行するケースもあります。
たとえば、賃貸人が賃料増額を請求し、賃借人が逆に賃料減額を請求した場合です。
訴訟に移行した場合には、鑑定の申立てがされることが一般的です。鑑定を申し立てた場合には、裁判所から鑑定人(不動産鑑定士)が選任され、不動産賃料の価格について鑑定結果が出されます。一般的には、この鑑定結果に基づいて和解や判決がなされます。
1回目の期日で鑑定の申立てがされ、問題なく鑑定人が選任されたケースでは、早ければ調停の不成立から5、6か月程度で判決が出されます。

<h2>4.弁護士費用の相場

このように賃料の増額請求では、その請求の妥当性や、賃借人が納得するか、など調停や裁判に持ち込まれた場合に長期化する可能性があります。調停はまだしも、裁判になった場合には、自分一人ではとても対応できません。専門家、特にこの場合は法律の専門家である弁護士の力を借りるのが賢い選択でしょう。
 弁護士に依頼する際に気になることは、弁護士費用ですね。
 一般的には弁護士費用は「着手金」と「報酬金」に分かれます。着手金は、案件を担当することになった時に支払うもので、手付金のようなイメージですね。報酬金は、その調停または訴訟に勝った場合に得られる経済的利益に対する割合で決まります。
 法曹改革以前には、日弁連が定めた「報酬基準」(=「旧報酬規程」)がありました。そのため、だいたいどの弁護士に依頼しても同じ費用だったのですが、現在はその「報酬基準」は撤廃されて、各弁護士が自由に費用を決められます。そのため、弁護士によっては今でも旧報酬規順のままの場合、着手金だけは旧報酬規順に従い、報酬金は自分で決めている場合、さらにすべてを新しく決めている場合など、様々です。
参考:日弁連旧報酬基準http://www.miyaben.jp/consultation/pdf/expenses_kijun.pdf
ここで賃料の増額請求に関わる弁護士費用について実例をあげますので、弁護士費用算出の際の参考にしてください。

例1:着手金0の場合
着手金:0円
成功報酬:賃料増額に請求した部分の5年分の20%相当額
例:10万円の賃料が15万円に増額された場合
5万円×12×5×0.2=60万円
総額:60万円

例2:着手金ありの場合
着手金:50万円
成功報酬:賃料増額に請求した部分の5年分の10%相当額
例: 10万円の賃料が15万円に増額された場合
5万円×12×5×0.1=30万円
総額:80万円

また弁護士費用とは別に、鑑定士の費用が20万円以上(鑑定士により異る)、印紙代等の実費がかかります。

 このように、弁護士によって採用する計算方法が違い、また同じ弁護士でも、担当する賃貸物件の増額分によって、費用の算出方法が異なることがあります。依頼をする前に、かかる費用について見積もりを取り、その費用に納得してから依頼することをお勧めします。

<h2>5.賃料の増額請求は弁護士へ

賃料増額請求は、法的にも認められたオーナーの権利です。しかし一度双方が納得して決めた賃貸料を経済状況が変わり、また周囲の賃貸料が上がっている、とわかっていても、賃料が増額する、つまり自分の負担が増えることに気持ちよく応じる賃借人ばかりではありません。
 最初はお互いの話し合いから始まる交渉ですが、その場合も自分で賃借人と直接交渉をすると、気まずい思いをすることが予想されます。賃借人は長い間そこに住み、またこれからも住み続ける可能性があるので、できればお互いにいい関係を保ちたいと思うからです。しかし気まずい思いをしたくないから、と安い賃料収入で我慢し続けるのも、実際に固定資産税などが上がり、負担が増えたオーナーにとっては厳しい状況になります。
 こういう時は、第三者であり、こういう案件に慣れている専門家に依頼するのが賢い選択でしょう。この場合の専門家は、法律のエキスパートである弁護士がお勧めです。弁護士に依頼すれば、自分が直接賃借人と交渉をして気まずくなることも避けられます。また交渉がうまくいかずに、調停や裁判にもつれた場合でも、安心して任せられます。
いつもお世話になっている不動産業者にお願いしたらどうだろう、と思われるかもしれませんが、不動産業者はあなたの代理人にはなれませんし、できるだけ双方に丸く収まってもらえるように話を運んでいくため、あなたの権利を100%擁護してくれません。。あなたの権利を守るために安心して任せられるのは、弁護士なのです。

<h2>6.まとめ

 賃料の増額請求は、借地借家法によっても認められているオーナーの権利です。けれども、認められた権利とはいえ、実行することは簡単ではありません。どのように通知をすればいいのか、また交渉などについて、慣れていないオーナーが対応することはストレスがたまります。ご自身が我慢ばかりせず、それでいて賃借人との良い関係を続けるためにも、法律の専門家である弁護士に依頼をして、気持ちよく増額請求をすることをお勧めします。

この記事の著者

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。