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オフィス・事務所契約時によくあるトラブル

更新日:2021年03月31日
オフィス・事務所契約時によくあるトラブルのアイキャッチ

事業の開設・拡大などで、自社オフィスを持つと言うのは、新たなる第一歩としてとても重要です。
そんな新しい出発でトラブルには会いたくはないものです。
しかし、慣れない人にとって契約書はとても判りづらくトラブルの原因となることもあります。

保証金・敷金の預託時期について

保証金・敷金とは、賃料の滞納やオフィスの原状回復時に使用される金銭で、退去時に残額が返還される預り金です。

オフィスや事務所などの事業用の保証金・敷金は、3~6ヵ月分とされています。
この保証金の預託時期は、賃貸契約ではとても重要です。
保証金の預託日が、賃貸契約締結日や入居予定日などさまざまです。
保証金はまとまった大きい金額になるため、支払日までに準備をすることが必要です。

契約日、保証金の預託日、入居予定日をシッカリ確認しておくことが大切です。

賃貸契約の中途解約について

中途解約とは、期間満了前に貸主・借主いずれかの都合により契約の解約を行う事をいいます。
賃貸借契約書に中途解約に関する条項がある場合は、その条項に従います。

一般的にオフィスの契約解除の予告期間は、3~6ヵ月とされています。
これは、解除通告から退去までの期間が短い場合、借り手がいないことで賃料が得られず損失となるためです。

また、貸主からの契約解除は正当な理由が無い限り認められていません。

判例

借主から「建物を建ててくれるなら10年間契約を行う」との申し出があったため、貸主は建物を立て契約を行いました。
しかし契約書には10年間借り入れるとの賃貸期間の明記がされていませんでした。
借主は建物を借り事業を開始しますが、5年後に損失が多いため事業撤退と共に賃貸契約を解除したのです。
オーナーは、契約書の内容が十分でないことを理由に、約束した期間分の賃料を不動産仲介業者に対して請求しました。

裁判所の判決

賃貸期間が契約書に明記されていたなら、オーナーは契約解除を認めない事もできます。
また、借主が勝手に出て行った場合には、残りの契約期間の賃料を損害請求することができます。

しかし、契約書に契約期間の記入もないなく、契約締結時にオーナーによる指摘がなかったことから、オーナーにも落ち度があるとし、請求額の半分を仲介業者に命じました。

契約解除について

基本的に貸主からの契約解除は、正当な理由が無い限り認められていません。
この場合の正当な理由とは、裁判所での判決を前例とした賃料滞納6ヵ月などです。

「賃料その他の諸費用を2ヵ月以上滞ったときは、契約を即時解除できる」と、契約書にある場合、契約書を武器に賃料請求が出来るため、法的には無効です。
しかし実際には効力を持つ取り決めとなるため、契約書からの削除は難しいです。

これが「1ヵ月滞ったとき、契約を即解除できる」とある場合は、削除交渉を行って下さい。

明け渡し時の原状回復について

オフィスの明け渡し時には、一般的な使用による損耗を除いて借主は原状回復を行う必要があります。
特に店舗やオフィスなどに関しては、一般住宅と違うために特約が当然のようにつけられます。

  • 自ら工事した床板・天井パネル・間仕切りを撤去し、原状回復を行う
  • 既存の床板、天井パネルを全て新しいものに取り換える
  • 原状回復工事を行う業者は、貸主の指定業者とする

貸主が工事業者を指定する理由

  • ビル内の工事を1つの業者にまとめて委託している
  • 借主に業者選択を任せる事で「安い」「悪い」「遅い」となる事を避ける

などの理由です。
しかし、「借主は、事前に工事業者を選択できる」の一文を入れる事で、借主が工事業者を選ぶことができます。

この原状回復の範囲や内容はとても複雑なため、トラブルの原因となることが多いです。
そのため、オフィスを利用するときは、日付が残るタイプで写真を撮影しておくことをおすすめします。
また、オフィスの入居時の状態をオーナー・借主双方で共有し、契約内容を十分に確認することが大切です。

詳しくは「国土交通省/原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしてください。

明け渡し時期について

オフィス・店舗などの明け渡しは、契約期間終了の2週間前までの退去となります。
これは、契約期間中に原状回復工事を終わらせる必要があるからです。

原状回復工事が契約期間中に終わらない場合、原状回復工事が終わるまでの賃料は借主の負担となります。

賃貸申込書の撤回について(判例)

オフィスを借りるため「申込書」を提出したものの、他に良いオフィスを見つけたためにそちらと契約をした。
賃貸契約を結ぶと思っていた貸主は、当然他の内覧者は断り、内装工事の準備を始めていたのです。
そのため、入居予定の日から次のテナントが決まるまでの賃料を求める損害賠償を請求しました。

裁判所の判決

契約条件の折り合いがつかなかった場合は、契約を無効とすることができます。
しかし、今回の例は正当な理由とされないため、賃貸契約書を交わしていなくても損害賠償請求権が発生します。

用法遵守義務に違反したらどうなる?(判例)

貸主に人材派遣業が入居したと紹介したが、本当は風俗派遣が行われていたのです。
真実を知ったオーナーは、契約解除した上で「用法義務違反」で契約解除を申し出ました。

裁判所の判決

「強い警戒心や忌避感情を起こす性質の行為であるため、重大で悪質な違反」とし、用法遵守義務違反と認めました。
この場合は、用法遵守義務違反の勝敗は、貸主の不利益の具合が判決の決め手となったのです。

契約書では、「事務所」「店舗」などと契約の目的が広範囲にならない具体的な使用目的の記載が重要になります。

※用法遵守義務 借主は、契約・目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない

まとめ

「オフィス・店舗」と「居住用」の賃貸物件では、さまざまなところで違いがあります。
特に事業用物件は、契約自由の原則があるため契約書次第で変化することになるのです。
そのため、賃貸契約を交わす際に十分に内容を理解することでトラブルの回避に繋がります。

賃貸に関して知識がないばかりに、貸主や仲介業者の言われるままになっていてはトラブルの原因となりかねません。
契約内容に不安を感じた場合は、契約内容を弁護士に相談してみるのも良いでしょう。

この記事の著者

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不動産トラブル弁護士ガイド 編集部

不動産トラブルに関する記事を専門家と連携しながらコラムを執筆中 ぜひ弁護士に相談する際の参考にしてみてください。 今後も不動産に関するお悩みやトラブル解決につながる情報を発信して参ります。

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